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爆売れダイハツ新型ロッキーのルーツを四駆専門誌編集長が探る!! 【ダイハツ新型ロッキー(とトヨタ・ライズ)爆売れ記念特別企画】ダイハツ初代ロッキーは、本格四駆だったのか? (前編)

  • 2020/12/05
  • MotorFanアーカイブ編集部
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ダイハツ初代ロッキー(F300S型)

中古車屋の店主であり、重ステ車の運転が億劫になってきた団塊ジュニア末期世代、WEB上では“ポンコツ屋”の名で通る『四駆道楽専門誌 CURIOUS(キュリアス)』(カマド出版・刊)の編集兼・倉庫係…と言うか編集長が、ダイハツの現行ロッキー(A200S/210S型)の販売好調をうけて、ここぞとばかりに(?)初代ロッキーを真正面から語ります。まずは初代ロッキーの歩みをカタログで振り返ってみましょう。

TEXT&PHOTO:赤木靖之(キュリアス編集室)

 ロッキーのネーミングが復活して早1年。もはや「新型」をアタマに冠さずとも、2WDモデルまでラインナップに擁した1ℓクラスのクロスオーバーSUV、A200S/210S型を指すことが当たり前となった。

 この車名がリバイバルであることは、続けて復活したタフトの時よりずっと知られている。車好きの間で、初代ロッキーが「本格四駆だった」と語られることも増えたように思えるが、悪路で試したレポートは少ない。果たして初代は本当に本格四駆なのか?

 ということで、久しぶりの寄稿は『モーターファン.jp』編集部の熱烈な(?)ご要望により、ダイハツ ロッキー F300Sを徹底的に走らせた『四駆道楽専門誌 CURIOUS(キュリアス) Vol.10』(カマド出版・刊)のインプレッションを改訂・再構成してお届けしようと思います。

 その前に、当時の背景やキャラクターの変化をカタログから紹介。なにしろダイハツの四駆に思い入れがあり、個人的見解(主張ともいう)が先行することはご容赦を。

 グレードごとの装備などについては当サイトの『自動車全車種カタログ』ページで確認できますから、そこは駆け足で。少々の脱線も大目に見ていただき…それではひとつ、お付き合いください。

◀カタログより。右に見切れている手は「ふざけろ!」と叫んでいる相原勇サン。当初のお値段はグレードによって145〜180万円。

「ふざけろ!」と相原勇が叫び、初代ロッキーが登場した1990年

 初代ロッキーの登場は1990(平成2)年6月。自然破壊やオフローダーのモラル問題が取り沙汰され始めた時期に「ふざけろ!」「NEW・クルマニアン人へ」などの軽いキャッチコピーに面食らった四駆乗りも多くいたはずだ。

 ダイハツでは2.8ℓディーゼルのラガーを販売しており、源流をたどると昭和49年のタフトに行き着く。
 ロッキー以前のダイハツ製四駆は、旧来の四輪駆動車であるジープ、ランクル、サファリ、そしてジムニーの流れの上にあった。
 つまり80年代初頭のビッグホーンやパジェロに端を発する「RV」と呼ばれた快適性を重視した車種とは構造面からも趣を異にする。その本質はレクリエーショナルもスポーツ・ユーティリティもないプロ用機材の派生型といえる。
 この辺りは『モーターファン.jp』の筆者のバックナンバー記事をご参照願います。

祝・ダイハツ新型TAFT発売記念! 初代ダイハツ・タフト集中講座・元祖はこんな四駆だった(その1)

祝・ダイハツ新型TAFT発売記念! 初代ダイハツ・タフト集中講座・元祖はこんな四駆だった(その2)

初代ダイハツ・タフト集中講座 第2回 試乗編 乗るならどのタフト? ベストバイは1.6ガソリン! F20タフトグラン試乗インプレッション!!

初代ダイハツ・タフト集中講座 第3回 試乗編 育ちの違うタフトの兄弟・ブリザードLD10系を大解剖!!

初代ダイハツ・タフト集中講座 最終回 さらばタフト、そしてラガーへ。カタログで辿る後継車ラガーの変遷

 翻ってロッキーはどうか? イメージキャラクターに起用された相原勇は、当時の女性タレントの中でも元気印でイマドキで“軽いノリ”の急先鋒。昭和型の女優やアイドルと一線を画す存在で、同い歳の原田知世や南野陽子とは正反対に映った。だから歌謡曲の時代からバンドブームへの変遷期に、『イカ天(三宅裕司のいかすバンド天国)』の司会に抜擢され、その陰で旧来の音楽番組、『ザ・ベストテン』や『歌のトップテン』は打ち切られた。
 好き嫌いの分かれそうな時代の変わり具合は、販売上の演出を「若者の遊びグルマ」としたロッキーの目指す姿そのもので、ターゲットも「四駆乗り」ではなかった。

