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【DS3クロスバックE-テンス試乗】ガソリン車との価格差はわずか28万円!? 優雅な雰囲気が楽しめるフレンチEV

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BセグメントのコンパクトSUV、DS3クロスバックの電気自動車版がE-テンスだ。補助金を利用すれば、ガソリンエンジン車との価格差も意外なほど小さくなる。EVライフがますます身近になったことを感じる1台だ。

TEXT●安藤眞(ANDO Makoto)

価格は534万円。東京都なら約80万円の補助が得られるから実質454万円

欧州では21年から企業平均燃費規制が強化されるが、それを回避するための効果的な手段が電気自動車(EV)。規制は走行時の燃費(CO2排出量)にかかるため、EVならCO2排出量はゼロとして計算できる。

そんな理由もあって、日本よりEV化の進展が速いのが欧州。グループPSAでもBセグメント車を中心にEVの導入を開始しており、DSオートモビルでは、DS3クロスバックE-TENSE(E-テンス)がその先駆けとなった。

外観はガソリン車とほとんど変わらないDS3クロスバックE-テンス。
「E-テンス」は、DSオートモビルの電動化テクノロジーの総称のことだ。

車両のベースとなるCMP(Common Module Platform)は、もともと電動パワーユニットの搭載も想定して設計されており、キャビンやラゲッジスペースは内燃機関(Internal Combustion Engine=ICE)車とまったく同じ。総電力量50kWhの走行用バッテリーは、センタートンネルと前後座席下のスペースを使って巧みに搭載されている。

外観や内装の基本的なデザインや、運転支援システム、機能装備はICE仕様のDS3クロスバックと変わらず、加飾やトリムの素材などで違いを出している。

フロントグリルはフランスの伝統色であるアンスラグレー塗装が施されている。
各所にあしらわれているクロームメッキも、E-テンスではつや消しのサテンクロームとなっている。

キーを持ってクルマに近づくと、ドアハンドルがせり出すのもICE仕様と同じだが、ドアを開けた室内は、イメージがずいぶん異なる。黒および茶色基調のICE仕様に対し、E-テンスはシートもトリムもパール風の白基調。ステアリングホイールも専用の白い革が巻かれており、クリーンエアヴィークルらしいピュアなイメージを演出している。シートサイドやドアトリムの菱形ステッチは、某有名ブランドのバッグをイメージしているそうだ。

ダッシュボード、ドアトリム、そしてステアリングまでホワイトで統一されている。
各部には、格子状のステッチが刻まれる。

ドライビングポジションを合わせようとしたら、シート調整は電動ではなく手動式。電気なら十分にあるし、シートの調整に使ったぐらいでは航続距離にも影響などないから、重量とコストをできるだけ抑えようという狙いがあるのだろう。

室内と荷室のスペースは、ガソリンエンジン車と同一だ。
シートはサイド部にナッパレザーを採用する。

ダッシュパネルの真ん中にあるスタートスイッチを押し、システムを起動。ブレーキペダルから足を放すと、EVらしく静かに走り出す。インバーターのスイッチング音など、電気的なノイズもまったく聞こえない。

発進時の加速度は、ICE車とほとんど変わらず。以前のEVに見られた「これ見よがし」なトルク応答をさせないのが好ましい。乗り心地はICE車より重厚。車重が300kg重いのが効いている。細かい段差で多少のコツコツ感があるが、これは予想どおり。タイヤは銘柄もサイズもICE仕様と同じだが、指定空気圧が前後とも250kPaと高めなのだ。

Dレンジでの回生ブレーキの強さは、ガソリン車のエンジンブレーキをイメージしたとのこと。シフトセレクタを手前に引くと、回生が強まるBレンジになる。このときの減速度は最大1.3m/s^2と、1〜2速シフトダウンしたようなイメージとなる。停止するにはフットブレーキに踏み換える必要があり、ワンペダル走行はできないが、フットブレーキを緩めればクリープ走行するようになっており、ICE車から乗り換えても違和感はない。

