人を災害から守る! その強い思いが最新機器に もはやサンダーバード(国際救助隊)か! 消防車開発の“モリタ”がすごい
- 2020/10/29
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CAR STYLING編集部 松永 大演
消防車開発、製作で知られるモリタが、危機管理産業展2020(東京ビッグサイト・青海展示棟 2020/10/21-23)で新たなモデルの展示を行なった。今回の展示テーマは「水を制す」。これまで火を制してきたモリタが、最近頻発している水害にも目を向けたもので、より総合的な災害救護のへのアプローチを見せてくれた。ここではモリタが展示した、注目の製品について紹介して行きたい。
コンパクトな小型オフロード車Red Ladybug
このレッド・レディバグ(Red Ladybug)は2018年のグッドデザイン賞BEST100に選出され、またドイツの権威あるデザイン賞のひとつ、ジャーマン・デザイン・アワード2020でWinner賞を受賞した。このWinner賞とは、最優秀賞のGOLDに次ぐ上位優秀賞だ。
ベースモデルはカワサキのMULE PRO-FX EPSで、荒地などの様々な作業に用いられるモデルとして開発された4輪駆動モデル。ボディサイズは、全長3500mm、全幅1760mm、全高2200mmというコンパクトさ。車両重量は854kg、パワーユニットは812ccのガソリンエンジンで30ℓの燃料タンクを持ち、公道も走れるようにナンバーを取得することも可能だ。
実はジムニーは機動性という点では大きなライバルになりそうだが、高い積載性が特徴となる。
これをベースにモリタが開発したのが、レッド・レディバグ。カワサキのオリジナルは基本がフルオープンとなるのだが、オプションで用意されるハードドアとルーフを装備した小さな消防車のスタイル。このモデル自体は2018年に発表されているが、今回は初のクローラー装着モデルとして登場した。
タイヤとクローラーの交換は容易で、タイヤを外してそこにクローラーの車輪部分をボルト止め、さらにクローラーが回転しないように固定するという2つの作業のみで、4輪でもおよそ1時間で交換ができるという。
最大の特徴となるのは荷台部分で、オリジナルの後部ユニットに作業ツールを収めて現場に向かう。開発の中でイメージしていたのは、後部ユニットをユーザーヒアリングから消火、救助、救急、情報通信の4つを想定して、発生した災害によって、キャビネットを選択して出動するというスタイルを取ることができるというアイデアを構築した。
具体的にユーザーのニーズとしてあったものは、消火は山火事対応車として、軽可搬ポンプ、棒吸管、ジェットシューター、水タンク、スコップ等。救助は風水害対策車として、要救助者搬送用伸縮担架、土嚢、スコップ、ゴム、ゴムボート、船外機、胴付長靴、鉄杭、ブルーシートなど。救急は災害時人命検索車として、要救助者搬送用伸縮担架、スコップ、ロープ、ノコギリ、チェーンソー、鳶口、クーラーボックス(水分)など。情報通信は指揮車として、指揮台、照明、発電機などをイメージ。また、探索用ドローンや360°カメラなどのIoTユニットを基本装備することで、災害状況を本部との状況共有をすることも想定されている。
アイデアの段階では20種類ほども考えていたということで、災害の状況によってあらかじめ準備された後部ユニットを交換すれば、コンパクトなモデルであるにもかかわらず位置はやく最適なツールを持って現場に急行することができる。まさにサンダーバード2号のような展開だ。
このモデルの高い走破性も圧倒的で、火山灰のような場所での実験ではオフロードバイクよりも安定して走ることができたという。もちろんナンバーも取得可能で、通常から公道を走ることができるが、運転には大型特殊免許が必要という。
初公開! 浸水地、浅瀬で移動可能なFAN-BEE
救助用エアボート・ファンビー(FAN-BEE)は、船底を平滑構造としたボートで、最大の特徴がスクリューで推進力を得るのではなく、プロペラによって前進することができる点にある。
本来は湿地帯や沼地など、水面下の生態系を極力壊さずに移動できるモビリティだが、洪水などの水面下の予期しない障害物が多い場所での移動に貢献できる。
搭載されるエンジンはV型8気筒のガソリンエンジンで、カーボンファイバー製のプロペラを回す。展示されていたモデルのボディサイズは、基本的にはプロペラのサイズに依存するが、全長6626mm、全幅2325mm、全高2580mmと、やや短いマイクロバス程度のサイズ感で大抵の通路には入っていくことができそうだ。
船体の素材はアルミで底部はナイロンプレートで、浅瀬や中洲(陸地)、氷上の走行も可能となる。
作業の範囲を考えると、海上や水上に係留するのではなく、消防署や警察署など陸地に配備して、災害地までトラックなどで運搬するイメージだろう。
初公開! 折りたたみ式電動資機材搬送車EZ-Raider
大きなタイヤを持ったキックボードのような形をしているのが、イーゼットライダー(EZ-Raider)だ。インホイールモーターの4輪駆動(2輪駆動もあり)で、牽引されるカートの両輪にも電動モーターを備え、最大6輪駆動となる。ボードの裏側にバッテリーを搭載し、重量は135kg。積載能力は本体側で200kg、カート側で250kgの搬送能力を持つ。充電時間は約2.5時間で、走行距離は45〜85kmとなる。
前後共リジッド式のサスペンションを持ち、大きなホイールストロークを持つことによって、様々な地面でしっかりとしたトラクションを得ることができる
メリットとなるのは全幅が790mmと車椅子の全幅が700mm(JIS/ISO規格)とそれほど違わないので、人の通れる大方の施設の通過も可能だろう。
それ以上に小さなモビリティであるにも関わらず、カートも含めてトータルで450kgの搬送ができるというのが頼もしい。
会場ではカートを担架として利用する設定で紹介されていたが、車の入れない狭い林野や砂地のようなところ、あるいは災害地などでの救護、物資の運搬にと大いに活躍できそうだ。
モリタの災害救護機器の開発での多様性は注目で、災害の多くのシーンで活躍するツールが実に多く開発されている。消防車に限ることなく、まさにリアル国際救助隊をみる思いだった。
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