内燃機関超基礎講座 | インホイールモーターとは何か:究極の車両制御も可能か?
- 2021/04/19
- Motor Fan illustrated編集部
ホイールを駆動するのが自動車の目的。エンジンから変速機を経てシャフトを通じホイールを回転させ——というプロセスを一気に短縮するのがインホイールモーターという手段である。
TEXT:髙橋一平(TAKAHASHI Ippey)
*本記事は2011年4月に執筆したものです
インホイールモーターを使うEVは、車両ダイナミクスの制御を考える時、ひとつの究極形ともいえる。コンピューター制御技術が花盛りの現在、車両ダイナミクスの制御はさまざまな手法でアプローチが試みられ、それなりの結果も得ることに成功しているわけだが、内燃機関をベースに行なわれている現在のそれは、燃料の燃焼からエンジン出力、トランスミッション、そしてドライブシャフトなどを経たうえで、最終的に作用すべきタイヤと路面の接点に辿り着くという、実に遠回りなプロセスのうえに成り立っている。
むしろ、これで“車両ダイナミクスの制御”がある程度成立しているというのが、現在の制御技術の素晴らしさでもあるものだが、さまざまな制約にとらわれずに、この類の制御の意味を追い求める時、最終的に作用すべき、タイヤと路面にもっとも近いところで制御を行なうというのが正論のひとつであることに間違いはない。そして、一番近い解がホイールの内側で動力を発生させるインホイールモーターというわけだが、正論ゆえに実現は難しいとされてきた。そしてその最たる理由が、ダイナミクスの追求とは背反する要素となる、ばね下重量の増加だ。
しかし、NTNが開発したインホイールモーターは、そういった先入観を変えるかもしれない。全重量は約30キロ。大層な重さのようだが、これはハブからナックルまでを含む重量。ポイントはユニットに組み込まれた減速機構で、これによって小さなモーターを高回転化、パワーを確保している。聞けば高度なハイテク技術というよりは、組み合わせの巧みさがポイントとのこと。EV、いや自動車に新たな局面が訪れる日は、そう遠くはないのかもと考えを改めると同時に、現場でモノ造りを真剣に考えている人たちの凄さを実感したのだった。
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