 実際に台数が売れたかはさておき、インパクトを残す意味でこの打ち出しは成功だったろう。
 そして幸か不幸か、後述の路線転換を果たしながらも、ロッキーのキャラクターは最初の1年で定まってしまったように思う。

 今でもロッキーを見ると真っ先に思い出すのは「PON! おNEWのロッキーだよ」という登場時のCMだ。

◀エンジンは登場から97年の販売終了までHD-E型1.6ℓの一本のみ。スペックはこの車重には十分と思われる。かつてのタフトグランF20と排気量、寸法、重量とも近い数値となって、本流のラガーよりご先祖臭が漂うほど。

◀エンジン解説ページも軽いノリ。下のほうには「パラダイス・カーのハートはスグレモノで(中略)クロスフローでペントルーフ型燃焼室、EFIでネット105PS」と記されている。令和になってもダイハツ四駆にゃヨワイのダ!

88年登場のスズキエスクードはロッキーと同クラス。ラダーフレーム構造、ローレンジ付きトランスファ、リジッド式の後足を守ったことも然り。そこに斬新なデザインと、オンオフ両刀使いの絶妙な味付けで新境地を切り拓いた。エスクードの快進撃は続き、ロッキーがなしえなかった4ドア化や排気量拡大で違いは決定的に。画像は売れ筋だった4ドア・2ℓのTD51W。蛇足ながら30万kmを過ぎてなお現役である。

未開拓のクラスへ殴り込んだダイハツ初代ロッキー

 よりカジュアルな商品として、ライバルであるスズキのエスクードのヒットを踏まえて登場した小型4WDがロッキーだから、冒頭の軽い演出も致し方ない。
 肝心の車両構造は、サスペンションが前:ダブルウィッシュボーン、後:リーフリジッド。トランスファはジープ以来の3軸オフセットドライブ式から脱し、2WD走行時に余分なギヤを介さず駆動ロスの少ないセンタースルー式に。
 ラダーフレーム形状やPCD139.7mmの立派なハブ、2速の副変速など昔ながらのタフネスぶりも併せ持ち……これらは6〜7年も前にいすゞや三菱が具現化した「RV」の要素をそのままに、1.6ℓクラスにコンパクト化したかに見える。
 初代タフトも他社製四駆の構造を手本にして、スズキのジムニー以上ジープ未満の1ℓクラスに仕立てたのだから、ダイハツの十八番といえる。

 ではコピー商品か? となると話は違う。このクラスは未開拓なのだ。古くはトヨタのランクルも日産のパトロールも海外の模倣に始まっており、結局は元祖(?)、アメリカはウイリスのジープに行き着いてしまう。ちなみにジムニーはジープ・ミニに由来。四輪駆動車のシャーシなんて、見た目の違いほどバリエーションに富んではいないのだ……大雑把に括れば。

 そんな伝統(呪縛とも)から解き放たれようとしたのがピックアップトラックから派生した一連のRVであり、思想まで捨て去ったのが近年のクロスオーバーであり、独自のアプローチで全輪駆動=AWDを追求したのが富士重工業(スバル)だった。
 
 さて、話を本題に戻し、登場時のカタログ(90年6月)から紹介しましょう。

ターゲットはこうだった。四角いデザインは「アタラシズムなフォルム」ではないと思う。
リヤスペースに溢れんばかりの花、テラス席で乾杯。当時、高校1年生だった私にこれがトレンディに映ったかの記憶はなく、あまり興味がなかった気がします、ゴメンナサイ。
22ページものカタログで走破性に関する記述は3アングルだけ。D/A(デパーチャ・アングル)は正直にシャックル部で計測しているから実際は35°はあるだろう。上級グレード車は小回りが利かないこともわかる。225幅のワイドタイヤで舵角が制限されるためだ。平成4年のカタログでは回転半径数値が4.9m/5.4mに変わっている。
クラス初のアンチスピンブレーキASB(=ABS)。国産四駆としても90年のランクル80系に次ぐもので、パジェロは91年の二代目から。ところがロッキーの場合は後輪のみで、さらに左右個別にセンサーが備わるのではなくアクスル中央部のリングギアで検知する簡易的なものだった。たしかにスピンを防ぐ程度の制御かもしれない。この解説文で「ABS」と書かれているのは意図的なのか?
四輪駆動車として致命的な「ローレンジなし」のフルタイム式。センターデフは一般的なベベルギア式でロック可能。優位性が特にアピールされていない点から、ASBを動作させるための試験的な機構だったのかもしれない。パートタイム式ではロッキングハブで前軸を切り離し燃費面で有利とされるが、駆動方式に関わらず10モード燃費は10.6km/ℓと同じ数値である。
カタログ随所に若いカップルのカットが散りばめられる。パステル調のサンレモグリーンが当初のイメージカラー。前輪にDマークのハブキャップが取り付けられるフルタイム仕様。ドアにもFULLTIME4WDのデカールが見える。
ダブルウィッシュボーンの前足を四輪駆動車に採用するのは、ダイハツでは初めて。いまとなってはこの形式もヘビーデューティの部類で、当時でもマクファーソンストラット式のエスクードに対してタフネスさを誇れたはずだ。

