「車検証の電子化」車検証ICカードの空き領域をどう活用するかでユーザーメリットは大きく変わる 2023年1月導入!?「車検証の電子化」で自動車アフターマーケットが享受する恩恵は多大。では自動車ユーザーのメリットは?【クルマの所有・メンテナンスに関わる新用語、その意味は?】
- 2020/10/25
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遠藤正賢
自動車業界は今、100年に一度の大変革時代を迎えていると言われているが、クルマを所有しメンテナンスする私たちユーザーが直に接するアフターマーケットも決して例外ではない。当企画では、そうしたアフターマーケットの現状を、近年生まれた新しいキーワードを切り口として解説する。
今回は、2023年1月の導入を目指して政府や関係団体などで進められている「車検証の電子化」について紹介したい。
TEXT&PHOTO●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) FIGURE●国土交通省
「車検証の電子化」については、国土交通省自動車局自動車情報課が事務局となって、2018年9月に発足させた「自動車検査証の電子化に関する検討会」を計11回開催。2020年6月に、制度概要や今後の方針を示した報告書を公表した。
そもそもこの検討会が発足したのは、「自動車保有関係手続のワンストップサービス(OSS)」の利用が広まっていないことが背景にある。
新車新規登録については2005年、継続検査(=車検)・変更登録(=氏名・住所等変更)・移転登録(=名義変更)・中古車新規登録・一時抹消登録(=使用の一時中断)・永久抹消登録(=廃車)については2017年4月から運用が開始されたものの、2018年度末時点で新車新規登録での利用率は40.8%、我々ユーザーに最も関係が深い車検に至っては16.7%と低水準だ。
その最大の理由は、いくら手続をオンライン化しても、紙の自動車検査証(車検証)や検査標章(ステッカー)を受け取るのに運輸支局等へ出頭しなければならず、指定自動車整備事業者(指定整備工場。運輸支局等に車両を持ち込まず自社工場で車検を実施できる整備工場のこと)でもさほど工数の削減につながらないことにある。
こうしたことから、2018年6月に閣議決定された「未来投資戦略2018」の「デジタル・ガバメントの実現」において、車検証の電子化の推進に取り組むことが明記され、検討会の発足に至ったというわけだ。なおその後、2019年5月の道路運送車両法改正により、車検証の電子化などが正式決定されている。
また検討会では、オンライン上でのみ車検証情報を可能とするものも含め、様々な電子化の方法が検討されたが、券面に車検証情報を記載でき、インターネット接続環境がなくとも必要最低限の情報は目視可能なうえ、低コストで持ち運びしやすく活用の幅も必要充分程度に広い、非接触型ICカード方式を採用することが決定されている。また車検の際、車検証情報の更新とステッカーの印刷を、OSS手続を代行する指定整備工場などに委託する方針が固められている。
このように、車検証の電子化が行われるきっかけ自体は、OSSの推進および業務工数削減という、政府と自動車アフターマーケットの都合が出発点となっているが、我々自動車ユーザーにとっても無関係の話ではない。
では、車検証がA4サイズの紙からクレジットカードなどと同様のICカードになることで、我々自動車ユーザーのカーライフはどんな風に変わるのか。
まず直接的には、指定整備工場に車検を依頼した場合、点検整備はもちろん車検証の更新とステッカーの貼り替えまで、早ければ1時間程度ですべてが完結する。そのため、車検証とステッカーが届くまで、その代わりとなる保安基準適合標章をフロントガラス上部に貼り、届いたら貼り替えるという煩わしい作業を自分でせずに済むようになる。
さて、これだけならユーザーにとって大したメリットはないのだが、ICカードに内蔵されるICチップの空き領域に、どのような情報やアプリケーションを格納し、車検証情報と紐付けるかによって、得られるメリットは大きく変わってくる。
検討会が応募した際に寄せられた主なアイデアは、報告書に例示されている上図の通り。現状でバラバラになっているサービスを一元化できること、車両の売却または中古車購入の際に正確な車両・整備情報を把握しやすくなり適正な価格設定が期待できること、が特に、我々自動車ユーザーのメリットとしては大きいだろう。
だが、自動車ユーザーの誰もが等しくメリットを得られるのは、1番の「車両情報を格納した利活用」だと筆者は思う。なぜなら、取扱説明書のデータが車検証ICカードに格納されるようになれば、あの辞書のように分厚い冊子をグローブボックスに常時保管し、貴重な収納スペースを丸々食い潰す必要がなくなるのだから。
このICカード方式の車検証は、軽自動車や二輪車も含めて2023年1月の導入を目指しているというが、ICチップ空き領域の利活用も含めて、一日も早い実用化を心から期待している!
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