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50周年記念・三菱デリカの歴史を振り返る! 三菱『歴代デリカのすべて 連載第4回』スターからギアへ……四代目デリカはワンボックスのパジェロ

  • 2018/06/04
  • MotorFan編集部 大橋 俊哉
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デリカスペースギア(1994)

2018年で50周年を迎えた三菱デリカ。その五世代50年の歴史を振り返るこの連載もいよいよ第4回。四代目は「スペースギア」のサブネームを得て、スタイルも大きく変貌を遂げ、デリカの歴史における大きな転換点となったモデルである。

愛され続けて50年! 三菱デリカのアニバーサリー!

キャブオーバーレイアウトからフロントエンジンレイアウトへ……名実ともに大変革を遂げた四代目

エンジンを前席座席下からフロントボンネット内に変更した四代目デリカ「スペースギア」。これにより室内空間のフラットフロアを実現した。

 1994年5月にフルモデルチェンジを受け四代目となったデリカのワゴンは、日常生活やレジャーのための身近な道具=“ギア”として活躍するべく「スペースギア」と名称を変えた。というのも、この時点では併売されることになった三代目デリカ「スターワゴン」の存在も大きいが、やはりこれまでとは大きく変わったスタイルが名称変更につながったのかもしれない。

 三代目デリカスターワゴンの時点で検討されていたキャブオーバーレイアウトからフロントエンジンレイアウトへの変更が遂に実行に移され、三世代までとは明らかに異なるスタイルへと変貌を遂げている。
 
 フロントエンジンレイアウトのメリットはキャブオーバーレイアウトよりも良好な全面衝突安全性能だ。
 というのも、1993年1月に「道路運送車両の保安基準」が改訂され、1994年4月以降にリリースされる新型車には前面衝突試験が義務付けられている。それにより、キャブオーバーレイアウトが衝突安全性能的に厳しくなったのは否めず、これ以降、これまでキャブオーバーレイアウトを採用していたモデルもフロントエンジンに移行してゆき、キャブオーバーモデルは極一部に残るのみとなっていく。
 
 もうひとつのメリットは室内前席足元からラゲッジルーム後端までをフルフラットフロアとできたこと。

 キャブオーバーレイアウトでは、前席下にエンジンがある関係で、どうしても二列目席と前席の間には大きな段差が生じるが、エンジンをフロントに配置することにより、前席から三列目席までのウォークスルーが可能になったのだ。それだけに、デリカスペースギアは前席と二列目席を独立したキャプテンシートとしている。

デリカスペースギア(1994)

現場主義を徹底し、意思統一を図った開発

 デリカスペースギアの商品企画を担当した今崎剛氏の語るところによると、イベントやオーナーズクラブでユーザーの意見を直接聞くなど、デリカスペースギアの開発においては現場主義を徹底したとのこと。さらに、市場データベースを共有することで、開発者の意思統一を図っていたという。

 キャブオーバーレイアウトと決別し、室内ウォークススルーを実現したワンボックスワゴンとしては、“天才タマゴ”のキャッチフレーズで大ブレークしたトヨタ・エスティマがデリカに先駆ける1990年に登場しており、これは、その後に続く背高系ミニバンのひとつの潮流となっていく。

 エスティマの登場によりフラットフロアのユーザーニーズが確かなものであると判明したことから、当初こそキャブオーバーレイアウトで進められていた四代目デリカの企画もフロントエンジンレイアウトへの変更を迫られることになっている。

 一方で、ウォークスルーが可能なフルフラットフロアながら、シフトレバーはコラムシフトやインパネシフトではなくフロアシフトが採用されているのも「フロアシフトでドライビングを楽しみたい」という当時のユーザーニーズに沿ったものだからだそうだ。

フロアシフトを採用した運転席。パーキングブレーキも同様にサイドレバー式で配置される。
前席から三列目までの全通フラットフロア。三列目を除きアームレスト付きのキャプテンシートを採用し、全席ウォークスルーが可能だ。

多彩なシートアレンジでレジャービークルとして人気を博す

 デリカスペースギアがデビューした1994年はすでにバブル景気は崩壊している(一般的に91年〜93年と言われる)ものの、バブル景気時に余暇市場自体は拡大していた。また、二代目・三代目のデリカスターワゴンはレジャービークルとして人気を博しており、アウトドアのタフな相棒としての地位は揺るぎないものであった。

