四半世紀ぶりに刷新、やれることをすべて盛り込む マツダ・スカイアクティブMTはこうして作られた
- 2019/12/14
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世良耕太
TEXT●世良耕太(SERA Kota) PHOTO●MAZDA/MFi
* 本記事は2011年1月に執筆されたものです。現在とは異なる場合があります。
スカイアクティブMT
スカイアクティブの名のもとに開発したガソリン/ディーゼルの両エンジンに合わせて、マツダはトランスミッションを新たに開発した。最大許容入力トルク270Nmのミッドと460Nmのラージの2種類があるが、ミッドはガソリン用、ラージはディーゼル用である。新しいMTを最初に積むクルマのエンジンに合わせて設計しただけでなく、少なくとも2020年までは大きな変更をしなくて済むような要件を織り込んである。大きなボディから小さなボディまでさまざまなボディタイプに積まれることになるだろうし、エンジンは途中で大きなアップグレードがある。そこまで見込んでいる。
マツダがMTを自社で開発するのは、ほぼ30年ぶりのことだ。ファミリアをFF化(1980年)するにあたって横置きMTの開発に迫られたが、それ以来の出来事である。専業メーカーから調達する選択肢もあったはずだが、自社開発にこだわった。「自由にクルマを作りたいという思い入れが強かった」と開発者のひとりは語ったが、自動車メーカーでありつづけたいという意思の表れだろう。
当初、ミッドとラージをともに2軸もしくは3軸にそろえられないか検討したという。その方がアーキテクチャーを共有できるので、何かと便利だからだ。だが、2軸で高トルクに対応しようとすればギヤの歯幅が厚くなって全長が延びてしまう。延びると、ストレートに延ばすはずの新設計フレームと干渉してしまう。一方、ミッドを3軸にしようとすると、重量のハンデを負うことになる。検討の末、ミッドは2軸、ラージは3軸に構造を分けることにした。マツダが3軸を開発するのは初めての経験。従来はアイシン・エーアイから調達していた最大許容入力トルク400Nmタイプからの置き換えとなる。DCTの追加投入を念頭に置いたがゆえの3軸化か、の問いに対する答えは「ノー」だった。
開発の目標は、軽量コンパクトにすること。そして、燃費の向上に貢献すること。これら2つは30年ぶりに大きな投資をするための必要条件である。マツダが、そして開発者が本当に大事にしたのは、シフトフィール。「間違いありません」と開発者のひとりは首を縦に振った。
【シフトフィール】小型シンクロとストローク短縮
「MTはATと違って人間が操作する。変速してリアクションを楽しむ。だから、こだわりをもった」と開発にあたった吉本直晃氏(パワートレイン開発本部 ドライブトレイン開発部 ユニット開発グループ 主幹)は説明。ベンチマークは縦置き(ゆえにケーブルではなくロッド式)を積むロードスターだ。「ドライバーがヒップポイントを決めてシフトノブに手をかける。そのときいかに自然な位置にあるか。操作したときにいかに軽く、節度良く、ポジションがわかるように操作させるか。それが一番の狙い」。理想を実現するために、人間工学を扱う部門と連携しながら、「軽快で節度感あるシフトフィール」を実現するための腕(を動かす筋肉も含めて)の動きと力の入れ具合、感じ具合を検証していった。その結果、シフト方向のストロークを45mm、そのときに負担する力を40N弱に定めた。現行MTが50mmのストロークと50N弱の操作力である。ショートストローク化と操作力の低減は相反する要素だが、シンクロ部分の内部ストローク量を9mmから7.65mmに縮めることでレバー比を大きくとり、解決に導いた。
スプラインの小モジュール化
〈ロックボールタイプシンクロ装置〉小気味良いシフトフィールを実現するための策のひとつが、シンクロに採用したロックボールタイプのキー。シフト方向のフリクションを低減する。
軽快で節度感のあるシフトフィール
チャンファー形状の変更
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