シフトレバーを操作することにより、回生ブレーキの強さを2段階で選択可能。Dモードはガソリンエンジンのエンジンブレーキと同様のフィーリング、Bモードではより強いエンジンブレーキ感覚で効率的に充電してくれる。

首都高速への合流加速は申し分なし。モーターの最高出力は100kW(136ps)、最大トルクは260Nm(26.5kg-m)。有り体に言えば「ガソリン無過給2.6L並み」だが、内燃機関と異なるのは、回転数が高まらなくても最大トルクを引き出せること。変速機でトルク増幅できない分を割り引いても、3.0L級の力強さはある。

Eテンスは136ps、260Nmのモーターで前輪を駆動する。
カバーを外すとご覧の通り。

シフトノブの左にあるスイッチで、ドライブモードが3種類から選択でき、Sportで100%出力、Normalで80%出力、Ecoでは60%出力になる。大黒パーキングを出てベイブリッジに合流する登り坂でEcoモードを試してみたが、まったく不足感無く、登坂と加速合流をこなしてくれた。

E-テンスのシフトレバー周り。

ライドフィールもベース車同様、違和感なく良くまとまっているが、ふとした瞬間にクルマの重さを感じることがある。大黒PAの出口にうねった路面があるのだが、登り坂に向けて無造作に加速を続けていたら、けっこう盛大にあおられた。とはいえ、あおられただけですぐにスタビリティを取り戻したので、走行に支障があるわけではないのだが。

また、ちょっと早めの操舵を入れると、ICE仕様に較べてわずかに応答遅れが感じられる。トーションビームのリヤサスにはパナールロッドを追加して横剛性を高めているそうだが、ブッシュがたわんでパナールロッドが効き始める瞬間が、ヨー加速度の変化として感じられるのかも知れない。と言っても、曲がるべき場所に気付くのが遅れて慌てて操舵するようなシーンでなければ気付かない程度(実際それで気付いた)。試乗全般を通してのライドフィールは、ほぼ好ましいものだった。

75分の試乗を終えた際の電費計の数値は、6.5km/kWh。単純に電池容量をかけると、航続距離は325kmとなる。日本より最高速の高い欧州のWLTCモードで320kmとのことなので、実力値もこのくらいと見て良いのではないか。

ちなみに残量ゼロからの充電時間は、家庭に設置しやすい3kW(200V×15A)の普通充電器で約18時間、6kW(200V×30A)だと半分の約9時間、CHAdeMO規格の50kW急速充電器なら、80%充電まで約50分とのこと。バッテリーの保証は8年または16万kmの早いほうで、これに達する前に容量が70%を下回ると、無償交換の対象となる。

充電口はボディ左リヤに装備。

試乗車は上級グレードのグランシックだったため、車両本体価格は534万円。東京都なら、国のCEV導入補助金と合わせて約80万円の補助が得られるから、実質454万円となり、ICE仕様との価格差は28万円に縮まる。保険や重量税の優遇、燃料費なども含めれば、価格差はほぼゼロと考えて良い。手放す際の値落ちはICE車より大きい可能性はあるが、その損失でEVライフが楽しめるなら、選択肢として「あり」ではないか。

DS3 クロスバックE-TENSE 諸元表

■ボディサイズ
全長×全幅×全高:4120×1790×1550mm
ホイールベース:2560mm
車両重量:1580kg
乗車定員:5名
最小回転半径:5.3m

■パワートレーン
モーター定格出力:57kW
最高出力:100kW(136ps)/5500rpm
最大トルク:260Nm/300-3674rpm
電池種類:リチウムイオン電池
総電力量:50kWh
定格電圧:400V
交流電力量消費率:135Wh/km
一充電走行距離JC08モード:398km

■シャシー系
サスペンション形式:Fマクファーソンストラット・Rトーションビーム
ブレーキ:Fベンチレーテッドディスク・Rディスク
タイヤサイズ:215/55R18

■価格
534万円

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