北京モーターショー2018 REVIEW その3:今年の北京はどんなショーでどう読み解くべきか? 巨大市場・中国で日本のサプライヤーの存在感は? ここでもテーマは「電動化」
- 2018/05/20
-
Motor Fan illustrated編集部 鈴木慎一
間違いなく世界最大の自動車市場で開催される世界最大のショー。それが北京モーターショーだ。今年も世界中の自動車メーカーが北京に集結した。今回のトレンドは、「電動化」のひと言。それを支えるのは、ニッポンのサプライヤーの新しい仕事でもある。サプライヤーの動きはどうだったのか?
TEXT & PHOTO:鈴木慎一(SUZUKI Shin-ichi)
いかに中国地場の自動車メーカーに食い込んでいくか?
北京モーターショー2018 REVIEW その1:中国のOEMとスタートアップの勢いを過小評価するな。
北京モーターショー2018 REVIEW その2:日欧の自動車メーカーの動きは?
さて、今度は部品メーカーのブースを見て回ろう。今年も、ボッシュ、ヴァレオ、デンソー、アイシン、日立オートモティブシステムズなどのメガサプライヤーが出展していた。メイン会場のなかに自動車メーカーに混ざってブースを構えられたのは、中国を長い間付き合ってきたボッシュだけ。あとは、仮設テントでの出展だ(コンチネンタル、ZF、マグナなどは出展していない)。彼らは中国の自動車ファンに自分の技術を見せるために高いコストを払ってショーに出ているわけでは、もちろんない。数え切れないほどある中国の自動車メーカーに売り込むためにショーに参加しているのだ。だからどのサプライヤーのブースも、「電動化技術」が中心になっているのだ資金に余裕がある中国メーカーが、優秀なサプライヤーから電動化技術をシステムで供給してもらう。そうなれば、できあがってくる車両の性能差は、これからさらに縮まっていくだろう。
AISIN GROUP
得意の電動化関連技術で中国市場で勝負する
いつものようにアイシングループは、アイシン精機、アイシン・エィ・ダブリュ、アドヴィックス、アイシン高丘などグループでの出展。今回は、中国のNEV規制導入を受けて、特にゼロ・エミッション分野の技術を中心に据えた。協調回生ブレーキやFF1モーターハイブリッドトランスミッション、電動式4WDユニットであるeAxleを中国に初めて持ち込んだ。実際、プレスデーでは中国の民族系自動車メーカーを中心に多くの自動車メーカー関係者がブースを訪れていた。
DENSO
自動運転関連でドライバーモニタリング技術に注目
デンソーは、Efficient Driving、Automated Driving、Connected Drivingの3つの分野に注力している。自動運転系の技術では、ミリ波レーダーやステレオカメラなどと並んで、ドライバーモニタリング技術に中国が集まっていた。
TOYOTA BOUSHOKU
カムリやクラウンのシート&内装
トヨタ紡織は2012年以来今回で4回目の北京モーターショー出展となった。中心に置かれたのは、トヨタ・カムリ、クラウンのシートと内装だ。クラウンは天津で造られているが、それに合わせてトヨタ紡織も天津工場でシートを製造している。色やデザインは中国人の好みを細かく反映しているという。
HITACHI AUTOMOTIVE SYSTEMS
グループのクラリオンともにブース出展を行なった日立オートモティブシステムズ。テーマは、「Moving Forward! 人・クルマ・社会がつながる未来へ」で、自動運転や電動化など、クルマ社会をけん引する日立グループの次世代モビリティテクノロジー数多く見せてくれた。
JTEKT
電動リヤアクスルユニットを出展
ジェイテクトは、得意とする電動パワーステアリングシステム(デュアルピニオン式、ラック平行式など)やベアリング技術などに加えて、20kWのHEV/EV用小型電気モーター(リヤアクスルに搭載してAWD化できるいわゆるeRAD)を展示していた。
北京に滞在していた数日間、空は青かった。2カ月前に来たときも青空だった。つい3年前は、PM2.5のせいで、いつも空はまるで濃霧のようだった。共産党政権が、工場を止めろと言ったらすぐに止められるから空がきれいになったという分析ももちろん可能だ。しかし、みんながEVに乗って排ガスをださなかったら、ほら空はこんなに青くなります、と言われたら、みなこぞってEVを選ぶようになるかもしれない。
NIDEC
電動化で勝機あり
モーターのスペシャリストである日本電産は、車内で多数使われている各種小型モーターのほかに、いま同社が力を入れているEVおよびPHEV向けのトラクションモーターシステムを初公開した。トランスミッションのバルブボディも展示されていた。
TOYOTA GOSEI
内外装品を幅広く展示
写真は豊田合成が中国で生産する、トヨタ・カムリ用コンソールボックス(左の赤い部分)とホンダの中国モデルのインパネモジュール。このほかにもレクサスLSの複雑な形状のフロントグリルなども展示されていた。
VALEO
48Vシステムの小型EV
フランスのヴァレオは、独自に仮設ブースを作って出展。中国向けに開発している48Vの小型EVが主役。48Vながら最高速度100km/h、航続距離100kmを実現していて、将来が期待される技術だ。
OBRIST
発電用無振動エンジン
エンジニアリング会社であるオブリストは、999cc、85kWe、乾燥重量120kgの発電用無振動エンジンを展示。今後発展が期待されるシリーズハイブリッドの発電専用エンジンでの活用を考えているのだろう。
NTN
大注目のIWM駆動システムを搭載したクルマ
NTNがかねてから開発を進めてきたIWM(インホイールモーター)駆動システムを搭載したNEVの開発、量産に向けた技術支援を行うため、長春富晟汽車創新技術有限公司」(FSAT社)とライセンス契約を結んだ。FSAT社が開発したクルマとそのプラットフォームが展示され、注目を集めていた。量産は2019年の予定。IMWのEVは世界的に見ても珍しい。量産となれば大きな反響が期待できる。右下はパートナーであるFSAT 社総経理・劉蕴博氏。
とあるEVベンチャーの中国人社長に、「あなたのEVは、公的な補助金なしでもやっていけますか?」と訊いたら、「自信はあります」と即答された。
北京の街の空は青くなり、ゴミは少なくなり、道路のでこぼこはだいぶなくなり、トイレは格段に綺麗になった。「中国はまだまだだ」と侮っているうちに、あっという間に背中しか見えなくなってしまうのではないか。そういう危惧を抱いた北京モーターショーだった。
|
|
自動車業界の最新情報をお届けします!
Follow @MotorFanwebおすすめのバックナンバー
自動車業界 特選求人情報|Motor-FanTechキャリア
「自動車業界を支える”エンジニアリング“ 、”テクノロジー”情報をお届けするモーターファンテックの厳選転職情報特集ページ

