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ホンダ・シビック タイプRでスーパー耐久に挑戦するホンダ社員チーム。2020年仕様のタイプRでどう戦ったのか?

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ここでホンダの元気を見せておかなければ、という気持ちでレース活動をしている望月さん。もちろんホンダの社員である

日曜日11時スタートした5時間の耐久レースでスタートドライバー役を担ったのは望月さんだ。1時間強のスティントを終えた望月さんはこう語った。
「スタートドライバーとしては予定どおりで、耐久レースですのでとにかく次につなぐこと、とにかく持って帰ってくる、ことだけ考えて走りました。思った以上にタイヤがたれちゃってペースを上げられなかったんですけどね。もう少しいけると思ったんですけど。レースで走ると、クルマのことがよくわかって仕事に生かせるところがあります。エンジンルームの冷却もシビックだけじゃなくて、こういうタイプのクルマには生かしていけます」

ドライバー交代の前にピットクルーとグータッチする柿沼さん。セカンドドライバーだ

望月さんからバトンを引き継いだ2番手は柿沼さんだ。前述のとおり、柿沼さんはシビックタイプRの生みの親、チーフエンジニアである。
柿沼さんのレースに賭ける想いについては、別のインタビュー記事を参照していただきたい。

ホンダ・シビックタイプRの開発責任者が自らレースで戦う意味。「ホンダの魂、開発者たちのマインドを、ちゃんと若い人たちに見せてあげなくちゃいけない」

今年もホンダ社内有志チーム「Honda R&D Challenge」がシビックタイプRでスーパー耐久に挑んだ。4人のドライバーのうちのひと...

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3番手は瀨在仁志さんを挟んでドライバーズシートに座ったアンカー・ドライバーは木立さんである。木立さんは、ホンダのニュルブルクリンク検定員。評価ドライバーのスペシャリストだ。

残りあと1時間弱となったとき、ピットに緊張が走った。無線でトランスミッションの異常が伝えられたからだ。4速が使えなくなったという。4速なしでゴールの5時間までマシンを導けるか。そうしているうちに、ギヤボックスから漏れたオイルによってマシンは白煙を吹き始めた。

最終ドライバーとして乗り込んだ木立さんだが、残念ながらトランスミッション・トラブルでチェッカードフラッグは受けられなかった

ここで緊急ピットイン。残念ながらリアイアとなってしまった。
無念の表情を見せる木立さんはこう語った。
「5周目くらいだったと思うのですが、急にマシンの前方からカラカラ音がし始めて、4速が入らなくなりました。4速なしでも走れる状態だったので、メカニックとやりとりをして3速と5速を使って走行継続しました。ですが、どうしてもオイルが漏れてきて白煙が上がってしまって、残念ながらピットインしてリアイアしました。クルマ自体はだいぶ仕上がってきていたし、スピードも出ていたので、今度はそれに対するブレーキの容量がちょっと足りなくなってきたという課題はあったものの、アップデートはうまくいっていたので、ちょっと残念な結果ですね。次はそこはしっかり対策して、それにともなって脚周りのセットアップもしっかりやっていけば、ほかのランサーやWRXと同じようなペースでは走れると思っています」

3番ドライバーを担当した瀨在さん。とにかくブレーキを労りながらのドライブだったという

Honda R&D Challengeの2020年のスーパー耐久挑戦はリタイアで終わってしまった。
とはいえ、チームメンバーは俯いてばかりではない。

瀨在さんは
「結果的にギヤボックスが壊れてしまったけれど、私は基本的にはエンジンもミッションもオーバーホールなしで、ホントにタイプRってこんなに丈夫なんだって感心してたんです。ミッションは17年仕様ですから、本当に耐久試験を実証したカタチですかね。誤解を恐れずに言えば、いい耐久テストだったんじゃないかな。全開の耐久テストですからね。次は完全に2020年仕様にして再スタート、次のステップへ行きたいです」とポジティブなコメントを残してくれた。

これだけのレーシングペースでロングランするっていうのは、市販車では考えにくい領域だと望月さんは語ってくれた。まさにレースは走る実験室、である
「これまでマシンを作り上げてきてくれた研究所のメンバー、ターマックプロ、ATJのバックアップによって、最高のコンディションで参加できたこのレースの経験は、必ずや大きく実を結ぶと確信してします。耐久レースでのアクシデントやトラブルは、新チームにとっては通過しなくてはならない大きなハードルとして受け止めて、次へのばねにしていただききたいと思います。また、ノーマルベースで参加するというコンセプトも、今回のトラブルの意義は大きく、次期量産モデルへのフィードバックなど、ホンダ・ファンへ必ずや還元されるものと思います。自己啓発チームではあるものの、レースは走る実験室として語り継がれているホンダらしい活動として、大いに評価されるものと信じています」と話していた。

結果だけ見れば、リタイアだが、得られたものは大きい。
木立さんは
「エンジンの冷却性能が上がって、タイヤも太くなってスピードが上がったしわ寄せがトランスミッションにきてしまった。でも、柿沼も私も含めて、こういうフィールドで経験しないとわからない。だからあえて量産仕様にこだわってきたっていうのはそこにあるんです。こういうフィールドで必要な性能が身をもってわかってきたというもの成果です。成果は充分だったと思います。来年も参戦を継続したいですね」

チームスタッフはみな自ら買って出てくれたホンダ社員有志とATJのメンバーだ。

チームマネジャーの小野田さんは、「こういう活動をちゃんと繋げてこの活動の意義を社内的にも拡げていきたい。地道なことをやるしかないのかな。ここでホンダの元気を見せておかなければ、と思っています」という。

ホンダがホンダらしくあるために、Honda R&D Challengeの挑戦が来年以降も続いていくことを1ファンとして願っている。

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