スバル・レヴォーグ 公道試乗でわかった! 新開発1.8ℓリーンバーンエンジンもアイサイトXも「じつに奥の深いクルマ」と感じさせてくれる出来の良さ
- 2020/11/28
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世良耕太
STI Sport EXのドライブモードセレクトを試す
2日目の最初の相棒はSTI Sport EXだった。朝の冷えた空気に包まれた万平ホテルを出て、浅間山を間近に望む鬼押出し園に向かう。ほとんどが上り勾配で、途中、タイトなワインディングロードが待ち構えている。STI Sportは電子制御ダンパーを備えており、その特性をドライブモードセレクトで切り換えることが可能だ。ドライブモードセレクトは「コンフォート」「ノーマル」「スポーツ」「スポーツ+」「インディビジュアル」の5種類があり、ノーマルがデフォルトだ。
キャラ変は著しいし、気分に応じて切り換えるだけの価値はある。ドライブモードセレクトで変更できるパラメーターは電子制御サスペンションだけでなく、パワーユニット(高回転側を多用する制御)、ステアリング(手応えの強弱切り替え)、AWD(スポーツではアクセルオフでも後輪への駆動力を保持)、EyeSight(全車速追従クルーズコントロールの加速特性切り替え)、エアコン(マイルドとノーマルの切り替え)の6種類を2〜4段階に切り換えることが可能だ。
モード切り替えを行ないながら走ったが、走るうちに好みが出てくる。ステアリングはスポーツが好みだけれども、パワーユニットはI(デフォルト。最もおとなしい)がよく、サスペンションはノーマルがいいなどといった具合だ。そんなときはインディビジュアルで設定すればいい。ステアリング右側にある★マークのスイッチは、インディビジュアルに一発で切り換えられるショートカットだ。
急な上り勾配かつタイトなカーブが続く区間では、エンジンの力強さに感心した。タイトなコーナーからの立ち上がり(立ち上がった先も急勾配である)でさえ、アクセルペダルを深く踏み込む必要はなく、グイグイ登っていく。先代なら(?)変速比が変わってエンジン回転が一気に上がり、エンジンとチェーン式CVTが発するギャーンというノイズを発していたところだろう。ところが新型レヴォーグは、例えていうなら鼻歌まじりでこなしてしまう。
1000rpm台半ばから最大トルクの300Nmに達する豊かなトルクの恩恵だ。それに、「80%以上の構成部品を刷新した」CVTはチェーンの仕様変更などで音の発生を抑えていることもあり、高い回転域でも耳障りなノイズでその存在を主張することはない。気持ち良く伸びるエンジンサウンドだけが耳に届く。
鬼押出し園を基点にSTI Sport EXとGT-H EXを乗り換えながら鬼押出し園〜中軽井沢を往復したが、バック・トゥ・バックで乗り比べてみると、電子制御サスペンションとドライブモードセレクトは欲しくなる。ということは、筆者が選択するならSTI Sportということだ。効果がわかりやすいステアリングとサスペンションの制御が切り換えられるのは魅力だ。デフォルトのノーマルであっても、STI Sportのほうがクルマの動きがしっかりしているように感じる。
最終目的地を東京・恵比寿にあるスバル本社とする帰路は、上信越道・横川SAから関越道・寄居PA(約57km)でSTI Sport EXのステアリングを握った。ここぞとばかりにアクティブレーンチェンジアシストを試したが、何度試しても感心するほどよくできており、技術の進歩とスバルの技術力の高さを実感する。
「カーブ前速度制御」もアイサイトXの機能のひとつで、これは藤岡ジャンクションで関越道に合流する際に体感できた。アイサイトXは3D高精度地図データを利用している。このデータが収録する詳細な道路情報をもとに、アイサイトXを作動させているとき(システムがアクセル、ブレーキ、ステアリング操作をアシストしているとき)は、カーブの曲率に合わせて適切な速度に制御してくれる。アクティブレーンチェンジアシストと同じで、制御は巧み。減速、操舵ともにスムーズだ。
鬼押出し園〜寄居PA間(約98km)は標高の高いところから低いところへの移動だったこともあり、この間の燃費は18.5km/ℓを記録した。寄居PAでは待機していた開発エンジニアの助けを借りて、疑問を2つ解消した。新型レヴォーグは肘や手のひらなど、体の一部をリヤゲートにある六連星のオーナメントに近づけると、自動でリヤゲートが開く「ハンズフリーオープン・パワーリヤゲート」を採用している。
この機能を試そうと何度も手のひらをオーナメントにかざしたのだが、無反応だった。「フォースを操れるジェダイの騎士じゃないと開かないの?」と、ちょっとばかり落ち込んだが、なんのことはない。メインスイッチがオフになっているだけだった。ステアリングコラムの右側にあるスイッチをオンにしておけば簡単に開いて、筆者にもフォースが操れることが証明できた。オンオフスイッチは、洗車機に入れた際の誤作動を防ぐために付いているという。
もうひとつの疑問は、ブレーキ力の自動保持機能である(スバルは「オートビークルホールド」と呼ぶ)。シフトレバーの後方に電動パーキングブレーキのスイッチはあるが、それとセットになっているはずの「HOLD」のスイッチが見あたらない。「ひょっとして非装備?」と半ば悲しんでいたところで、疑問は解消した。
ハードスイッチはなく、センターディスプレイでオンオフを切り換える仕組みだ。センターディスプレイの左下にクルマのマークがある。これを押すと車両制御画面に切り替わり、「オートビークルホールド」のメニューが出てくる。画面上のスイッチに触れることでオンオフ切り替えができる仕組みだ。ハードスイッチならワンタッチで済むが、現行方式だと2ステップ必要で、面倒だと感じた。アイドリングストップのオンオフ切り替えも同様である。
「渋滞時ハンズオフアシスト」は使えるか?
