海上自衛隊:補給艦「ましゅう」、海外派遣や長期活動可能な洋上のガスステーション
- 2021/05/22
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貝方士英樹
護衛艦が洋上で活動を続けるには燃料や水、各種物品の補給が必要だ。しかし補給の度に港へ戻っているのも効率が悪い。洋上で補給ができれば効率的で活動継続性も上がる。補給艦が護衛艦に随伴する理由がこれだ。海を走るガスステーションである。今回は、補給艦「ましゅう」型を紹介する。
TEXT&PHOTO◎貝方士英樹(KAIHOSHI Hideki)
全長221m、基準排水量1万3500トンの巨体を持つ補給艦「ましゅう」型。2基のガスタービンエンジンが最大速力24ノットで走らせる。高速性と長期活動可能な設備を備え、海外派遣にも対応する能力を持った洋上の補給拠点だ。
補給艦「ましゅう」は2004年に就役した大型艦で、筆者は同年3月15日に三井造船玉野事業所(岡山県)での引き渡し式で「ましゅう」を見たのだが、その大きさにはとにかく驚いたことを憶えている。
補給艦は燃料や物資などを相手に供給するのだから、その補給物資を飲み込む分、大きくなることは頭ではわかっていたつもりだった。しかし三井造船の岸壁で現物を目の当たりにしたときのインパクトは事前知識以上のものだった。
近付きすぎると24mmの広角レンズでも収めきれず、しかも歪んだ映像になる。だから外観全景をほどよく捉えるために艦から離れ、適所を探して岸壁をあちこち歩いた記憶がある。
引き渡し式典も終わり出港のための離岸作業。曳船が沖方向から極太の索でグイと引く。巨体が左舷側にグラリと大きく傾き、岸壁から引き離される。艦体が右舷へ復元したのちは、スルスルと舳先を沖に向け走り出した。巨体の割に滑らかで速い動きに感心した。
護衛艦が洋上で活動を続けるには燃料や水、各種物品の補給が必要だ。しかし補給の度に港へ戻っているのも効率が悪い。洋上で補給ができれば効率的で活動継続性も上がる。補給艦が護衛艦に随伴する理由がこれだ。海を走るガスステーションである。
補給艦「ましゅう」は従来型の補給艦「とわだ」型の改良型になる。「とわだ」型より約5000トン大型化し、燃料や補給物品の搭載能力を大幅に向上させた。補給用燃料は「とわだ」型の1.5倍、補給用の水は2倍以上を積むことができるという。
主機には補給艦として初めてガスタービンエンジンを採用、搭載している。ディーゼルに比べ、始動から離岸までの所要時間が半減するなど使い勝手も向上しているそうだ。先述どおり足も速く、最大速力は24ノットで艦隊随伴能力は高い。高速化する護衛艦と並走しながら洋上補給を行なうために造られているわけだから、足の速さは当然でもある。
艦内には集中治療室や45台のベッドを備えた病室など医療設備も拡充され、機能面でも充実している。災害派遣やPKO、 在外邦人輸送などの活動にも対応できるものだ。また、長期行動も可能なように航続距離の延伸も図られている。長期行動とは海外派遣活動だ。
実際「ましゅう」は就役直後ともいえる2004年11月にはインド洋へ派遣されている。テロ対策特別措置法に基づく派遣で、パキスタン海軍などへ燃料補給を行なった。いきなり約半年間の海外派遣活動という実戦を経験している。以降、2006年、08年、09年とインド洋派遣を繰り返した。そのほか多国間協同訓練や、東日本大震災での災害派遣出動などを行なってきた。
日本のシーレーン防衛と地続き(海続き)の活動としての補給艦の海外派遣は、護衛艦の中東・インド洋派遣が現実味を帯びる頃にはすでに睨まれており、護衛艦に随伴できる高速性と長い航続距離、長期間の活動能力を備えた新世代補給艦として設計開発されたのが「ましゅう」だと理解できる。少なくとも約20年前から海自は海外での活動に備えていたということだ。現在、護衛艦や補給艦などの海外派遣は常態化している。
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