◀当時のRVが必ず装備していた減衰力可変ダンパー。四駆では社外ダンパーに変えるユーザーも多く、すぐ無駄になってしまうから、このようにオプション扱いとするのが正解。

インパネこそ四駆らしさが残されたが、シティコミューターとして見劣りしないだけの快適性は揃えている。左の文言にあるイカス、バツグン、ゼイタク、ノリゴコチなど、カタカナで書くことが流行ったことを思い出す。そして女子中高生は丸文字だった。
脱着式のレジントップは簡単に外せる代物ではなく、月極駐車場に放置して出掛けるのも心配。

ジープ用やランクル40用でおなじみ、米ベストップ社の幌がオプション(アクセサリー品)として販売されていた。日本で幌車は売れないとはいえ、オープンモデルをラインナップして欲しかった。

◀登場時は全車5速MT、グレード構成は上からSX、SE、DXの三本立て。上級2グレードはオーバーフェンダー付きで、7万円高のフルタイム式も選べた。廉価なDXのすっぴんボディは小型車枠上限より10センチ以上も狭幅で、コンパクトさを生かした山間地のパトロールカーにも採用された。グレードによるエンジンやトランスミッションの差別化は図られておらず健全。

【ダイハツ ロッキー DX E-F300S 1990年】

※カッコ内はSX/SEグレードの諸元

寸法 全長3705mm×全幅1580(1635)mm×全高1725mm
ホイールベース 2175mm
トレッド 前/後 1330mm/1330mm
車両重量 1230(1250)kg
エンジン HD-E型 直列4気筒OHCガソリン
総排気量 1589cc 
最高出力 105ps/6000rpm
最大トルク 14.3kg-m/3500rpm
トランスミッション 5速MT
トランスファ パートタイム式・2速副変速機付き(フルタイム式・副変速機なしも選択可)
最小回転半径 5.1m(5.7m)
ブレーキ前 ディスク(ベンチレーレッドディスク)
ブレーキ後 リーディングトレーリング
タイヤサイズ 195SR15(225/70R15)

「そうなんだよ!!」 ヤングカップルの街乗りマシンから一転、マリン&ウインタースポーツの演出へ

 老舗の四駆専門誌に掲載されたダイハツの広告は、ロッキーが登場した90年下期でもラガーばかりで、オフローダーに向けて売るつもりがなかったとも受け取れる。
 それが、イメージキャラクターの契約が切れる91年夏から売り方まで変えたのか、急に広告が載り始めた。
 エスクードに対抗するかのような特別仕様車攻勢が行なわれ、ヤングカップルの街乗りマシンから一転して、マリン&ウインタースポーツの演出となった。販売店からのフィードバックで、実際の購入層がさほど“軽くなかった”と判明した可能性もある。 
 まだ走破性のアピールは少なかったが、登場1年でここまでのキャラ変だ。「そうなんだよ!」とシャーシ開発者が膝を叩いたと勝手に想像する次第。
 時はバブル終焉近く。『イカ天』の放送はロッキー登場の半年後に打ち切られ、バンドブームはアーティストの時代に。各メーカーの四駆は熟成期に入って完成度を高めつつ凋落の気配も見せ始めていた。常に改良の進むエスクードに対して、ロッキーに実質的なテコ入れがされなかったことは残念である。

91年6月に初めて登場した200台限定の特別仕様車、ニューウェストの雑誌広告から。塗色を変えてガードバーやスペアタイヤカバーなど外装を飾り、ビキニトップ(簡易幌)がおまけでつく。クイズに答えると同ブランドのダイバーウォッチがもらえるキャンペーンが行なわれた。11月にはスキーメーカーのロシニョール仕様も登場。エスクードもヘリーハンセンやゴールドウィンなどスポーツブランドとの提携が見られた。
92年3月の4速AT追加時にSXリミテッドが登場、フルタイム式は廃止。AT車は終減速比が5.285から5.571にローギヤード化された。最高額モデルは200万円を超えて車格に対し割高感が出てきたが、ようやく「オフロード」の言葉が多く見られるようになった。10月にはガード類やバンパーを黒塗りとした特別仕様車、R4を発売。

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