寄居PAでGT-H EXに車両を入れ替え、外環道・新倉PAで運転席に戻り、首都高速5号線〜都心環状線〜2号線を通って天現寺で降り、恵比寿のスバル本社に向かった。先に記しておくと、寄居PA〜スバル本社間(約100km)の燃費は16.2km/ℓだった。
都心環状線では念願叶って(?)渋滞に遭遇した。なぜ念願が叶ったかというと、アイサイトXの機能のひとつである「渋滞時ハンズオフアシスト」を試すことができたからだ。自動車専用道路での渋滞時に条件(前走車検知+約50km/h以下)がそろうと、メーター表示が青に変わり、渋滞時ハンズオフアシストが機能する。「ハンズオフ」なので、ステアリングから手を離すことができる
恐る恐る……ではなく、実際には「そら、きた!」という調子で手を離した。これまでのレヴォーグとの付き合いで、運転アシスト機能に対する信頼が確立していたからだ。システムが先行車との車間を保ちつつ、ステアリングを操作してくれる。ハンズオンが必須のツーリングアシスト時に比べると、加速と減速がやや雑で、もっと穏やかに制御してほしいと思う場面はあったものの、渋滞時に役立つ機能であることは間違いない。
1泊2日のツーリングを通じて新型レヴォーグへの理解が深まった。しかし開発陣に聞いてみると、アシストグリップの作り込みやアダプティブドライビングビーム(ADB)の制御にエアアウトレットなど、まだまだ隠しネタを持っているよう。実に奥の深いクルマである。
スバル・レヴォーグ GT-H
■ボディサイズ
全長×全幅×全高:4755×1795×1500mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1570kg
乗車定員:5名
最小回転半径:5.5m
燃料タンク容量:63ℓ
■エンジン
型式:CB18
形式:水平対向4気筒DOHCターボ
排気量:1795cc
ボア×ストローク:80.6×88.0mm
圧縮比:10.4
最高出力:177ps(130kW)/5200-5600rpm
最大トルク:300Nm/1600-3600rpm
燃料供給方式:筒内直接噴射
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
■駆動系
トランスミッション:CVT
駆動方式:フロントエンジン+オールホイールドライブ
■シャシー系
サスペンション形式:FマクファーソンストラットRダブルウィッシュボーン
ブレーキ:FベンチレーテッドディスクRベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:225/45R18
■燃費
WLTCモード:13.7km/ℓ(社内測定値)
市街地モード10.2km/ℓ
郊外路モード14.4km/ℓ
高速道路モード15.6km/ℓ
スバル・レヴォーグ STI Sport EX
■ボディサイズ
全長×全幅×全高:4755×1795×1500mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1580kg
乗車定員:5名
最小回転半径:5.5m
燃料タンク容量:63ℓ
■エンジン
型式:CB18
形式:水平対向4気筒DOHCターボ
排気量:1795cc
ボア×ストローク:80.6×88.0mm
圧縮比:10.4
最高出力:177ps(130kW)/5200-5600rpm
最大トルク:300Nm/1600-3600rpm
燃料供給方式:筒内直接噴射
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:63ℓ
■駆動系
トランスミッション:CVT
駆動方式:フロントエンジン+オールホイールドライブ
■シャシー系
サスペンション形式:FマクファーソンストラットRダブルウィッシュボーン
ブレーキ:FベンチレーテッドディスクRベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:225/45R18
■燃費
WLTCモード:13.6km/ℓ(社内測定値)
市街地モード10.0km/ℓ
郊外路モード14.5km/ℓ
高速道路モード15.3km/ℓ
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