FF車と4WD車で乗り心地とハンドリングに大きな差が 【マツダCX-8試乗・FFvs4WD】ミニバンから乗り換えるなら「XDプロアクティブ」4WD車・キャプテンシート&角度調整機構付きアームレスト仕様で決まり!
- 2018/01/23
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遠藤正賢
問2:CX-8のベストバイはFF? それとも4WD? グレードは?
パッケージングを一通りチェックしたところで、まずは4WD車から試乗する。グレードは最上級モデルの「XD Lパッケージ」だ。
前述の通り、CX-8はBピラー以前の内外装をCX-5と共用しているものの、フロントグリルはCX-5のスポーティなピアノブラックのメッシュに対し、CX-8はメッキの入った横格子となり落ち着いた印象に。リヤもCX-9のコンビランプを使用しその間をメッキモールでつなぐなど、ワイド感を強調したデザインとなっている。
そして全長が355mm、ホイールベースが230mm長くなったことで、CX-8のサイドビューにはCX-5にはない伸びやかさがある。しかも全高を40mm高め3列目まで充分な居住空間を持たせるという制約の中でこのモダンかつスタイリッシュな、裏を返せばミニバンのような所帯臭さを感じさせないフォルムを実現したのは見事と言うより他にない。
センターコンソールの形状が変更され、さらに本杢(ほんもく)を用いた「XD Lパッケージ」専用のデコレーションパネルを装着するインパネは、基本設計を同じくするCX-5よりも質感が確実に1ランクアップしている。
だが、3,196,800~4,190,400円のプライスタグを掲げるCX-8では、2,494,800~3,526,200円のCX-5では気にならなかった、ダッシュパネル天面やルームランプ周りのプラスチック然とした質感が目についてしまう。全体的には内外装のデザイン・質感とも、2倍以上高価なプレミアムブランドのSUVに勝るとも劣らないCX-8だけに、画竜点睛を欠く……と言っては大袈裟だが、より完璧な仕上がりを求めずにはいられない。
その一方、CX-8唯一のエンジンとなる2.2L直4直噴ディーゼル「スカイアクティブ-D 2.2」は、始動したその瞬間、ディーゼルエンジンとは思えないほど静粛性が高いことにまず驚かされる。
これは、少量の燃料を多段かつ高圧で微細分霧化して噴射する「急速多段燃焼」を採用し、燃焼そのものを見直したことが大きい。
(詳細は「マツダCX-8 デンソーi-ARTインジェクターと急速多段燃焼で洗練度を上げたSKYACTIV-D2.2」)
ボディ側でも、フロントストラットにダイナミックダンパーを設けてサスペンションの共振を抑え、リヤフェンダーパネルに制振材を貼付してロードノイズを低減するなど、1・2・3列目問わず入念にNVH対策が施されているが、窓を開けてもアイドリング中・走行中問わずノック音が極めて小さい。そのことから、対処療法ではなくその発生源から改善されていることがうかがえた。
また、大小2個のうち大きい方のタービンを可変ジオメトリー化したターボチャージャーを採用することで、CX-5用に対し最高出力を15psアップの190ps、最大トルクを3.1kgmアップの45.9kgmにまで高めつつ、JC08モード燃費17.6km/L(4WD車は17.0km/L)を確保しているが、「XD Lパッケージ」4WD車の1,900kgという車重にはちょうどいいパフォーマンス。
過去に「スカイアクティブ-D 2.2」を搭載したモデル、特に最も軽量なアクセラでは、その過剰なまでの大トルクが、楽しさの源泉であると同時に手強さを感じさせていたが、ようやくその能力に見合った車体と組み合わされたといえるだろう。
この「ちょうどいい」感覚はハンドリングもまた然り。全長とホイールベースの増加によってCX-5に対し直進安定性が増す一方、CX-5と同等の操舵レスポンスを得るために、CX-9のものをベースとしながらボディ・サスペンション・ステアリングの剛性を高めている。
さらに、横力キャンセルコイルスプリングを装着し、フロントダンパーにはリバウンドスプリングを採用。ステアリング操作に応じてエンジントルクを変化させ前後左右Gを制御する「G-ベクタリングコントロール」のチューニングも変更することで、速度域を問わずリニアで安心感のあるステアフィールを備えている。
これらの改良は、前後・左右の不快な揺れを抑えることで、乗り心地の向上にも効果を発揮しており、運転席はもちろん特等席の2列目、そして最も厳しい環境下にある3列目でも振動や突き上げは極めて少ない。凹凸の大きい路面でも終始フラットライドを維持してくれた。
しかしながら、中間グレード「XDプロアクティブ」のFF車・キャプテンシート仕様に乗り換えると、その印象は一変する。
