速度25km/hの自動運転ミニバス・GO!! そして、ホンダ・レジェンドのレベル3が「2020年度中」に発売される意味
- 2020/12/10
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牧野 茂雄
茨城県境町で「自動運転シャトルバス」が走り始めた。フランスのナヴィア(navya)製のミニバスを町の予算で3台購入し、ソフトバンク子会社のボードリーが運行業務を行なう。乗車料金は無料の行政サービスだ。実際に筆者が境町へ出かけて取材したわけではなく、これまでに報道された内容とナヴィア社のホームページを閲覧しただけだが、地方の小さな町の決断として非常に興味がある。公共交通機関の消滅を防ぐ手段として、たしかに有効である。
TEXT◎牧野茂雄(MAKINO Shigeo)
「自動運転シャトルバス」が走り始めた意味を考える
日経ビジネスによると、境町ではさる11月26日からナヴィア社製のオートノムシャトル・エヴォ(Autonom Shuttle Evo)シリーズのモデル「ARMA(アルマ)」を3台購入し運用を開始した。境町は車両導入費用および今後5年間の運航経費として5.2億円を支出するという。期間限定ではなく、町民の足として「町営バス」のように定常的な運航を行なう計画だ。
町営バスを運行しようにも、人手不足で運転手も保守点検に必要な人員も確保できない。タクシー乗務員も高齢者。そうした地域は少なくない。自動運転バスは最後の手段とも言える。
ナヴィア社の動画を見ると、これは日本的な感覚でもマイクロバスではない。ミニバスだ。かわいらしさを演出するラッピングを施さなくてもかわいい。ボードリーの前身であるSBドライブは、2019年6月に国土交通省関東運輸局から道路運送車両の保安基準(これは法律ではなく国土交通省令。したがって改正には閣議決定が要らない)第55条に基づく基準緩和の認定を受けており、「ARMA」は公道走行のためのナンバープレートを取得できる。
なぜ55条の基準緩和認定を受けているかといえば、このミニバスには保安基準が定めるところの「舵取り装置(ステアリングホイール、いわゆるハンドル)」がない。オートノマス(自動運転)、しかもアンマンド(Unmanned=無人)のオートノマスを前提とした車両である。保安基準では「舵取り装置」は必須だが、この「ARMA」にはない。だから特別な基準緩和措置の適用を受けた。
前輪と後輪はそれぞれ逆相転蛇される。おそらく非転蛇軸の「引きずり」を嫌ったのだろう。旋回半径を小さくするというより最高時速25km/hのなかで走行軌跡をコントロールしやすくするための選択と思われる。ちなみに25km/hはパーキングスピードである。
パーキングスピードでは後輪のスリップアングルがほぼゼロであり、後輪操舵をしない場合は単純にタイヤが引きずられる状態になる。「ARMA」走行中の動画を見ると、旋回中でも4輪は地面に対して視認できるような対地キャンバー変化は起こしていない。じわっと駆動力をかけながら、タイヤ接地面の横力を「転がり」に奪われながら走行しているような印象を受ける。
以下、堺町での運用については日経ビジネスの記事から引用する。
「当面は1台を使い、町内の公共施設を結ぶ往復約5キロメートルのルートを平日、4往復する。運賃は無料で、誰でも乗車できる。車両の準備ができ次第、2台を使って1日8往復に増やし、その後、ルート上にあるスーパーマーケットや金融機関、小学校などにもバス停を設置する予定。最終的には町内に5ルートを張り巡らせる構想を描く」
「もっとも、運転席のない自動運転バスといっても無人で走行するわけではない。バスは事前にプログラミングされたルートに沿って走り、歩行者や駐車車両などの障害物をセンサーで検知すると自動停止。ただ、自動で回避することはできず、その都度、同乗しているドライバーがコントローラーを使ってバスを動かす必要がある。また現状では信号機が赤か青かもドライバーが目視で確認している。これに関しては今後、信号機のデータを受信して自動判別できるようにする予定という」
このミニバスは11人乗りで、電動モーターと車載バッテリーで走るBEV(バッテリー電気自動車)だ。ナヴィアが公表しているスペックは最大乗員15人(着席11人・立ち席4人)、全長4.78×全幅2.10×全高2.67m、最低地上高0.17m、空車重量2600kg、最大重量3500kg、電動モーター出力22.6kW(最大34kW)、リン酸鉄リチウムイオンバッテリー容量33kWh、最大運用速度25km/h、最大登坂能力18%、最小回転半径4.5m…… である。
すでにこのミニバスは160台以上が販売され、22カ国で使われているという。境町で運用されている車体は、羽田空港で試験的に使われているものと同じように見える。羽田空港は構内の速度規制に合わせて最高時速8km/hで運用される。現在のナヴィア社のカタログを見ると、LiDAR(ライト・ディテクション・アンド・レインジング=光学式の測距装置)やカメラなどのセンサー類の配置はある程度オプション追加ができるようだ。
デトロイト郊外の町ランシングでも、2020年7月から住宅地を回るナヴィア製ミニバスによるシャトルサービスが始まった。高齢者や移動が困難な障害者を乗せて診療施設、薬局、ファーマーズマーケットなどを巡回する1周1.31マイル(約2.1km)のコースで運用している。境町と同様、乗務員が乗車しており、乗員はバスの機能を説明したり車椅子での乗降をサポートしたりするほか、万一の場合にはあらゆる業務をこなす、という。
ランシングのプロジェクトは共同体形式で運営され、事業開発組織であるプラネットMが全体の取りまとめを行なっている。ミシガン工科大学とミシガン無人航空システム・コンソーシアム(MUASC=Michigan Unmanned Aerial System Consortium)も参加している。費用は助成金と寄付でまかなわれる。アメリカは自動車社会であり、クルマを持っていて、それを運転できる人でなければ自由な移動はほぼ不可能。必然的に高齢者と障害者は交通弱者になってしまう。ここを最新技術で支援しようという試みがランシングのプロジェクトだ。
境町でも、このミニバスには乗務員が乗っている。たとえばほかのクルマを避けようと停止した場合などは、乗務員が手動に切り替えて操作する。普通のステアリングは付いていないので、ビデオゲームのコントーラーのような道具を使って操作する。ナヴィア社のホームページには「無人化できる」ように書かれているが、境町でも羽田空港でもミシガン州ランシングでも乗務員が乗っている。
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