株式会社デンソー プリント基板実装技術開発<次世代センサ>
年収 | 430万円〜1250万円 |
---|---|
勤務地 | 愛知県額田郡幸田町芦谷丸山5※事業所に... |
トヨタ自動車株式会社 パワートレーン開発<制御>
年収 | 500万円〜700万円 |
---|---|
勤務地 | 愛知県豊田市職場上司が認めた場合、在... |
これが本当の実燃費だ!ステージごとにみっちり計測してみました。
日産キックス600km試乗インプレ:80km/h以上の速度域では燃費が劇...
BMW320d ディーゼルの真骨頂! 1000km一気に走破 東京〜山形往復...

日産ノート | カッコイイだけじゃない! 燃費も走りも格段に洗練...
渋滞もなんのその! スイスポの本気度はサンデードライブでこそ光...
PHEVとディーゼルで燃費はどう違う? プジョー3008HYBRID4とリフ...
スズキ・ジムニーとジムニーシエラでダート走行の燃費を計ってみた...
会員必読記事|MotorFan Tech 厳選コンテンツ

フェアレディZ432の真実 名車再考 日産フェアレディZ432 Chapter2...

マツダ ロータリーエンジン 13B-RENESISに至る技術課題と改善手法...

マツダSKYACTIV-X:常識破りのブレークスルー。ガソリンエンジン...

ターボエンジンに過給ラグが生じるわけ——普段は自然吸気状態

林義正先生、「トルクと馬力」って何が違うんですか、教えてくだ...

マツダ×トヨタのSKYACTIV-HYBRIDとはどのようなパワートレインだ...
3分でわかる! クルマとバイクのテクノロジー超簡単解説

3分でわかる! スーパーカブのエンジンが壊れない理由……のひとつ...

3分でわかる! マツダのSKYACTIV-X(スカイアクティブ-X)ってな...

スーパーカブとクロスカブの運転が楽しいのは自動遠心クラッチ付...

ホンダCB1100の並列4気筒にはなぜV8のようなドロドロ感があるのか...

ホンダ・シビック タイプRの謎、4気筒なのになぜマフラーが3本?