今回の試乗車はいずれも225/55R19 99Vのトーヨー・プロクセスR46を装着していたが、4WD車は2インチ小さい225/65R17 102Hタイヤを履いていたのではないかと思えるほど、FF車は路面の凹凸を正直に拾い、それをフロアの振動という形で各列の乗員に伝えてきた。
なお、マツダに確認したところ、サスペンションのセッティングはFF車と4WD車で共通。従って異なるのはリヤのフロアおよびサブフレーム、そして4WD車より90kg軽い1,810kgの車重(注:同グレード・シート・タイヤ同士では70kgの差)ということになる。
単純に車重が軽い分、加速およびコーナリング時の軽快感はFF車の方が優れるものの、前輪スリップ予兆検知システムを持つ「i-アクティブAWD」のおかげもあり、4WD車の方が直進安定性は高くアンダーステアも出にくい。シャシーセッティングの完成度は明らかに4WD車の方が高く、また多人数乗車が可能な高級クロスオーバーSUVというCX-8のキャラクターにもよりマッチしているように感じられた。
結論:ミニバン代替としての素質は充分。ベストバイは「XDプロアクティブ」4WD車・キャプテンシート仕様
結論に入ろう。CX-8は乗降性こそミニバンに敵わないものの居住性は充分に高く、一方で内外装とその質感は乗降性のマイナスを補って余りあるほど魅力的だ。それは、購買層の40%を30代以下が占め、「多人数乗車を可能としながら、かっこよさを感じる」ことを購買理由の一つに挙げているというデータが何よりの証拠だろう。
そして、3つのグレード・2つの駆動方式・3種類の2列目シートが選べる中でのベストバイは、中間グレード「XDプロアクティブ」の4WD車・キャプテンシート&角度調整機構付きアームレスト仕様だ。特にミニバンから乗り換えるユーザー、またミニバンと同等のユーティリティを必要とする若いファミリーならば、これ以外の選択肢はないと断言していい。
なお、廉価グレード「XD」をオススメしないのは、ACCやレーンキープアシスト、360°ビューモニターなどの予防安全装備がオプションまたは非設定、というのが大きな理由。実際の販売比率も「XD Lパッケージ」が42%、「XDプロアクティブ」が52%、「XD」が6%となっている。
ただし筆者のように、ブラック内装が大嫌いで絶対に選びたくない、という人はこの限りではない。ピュアホワイトまたはディープレッドのナッパレザー内装が選べる「XD Lパッケージ」が唯一の選択肢となる。
現在のマツダ車はCX-8に限らず、内外装のカラーバリエーションが非常に少ない(CX-8は外装色7色、内装色3色)。特に内装はデミオを除き、ファブリック仕様は黒一択、本革仕様でも黒または白(あるいはブラウン)の二択だ。こうした偏屈なまでのデザイナー陣のこだわりは、車種選択において強い決定権を持つ女性ユーザーのニーズに合わせ、他社がカラーバリエーションを充実させているのとは明らかに逆行している。
近年のマツダ車の内外装デザインは本当に素晴らしい。ソウルレッドプレミアム(クリスタル)メタリックやマシーングレーメタリックのような、人目を引くカラークリヤー色をいち早く量産化し多くのフォロアーを生み出したのもマツダだ。それでも、いやだからこそ、内外装のカラーバリエーションをもっと充実させてほしい。それこそがCX-8、そして現在のマツダに抱く最大の不満であり、最優先で着手すべき今後の商品改良策である。
Specifications
マツダCX-8 XD Lパッケージ(4WD)
全長×全幅×全高:4,900×1,840×1,730mm ホイールベース:2,930mm 車両重量:1,900kg エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ 排気量:2,188cc ボア×ストローク:86.0×94.2mm 圧縮比:14.4 最高出力:140kW(190ps)/4,500rpm 最大トルク:450Nm(45.9kgm)/2,000rpm JC08モード燃費:17.6km/L 車両価格:419万400円
Specifications
マツダCX-8 XDプロアクティブ(FF・6人乗り)
全長×全幅×全高:4,900×1,840×1,730mm ホイールベース:2,930mm 車両重量:1,810kg エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ 排気量:2,188cc ボア×ストローク:86.0×94.2mm 圧縮比:14.4 最高出力:140kW(190ps)/4,500rpm 最大トルク:450Nm(45.9kgm)/2,000rpm JC08モード燃費:17.6km/L 車両価格:353万7000円
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