Tech|テクノロジーがわかるとクルマはもっと面白い。未来を予見する自動車技術情報サイト

  • Motor-Fan[モーターファン]
  • モーターファンバイクス[Bikes]
  1. TOP
  2. ニュース・トピック
  3. ニュース
  4. 川島礼二郎の【海外技術情報】

【海外技術情報】ダイムラーEQ Power:PHEV(プラグインハイブリッド)テクノロジーは利益をもたらす技術

  • 2020/06/09
  • 川島礼二郎
このエントリーをはてなブックマークに追加

ダイムラー社はプライグインハイブリッド技術をどのようにとらえているのだろうか? 同社の技術戦略の概要を示すリリースが公開されていたのでお届けしよう。
TEXT:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)

 純粋な電動モビリティへの道程において、プラグインハイブリッドは恐らく主要なブリッジングテクノロジーである。メルセデス・ベンツは既に第3世代となったEQ Powerモデルという効率的なドライブトレインパッケージで、カーボンニュートラルなモビリティ実現に向けた歩みを進めている。メルセデス・ベンツのドライバーは、2020年末までに20を超えるモデルバリエーションからPHEVテクノロジーの利点を体験できるようになる。

 PHEVでは、電気とエンジンとが相互に補完し合うことで、それぞれのシステムのデメリットを相殺する。ハイブリッド技術の主な利点は、地域内でのエミッション・フリーな運転と自律運転の可能性だ。航続距離を気にする必要はない。PHEVの比較的大きなリチウムイオンバッテリーは、ほとんどの毎日の移動に対して十分な容量を保持している。メルセデス・ベンツは、この先駆的な技術をAクラスからSクラス、GLAからGLEまでのモデルラインナップに展開して、燃焼機関に電気的サポートを提供する。

 メルセデス・ベンツでは、電気で到達できる距離を計算するために、EQ Ready Appを利用してきた。その分析によると、電気で50 km移動できれば、すべての移動の90%を賄えることが判明している。長距離移動の割合は非常に小さく、全移動の90%以上が100km未満であり、ほとんどの移動は400km未満である。第3世代のPHEVは、この結果に最適にフィットする。

コンパクトモデル向けPHEV技術

 横置きエンジンと8G-DCTデュアルクラッチトランスミッションを搭載したモデルに向けては、コンパクトなハイブリッドトラクションヘッドが開発された。その電気メカニズムは内部ローターを備え、永久励磁同期機として機能する。そのステーターは、トラクションヘッドハウジングと一体となったコンポーネントである。電気モーターのローターはオイルバス内で作動する低損失セパレータークラッチを備えている。オンデマンドなステーターとローターの冷却が、電気機械のピーク性能と連続性能の両方を要求することを可能にする。このハイブリッドコンポーネントの構造は、従来の12Vスターターを使用することなく、電気のみでのエンジンの始動とブーストを可能にする。

・電動での航続距離:最長77 km(NEDC)
・電気出力75 kW
・システム出力160 kW
・システムトルク450 Nm
・最高速度140 km / h(電気)/ 235 km / h(合計; Aクラスコンパクトサルーン)
・0-100 km / h加速6.6秒(Aクラスコンパクトサルーン)
・実質的に荷物室の制限なし

 EQ Powerはユニットとして、電気機械と総排気量1.33Lの4気筒エンジンから構成され、システム出力160 kW(218 hp)を発生し、システム最大トルクは450 Nmである。電気機械の特徴であるゼロ発進時の高トルクにより、コンパクトなPHEVでありながら、アクセルペダルに即座に反応する。

 容量約15.6 kWhのリチウムイオン電池が、電気システムのエネルギー貯蔵ユニットとして機能する。これは交流または直流で充電できる。給電キャップは車両右側後部に設置されている。コンパクトPHEVは、ウォールボックス社の7.4 kW充電器を用いて、10〜100%まで1時間45分以内に交流で充電できる。高速の直流では、充電時間は10〜80%を25分にまで短縮できる。

 重量約150kgの水冷バッテリーは、ダイムラーが完全所有する子会社であるACCUMOTIVEから供給される。EQ Powerと呼ばれるメルセデスベンツの第3世代PHEVでは、高度に進化したセルを備えたバッテリーを使用している。リン酸鉄リチウム(LiFePo)からリチウムニッケルマンガンコバルト(Li-NMC)への飛躍により、セル容量を22 Ahから37 Ahに増やすことが可能となった。その結果バッテリーパックがよりコンパクトになり、容量と乗員が使用できるスペースに利点が生まれている。