 四代目もその路線を堅持し、二列目席の横向きや回転対座などの多彩なシートアレンジに加え、座面のチップアップ機能を採用してラゲッジスペースの利便性を向上させている。

 また、純正用品を多数開発し、その数は120品目に及んだという。

通常時
二列目回転対座
二列目横向き+チップアップ格納
2+3列目フラット
キャリアアタッチメント
サイクルアタッチメント
デューティキャリア
インナーサイクルアタッチメント
オートロールタープ
用品装着車

“譲り”どころではなく、中身はパジェロ!

パジェロロング「SUPER EXCEED」(1992)

 商品企画を担当した今崎剛氏は二代目パジェロも担当していた。それだけに、デリカスペースギアとパジェロの関連は深く、多くのコンポーネンツが共有されている。

 スペースギアのフレームは1991年にフルモデルチェンジしたパジェロのラダーフレームとモノコックボディを融合した構造で、トラックや本格4WDの高剛性をラダーフレームで担保する一方、モノコックボディでクラッシャブル構造を持たせている。

 一方で、ダブルウィッシュボーン式+トーションバースプリング独立懸架のフロントサスペンションはパジェロ譲りながら、リヤサスペンションは3リンク式+コイルスプリング車軸懸架式のパジェロに対し5リンク式+コイルスプリング式車軸懸架式を採用している。

 これにより、その背の高さからは想像つかないほど横風に強く、優れた路面追従性も確保されており、パジェロ同様の高いオフロード性能も手に入れている。

ダブルウィッシュボーン式トーションバースプリングのフロントサスペンションに、ベンチレーテッドディスク+2ポットキャリパーのブレーキを組み合わせる。
リヤは5リンク式+コイルスプリング車軸懸架式サスペンションと1ポットキャリパーのドラムインディスクブレーキの組み合わせ。

 搭載されるエンジンは、6G72型3リッターV型6気筒SOHCと4G64型2.4リッター直列4気筒SOHCの2種類のガソリンエンジンに、4M40型2.8リッター直列4気筒SOHCインタークーラーターボと4D56型2.5リッター直列4気筒SOHCインタークーラーターボの2種類のディーゼルエンジンを用意。

 特に6G72型と4M40M型搭載車が人気を集めたが、前者はパジェロはもちろん、DOHC版がGTOのNAモデルやディアマンテにも搭載される上級エンジンで、後者は二代目パジェロに初めて搭載された新型エンジンで、オフロード走行に適した出力特性が魅力だ。

 この両エンジンと組み合わせるATは「パワー」「ノーマル」「ホールド」の3モードELCを備えた4速ATであったが、1997年のマイナーチェンジでINVECS-IIを搭載することになった。

3.0リッターV型6気筒SOHCガソリンエンジン「6G72」
2.8リッター直列4気筒SOHCインタークーラーディーゼルターボエンジン「4M40」

4WDシステムはパートタイム式とフルタイム式のいいとこ取り!

フロントエンジンリヤドライブ(FR)ベースの4WDレイアウト。

4WDレイアウトを上から見た図。センターデフの左からフロント方向へのプロペラシャフトが伸びる。
 デリカスペースギアに搭載される4WDシステムはパジェロと同じ「スーパーセレクト4WD」。これはパートタイム式とフルタイム式の長所を兼ね備える三菱独自のシステムで、シンクロフリーホイールデフの採用により走行中でもトランスファーレバーにより2WDと4WDの切り替えが可能となっているのが特徴だ。

トランスファーレバーのモードセレクト
 走行モードはFR走行となる「2H」、フルタイム4WDの「4H」、直結4WDハイレンジの「4HLc」、直結4WDローレンジの「4LLc」を用意しており、状況に応じた駆動方式を選ぶことができた。

 フルタイム4WD走行では、ビスカスカップリング付きセンターデフにより駆動配分を最適制御して安定感のある走りを実現する一方、2WD走行に切り替えれば経済性と静粛性を高めることが可能だ。さらに、直結4WDではセンターデフをロックすることで駆動力を高めることができるのだ。

デリカスペースギア(1994)

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