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福野礼一郎氏連載「バブルへの死角」第13回はトヨタ・ターセル/コルサ/カローラIIです

  • 2021/03/08
  • Motor Fan illustrated編集部
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『モーターファン・イラストレーテッド』でスタートした連載「バブルへの死角」。福野礼一郎さんとエンジニア諸氏による旧モーターファン誌に掲載されていた看板企画「モーターファンロードテスト」を現代の視点から再考察します。次号はトヨタ・ターセル/コルサ/カローラIIを取り上げます。本稿は1983年1月号の「モーターファンロードテスト」です。

エンジンマウントはFR車同様、エンジン左右と変速機部の3点でマウントしている。図はエンジンを正面から見たもので左右対称に箱形マウントがついており、向かって左側(エンジン右側)に油圧ダンパーをつけている(平面視ではデフ部が向かって左にオフセットしておりドライブシャフトは不等長)。上部の枠内は後部の変速機のマウントで、初代AL10型では上下にストッパ(右枠内の矢印)を設けた非線形ばね式にしていたが、AL20型では左枠内の通常の箱形マウントに変更している。いずれもパワートレーンの揺動などによるドライバビリティのチューニングのためで、縦置きにしてもNV対策をすれば当時の技術ではドライバビリティの確保が難しかったことが伺われる。

縦置きFF2代目のAL20型はパッケージだけではなくサス形式も前後一新している。たった4年で前後サスともシステムの基本から入れ替えるというのは珍しい。今月はフロントを紹介する。左端がIアーム+コンプレッションロッド式のAL10型、中央がIアーム+スタビ兼用テンションロッド式のAL20型。右端は講師:シャシ設計者がAL20の図にAL10のレイアウトを重ねたもの。サブフレーム内にラックを通すトリッキーな設計を改め、さらにパワートレーンを前方に動かす意図もあって、サブフレームもふくめ当時一般的だった形式に変更したようだ。

AL20型のサスの問題点を講師:シャシ設計者の作図でみる。ドライブシャフトとの兼ね合いでIアームに大きな後退角がついているため、原理的には旋回外側前輪が制動力でトーインに変位し制動時の安定性が低下しやすい(左図)。また横力が入ったときアームのボディ側取り付け部に斜めに力が加わるためサスの横剛性も低くなる。テンションロッド兼用のスタビライザーが搭載の関係でぐにゃっと曲がっていることも横剛性をさらに低下させる要因だ。

左図はAL20型が採用したオフセットスプリングの効果を講師:シャシ設計者が力の釣り合いで検証したもので、これによるとコイルのオフセットの方向はキングピン軸におおむね沿っている。これではストラットに加わる横力をキャンセルする目的に対しては中途半端だ。横力をキャンセルするにはコイルのオフセットの方向を上下力の合力点に向ける必要がある。連載第9回の3代目マツダ・コスモ(1981年10月~)の検証では、マツダがすでにこの理屈を理解して設計していたことが判明している。

(左)背面視バウンド・リバウンドに対するトー方向のジオメトリー変化が起こりにくい基本設計。ストラットが直立しロワアームが地面に対して水平配置なので静的なロールセンターはかなり低い(ロールすると瞬間中心の方向はさらに低くなる)。上部の巻径を小さくしたコニカルスプリングの採用とともに車内スペース拡大を主眼とした設計だろう。ばねのオフセット化によるストラットのフリクション低減効果は、フロント同様中途半端である。中央と右は講師:シャシ設計者による平面視での前後力と横力に対するコンプライアンス変化の分析。アーム配置の工夫で横力トーインを実現している。

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