縦置き用のPHEVテクノロジー

 メルセデス・ベンツは、2009年に「S 400ハイブリッド」でハイブリッドテクノロジーを発表して以来、縦置き用ドライブトレインとして体系的に進化させてきた。EQ POWERと名付けられた最新世代に向けて、開発者は9G-TRONIC PHEVトランスミッションの電気メカニズムを再設計した。それは内部ローターを備えた永久的に励起された同期機として機能する。高性能なパワーエレクトロニクスにより、高出力と高トルク密度を実現する。トルクコンバーターは一体型ロックアップクラッチを備えており、革新的な飛躍を表現している。出力が増加したにもかかわらず非常にコンパクトである。全体としてトランスミッションは基本的な9G-TRONICトランスミッションと比較して108 mm長いだけである。

 この新しい駆動システムは、「GLE 350 de 4MATIC」(燃料消費量1.1 lL/ 100 km、CO 2排出量29 g / km、電力消費量25.4 kWh / 100 km)に初搭載された。他のPHEVと比較してかなり長い電動での航続距離は、地域内移動においてCO2排出のない移動体験を保証する。

・電動での航続距離:最長106 km(NEDC)
・電気出力100 kW
・システム出力235 kW / 320 hp
・システムトルク700 Nm
・最高速度160 km / h(電気的)/ 210 km / h(全体)
・6.8秒で0-100 km / hの加速

 31.2 kWhのバッテリー容量を備えた「GLE 350 de」は、適切な運転スタイルであれば、100 kmを超える電動での航続距離(NEDC)を保証する。これが不十分であれば、「GLE 350 de」はCOMBO車両ソケットを介して交流および直流充電による高速充電も可能である。給電キャップは車両後部左側に備えている。DC急速充電ステーションでは約1時間で充電が可能。10〜80%の充電は20分、10〜100%は約 30分である。

充電を容易にするMercedes me Charge

 オプションとして用意している「Mercedes me Charge」サービスを利用することで、メルセデス・ベンツのPHEVドライバーは世界で最も広範な充電ネットワークの一つにアクセスできる。「Mercedes me」アプリまたはMBUX(Mercedes-Benz User Experience)インフォテインメントシステムを介して、充電ステーションあるいは充電ポイントへのナビゲーションが開始されたとき、広範な情報を呼び出すことができる。MBUXシステムの自然な音声認識により、近くまたは選択したルートに沿って充電ステーションを検索できる。これにより充電スポットの検索、充電、支払いが、かつてないほど便利になった。

ドライバーをサポートするインテリジェントな運用戦略

 可能な限り充電プロセス間の距離を長くし、充電時間を短くするため、EQ Powerモデルの車載電子機器は、ルートに基づいたインテリジェントな運転戦略により、効率的な運転をサポートする。ナビゲーションデータ、地形、制限速度、計画したルート全体の交通状況などを考慮したうえで、それぞれの状況における最適な電気駆動モードを提案する。ECOアシストとして知られるものは、一種のコーチとしてドライバーをサポートして、電気と燃料を節約する。ECO Assistが作動していれば、通常の運転プロファイルと比較して消費を最大5%削減できる。

PHEVがCO2を削減するポテンシャル

 ダイムラーの環境分野のエキスパートは、環境適合性を検討するに当たり、原材料の抽出から製造、使用、そして回収に至る車両のライフサイクル全体を対象としている。ハイブリッド車は生産において高いエネルギーを使用するが、それでもライフサイクルアセスメントはポジティブである。

 プラグイン機能の系統的な使用、つまりネットワークを介したバッテリーの定期的な充電と、動作状態自体の効率向上により、現在ドイツで利用されているエネルギー構成で計算して、CO2排出量を40%削減する。スターターバッテリーがグリーン電力のみで充電されている場合、この節約は70%に達する。

 現在のPHEVが搭載する大型バッテリーは、強力な電気メカニズムとの組み合わせにより、EVとしての機能が使い果たされた後を含めて、効率的な状態を維持できる。強力な回復能力とインテリジェントな制御により、実際にはバッテリーが完全に放電することはない。それは電気メカニズムが長距離走行でも継続的にエンジンをサポートできることを意味し、オーバーランモードの短い瞬間でもこれを行うことができる。これはエンジンが単体として作動するよりも遥かに、最適かつ効率的に運転できることを意味する。

 生産におけるエネルギー使用量が多く、大きなCO2バックパックを背負っているにもかかわらず、PHEVはライフサイクル全体で大量のCO2を削減する。最良のシナリオでは、それは約45%にもなる。製造段階でのCO2排出量の増加は、ライフサイクル全体に渡って返却しリターンを上げることができる正当な投資である。

おすすめのバックナンバー

これが本当の実燃費だ!ステージごとにみっちり計測してみました。

これが本当の実燃費だ!ステージごとにみっちり計測してみました。 一覧へ

会員必読記事|MotorFan Tech 厳選コンテンツ

会員必読記事|MotorFan Tech 厳選コンテンツ 一覧へ

3分でわかる! クルマとバイクのテクノロジー超簡単解説

3分でわかる! クルマとバイクのテクノロジー超簡単解説 一覧へ