スバル・レヴォーグのメカニズム徹底解説 −WRX並みの走りと安全性を両立−「中古車でも人気の理由」
- 2019/07/26
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MotorFan編集部
日本にスポーツワゴンというジャンルを根付かせたレガシィ・ツーリングワゴンのDNAを継承。伝統の走りを磨き上げるだけでなく、快適なロングツーリングに不可欠な静粛性と乗り心地を改善してきた新型レヴォーグ。
アイサイトをはじめとする安全装備も充実し、さらなるステージへと進化した。
REPORT●安藤 眞(ANDO Makoto)
PHOTO●宮門秀行(MIYAKADO Hideyuki)
※本稿は2017年8月発売の「ニューモデル速報 Vol.555 新型レヴォーグのすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。
スバル・レヴォーグのパッケージング
■ 伝統のツーリング性能を常に磨き続けるスバルの開発姿勢
日本において“ステーションワゴン”というカテゴリーを定着させたのは、1989年に発売された初代レガシィだ。
それまで国産ステーションワゴンといえば、多くは商用バンと同時開発され、「荷物の積み下ろしがしやすい」という以外、取り立てて特徴のあるクルマではなかった。
ところがレガシィは、“ワゴン”の前に“ツーリング”というキーワードを付けて登場。商用バンはラインナップせず、「セダンにさらなる付加価値としてユーティリティをアドオンしたクルマ」として訴求を図った。
実際のクルマも、セダンと同じメカニズムを採用。バンといえば、リヤサスはリーフリジッドが当たり前だった時代に、ストラット式独立懸架を採用して操安性と乗り心地を改良。
ハイエンドグレードの「GT」は、エンジンも当時の「10万km世界速度記録」を達成したセダン「RS」と同じ2.0ℓターボを搭載するなど、荷役性以外の点でも、クルマ好きの心を捉える魅力を持っていた。
さらに二世代目と三世代目では、1km区間平均最高速度記録で「量産ワゴン最速(249.981km/hと270.532km/h)」のタイトルを獲得。「走れるワゴン」としてのキャラクターを明確にした。
しかし、その後レガシィは、好調な北米市場に軸足を移し、ボディも大型化し始め、五代目ではサイズアップが顕著になる。北米では、SUVテイストを加えた“アウトバック”が販売の中心へと移行。“ツーリングワゴン”は日本市場がメインとなる。
そうなると「大きさの問題」が顕在化し始め、旧来のファンや販売店から、「四代目レガシィ(BP型)クラスに凝縮したサイズのワゴン」待望論が沸き起こる。それに応える形で開発されたのが、レヴォーグである。
名前の由来は、“レガシィ レヴォリューション ツーリング”。レガシィの伝統であるツーリング性能に、WRX STIのスポーツテイストを融合させた“革新スポーツツアラー”をコンセプトとする。
驚かされるのは、日本専用モデルとして企画されたこと。日本市場だけで利益を出すには、月間販売台数30傑には定着したい。台数にすると、2000台強/月が目安となる。
しかし大メーカーといえども、新規参入モデルでこのレベルに届かず、消えていったモデルは少なくない。
ところがレヴォーグは、3年間で約9万5000台を売る人気モデルとなった。それだけでなく2014年の東京モーターショーで発表されるやいなや、欧州マーケットからの盛大なラブコールを巻き起こした。
そして、急遽、輸出仕様を仕立てる必要に迫られたのだが、このことが、さらにレヴォーグの走行性能を磨き上げることになった。より走行速度の高い欧州で浮き彫りになった改良点が、年次改良で日本仕様にも反映され、性能の底上げにつながったのである。
デビューから4年目となる今回は、初のビッグマイナーチェンジ。“D型”となった新型レヴォーグは、どんなふうに生まれ変わったのだろうか。
<スバル・ツーリングワゴンの足跡>
▼ 初代レガシィ・ツーリングワゴン「GT」
スバルにWRC初優勝をもたらした2.0ℓターボ+フルタイム4WDセダン、初代レガシィ「RS」と同じEJ20型エンジンをワゴンに搭載。スポーツカーの心臓を搭載する快速ワゴンという新ジャンルを打ち立てた。
▼ 二代目レガシィ・ツーリングワゴン世界速度記録達成車
1993年9月9日にデビュー直前の二代目レガシィ・ツーリングワゴンが、アメリカ・ユタ州のボンネビルスピードウェイで、ステーションワゴン多量生産車無改造部門における1kmの区間平均速度249.981km/hの世界速度記録を達成。
▼ 四代目レガシィ・ツーリングワゴン「GT」
2003年に登場。三代目まで5ナンバーサイズだったボディを1730mmに拡幅した3ナンバーサイズを採用。現在のレヴォーグとほぼ同じ大きさ。2003-2004日本カー・オブ・ザ・イヤー(日本カー・オブ・ザ・イヤー 実行委員会主催)をスバルとして初受賞。
