【海外技術情報】ヒュンダイ:EVプラットフォーム「E-GMP」でEV時代に突入する現代自動車
- 2021/02/01
- 川島礼二郎
現代自動車グループが次世代BEVラインナップ構築に向けて、同社初となるBEV専用プラットフォームE-GMP(Electric-Global Modular Platform)を発表した。E-GMPに基づくBEVは、フル充電(WLTP)で500kmを超える航続距離を実現し、高速充電により18分以内に最大80%まで充電できるという。ここでは、昨年12月に現代自動車が発表したリリースを翻訳・要約して、このEVプラットフォーム「E-GMP」を紹介して行こう。
TEXT:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)
モジュール化と標準化による開発の柔軟性の最大化
現代自動車グループがBEV専用プラットフォームE-GMP(Electric-Global Modular Platform)を発表した。現代自動車グループの次世代BEVラインナップのコアテクノロジーとして機能する。E-GMPは2021年から発売される現代自動車の「IONIQ5」を含む一連の専用の新しいBEVのほか、起亜自動車の最初の専用BEVにも採用される。
E-GMPは同グループの既存プラットフォームと比較して、数多くの利点を有する。開発における柔軟性の向上、運動性能の向上、航続距離の拡大、安全機能の強化、それに乗員と荷物のための広い内部スペースの確保、である。現代自動車グループ社長兼研究開発部長のアルバート・ビアマン氏は以下のように述べている。
「今日、現代グループの前輪駆動BEVはセグメントにおいて最も効率的な車両の1つです。これを後輪駆動ベースのE-GMPに置き換えることで、より優れたダイナミクスと卓越した効率を要求されるセグメントにおいて、技術的リーダーシップを拡大して行きます」
E-GMPはモジュール化と標準化とにより複雑さを軽減することで、セダン、SUVなど、ほとんどの車両セグメントで使用でき、迅速かつ柔軟な製品開発を可能にする。これにより多様な顧客のニーズを満たすことができる。なかでも高性能モデルは3.5秒未満で0~100km/hまで加速し、260km/hの最高速度を達成する。
運転性能、安全性、スペースを最大化する設計
E-GMPはコーナリング性能と高速走行安定性を向上させる。これは前後の重量配分が最適化されていること、バッテリーを低い位置に搭載しているため低重心化したこと、またエンジンが占有していたスペースに電気モーターを採用したことによる。
高速電気モーターがE-GMPの走行性能を高める。中型から大型の車両セグメントに一般的に使用される5リンクリヤサスペンションシステム、ホイールベアリングとドライブシャフトを組み合わせてホイールに動力を伝達する世界初の量産統合ドライブアクスル(IDA)が強化されている。これが乗り心地とハンドリングの安定性をもたらす。
プラットフォームは超高張力鋼で作られたバッテリーサポート構造を通じてバッテリーの安全性を確保する。ホットスタンプされたスチールコンポーネントがこの構造を囲み、剛性を高める。ボディとシャシーのエネルギー吸収セクションのみならず、効果的なエネルギー負荷経路を設定しており、さらに車体に結合されたバッテリーパックの中央セクションが一体となって、衝突エネルギーを効率的に吸収する。
またダッシュボード前部のロードサポート部を強化することで、電力系統やバッテリーへの衝突エネルギーを最小限に抑える。Aピラーの荷重分散構造は、パッセンジャーセルの変形も防ぐ。
E-GMPは長いホイールベース、それと短いフロントとリアのオーバーハング、スリムなコックピットモジュールにより、内部スペースを最大化する。バッテリーパックを床下に配置することで、キャビンの平らな床を実現する。これにより助手席の足元スペースが広がり、前席と後席のさまざまな配置が可能になる。
前輪と後輪の車軸の間に搭載するバッテリーパックは、現代自動車グループがこれまでに生産したなかで最も電力密度の高いシステムである。これにはバッテリーパックをコンパクト化するために開発した新しい冷却ブロック構造が貢献している。既存バッテリーと比較してエネルギー密度が約10%向上しているため、バッテリーパックは軽量である。これをボディ下部に搭載することで、より広いキャビンスペースを確保できる。
効率的かつ強力な電化システム
E-GMPのコンパクトな新しいパワーエレクトリック(PE)システムは、強力なモーター、EVトランスミッション、それとインバーターにより構成される。これらの3コンポーネントは、一つのコンパクトモジュールに統合されている。モーターの最高速度は既存モーターと比較して最大70%向上するため、優れたパフォーマンスが保証される。高速モーターは一般的なモーターよりも小型でありながら同等の性能を発揮し、スペースと重量という両面で効率を高める。
標準化されたバッテリーシステムは、特定の車両セグメントに適したパフォーマンスを提供したり、走行距離を最大化したりと、多様な顧客ニーズを満たすために調整できる。
モーターは炭化ケイ素(SiC)半導体を採用したインバーターパワーモジュールにより制御される。このモーターはシステム効率を2~3パーセント向上させる。これは同じバッテリーエネルギーで車両を約5パーセント長く運転できる、ということである。
E-GMPの基本は後輪駆動であるが、全輪駆動も選択できる。全輪駆動モデルには、追加のモーターを装備する。全輪駆動システムには、追加のモーターと前輪の間の接続を制御して二輪駆動モードと全輪駆動モードを切り替えて理想的なパワーまたはパフォーマンスを提供する、EVトランスミッションディスコネクターが含まれる。
E-GMPプラットフォームで開発されたすべての車両は、標準化されたバッテリーモジュールを使用する。このモジュールはポーチタイプの標準セルで構成されており、車両ごとに必要に応じてさまざまな数量で梱包できる。
E-GMPが世界の将来のEV販売の成長を支える
現代自動車グループは、自動車の電化に備えて多大な努力を払ってきた。起亜自動車は2011年に初の量産BEV「レイEV」を韓国で発売、2014年には「ソウルEV」を世界市場で発売した。2015年にはBEVを含むすべての電動車の量産システムの導入を完了した。
E-GMPは、2025年までに現代自動車グループが11の専用BEVモデルを含む合計23のBEVモデルを導入して100万台を超えるBEVを販売する計画を下支えする。現代自動車はBEVビジョンの一環として、専用の「IONIQ」を立ち上げた。これには2024年までに3つの専用BEVモデル、IONIQ5、6、7が含まれる。
起亜自動車は「プランS」の中長期戦略に基づいて、電化の時代に向けた変革を遂げている。2020年9月には、BEVの販売台数割合を2025年までに20%に引き上げる計画を発表した。また2027年までに、今後発売される7つの専用BEVモデルの初期イメージを発表した。
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