▼ 六代目レガシィ・アウトバック
2014年に発売されたレガシィの現行モデル。国内市場向けツーリングワゴンの位置をレヴォーグに譲り、好調な北米市場に合わせた大柄なボディサイズを採用。セダンのB4とクロスオーバーSUVタイプのアウトバックの2タイプとなった。
■ 良好な乗降性はそのままにリヤシートを大幅に改良
今回はマイナーチェンジであるため、ランニングコンポーネントの搭載方法や乗員の座らせ方など、主要なパッケージングには変更はない。外形寸法も「基本的に」同じだ。
全長×全幅は、4690mm×1780mm。均整がとれているためあまり大きくは見えないが、全長はいわゆる5ナンバーサイズ(4700mm)いっぱい。全幅は5ナンバー枠を80mmはみ出している。
しかし実際のサイズ感としては、四代目レガシィのツーリングワゴン(BP型)とほとんど変わらない。「2.0GT−S」の全高はルーフアンテナ上部までで1490mmだが、「1.6GT」は1495mm、同「GT−S」「GT S−Style」は1500mmと高くなった。
Bピラーから前は、基本的に旧型インプレッサ(GP/GJ型)と同じため、乗降性や居住性も同じ。
サイドシルスポイラーが全車標準装備されるため、シル幅は広めだが、裾広がり形状になっているため、足運びは気にならない。運転席の着座は522mmと低過ぎず、間口の高さも十分にあるため、身長181cmの筆者でも乗降性は良い。
筆者がシート位置を合わせると、最後端から80mm程度(スライド量は240mm)、ハイトアジャスターは5〜10mmぐらい上げてちょうど良い。
ステアリングコラムには、42mmのチルト(上下)と40mmのテレスコピック(前後)調整が付き、操舵重視のポジションも、高速でリラックスしたポジションもつくりやすい。内装はシルバー系の加飾が控えめで、落ち着いた雰囲気になった。
操作系のレイアウトは前モデルを踏襲しつつ、ステアリングスポークに配置されるスイッチ類を適正化。右側スポークのステアリング制御スイッチは、注目のツーリングアシストを象徴して、ステアリングのマークへと変更されている。
運転席からは、ボンネットは5分の3程度まで目視できる。Aピラーとドアミラーの間に隙間があるので、交差点左折時の死角も小さい。
斜め後方は、リヤクォーターウインドウがよく機能しており、後席ヘッドレストも視界を妨げない。真後ろは、車両から50ccmのところに置いた1mのポールが視認できる設計だ。
後席の乗降性も良好。腰の動線はしっかり確保される。Bピラー下部やドアトリムも逃げ形状で、27cmのアウトドア用スニーカーが真横に通せる。筆者が着座すると、頭上の余裕は約80mm、膝前の空間は約50mm。フロアトンネルが大きいが、2名掛けなら足の置き場も必要十分だ。
今回のモデルチェンジの目玉は、リヤシートの改良。バックレストが6対4分割から4対2対4分割となり、真ん中に長尺物を積んで2名がゆったり座れるようになった。スキーフリーク待望の改良である。
ラゲッジ容量は五代目レガシィ(BR型)とほぼ同等。「レガシィから乗り換えるお客様に不便を強いないように」との配慮からで、四代目(BP型)と比べると、63ℓ大きい。
広くて見やすい視界
右左折時やコーナリング時に視界の妨げにならないよう、ピラーやドアミラーの形状、位置を最適化。フロントサイドウインドウに三角窓を設け、視界を拡大。運転席からはボンネットの5分の3程度まで目視できる。
疲れにくいフロントシート
乗り心地とサポート性を追求し、運転時の疲労を軽減。正確なドライビングを支える。フロント、リヤともにシートバックのメイン部とサイド部は硬さの異なる素材を採用。フロントシートのヘッドレストは上下だけでなく角度も調整できる可倒式。
ゆとりある後席スペース
リヤシートの膝まわりに十分なスペースをとっているので、ロングツーリングでも前席、後席ともに心地よい時間が過ごせる。さらに、リヤにもシートベルト未装着ウォーニングランプ&ブザーを装着して安全性を高めた。
4対2対4分割式リヤシート
スバル初採用の4対2対4分割可倒式リヤシートは、シートフレームから新設計。中央席を独立して倒せるので、後席2名乗車時でもスキーなどの長尺物の積載が可能に。シートアレンジにより多彩なシーンに対応できる。また、シートが急に倒れにくい機構を採用。操作時の指の挟み込み防止に配慮している。
空調パネルのデザイン変更
8インチのナビ画面採用に伴い、空調パネルのメッキリング付きエアコンダイヤルのスイッチレイアウトを変更し、従来型より薄くなった。エアコンは左右独立温度調節機能付きフルオートエアコンを全車に標準装備している。
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