内外装のデザインと質感、予防安全装備の充実度には古さを感じるのも事実 モデル末期の三菱パジェロ・ファイナルエディションは“買い”か“待ち”か? トヨタ・ランドクルーザープラドにも勝る実力は今すぐ“買い”だ!
- 2019/08/18
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遠藤正賢
どれほど技術が進化しても、法規や市場環境の変化など様々な要因が影響するため、最新のモデルが最良とは限らないのが、クルマの面白い所。さりとてモデル末期のクルマは、熟成が進んでいるとはいえ、その後現れる新型車で劇的に進化する可能性を考慮すると、実際に購入するのはなかなか勇気がいる。そこで、近々の販売終了またはフルモデルチェンジが確実視されている、モデル末期の車種をピックアップ。その車種がいま“買い”か“待ち”かを検証する。
最初の1台は、8月に国内向けの生産を終了し四代37年の歴史に終止符を打つ、三菱のオールラウンドSUV「パジェロ」の最終モデル、その名も「ファイナルエディション」。都内の首都高速道路から中央自動車道を経て、富士五湖のひとつである本栖湖を周回し、その後中央道~圏央道~東名高速道路ルートで都内に戻る、総計400km強のルートを走行した。
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)
PHOTO●遠藤正賢、三菱自動車工業
昨年は世界的に有名な本格オフローダーの3台、スズキ・ジムニー、メルセデス・ベンツGクラス、ジープ・ラングラーが一斉に世代交代し、いずれも販売は好調に推移している。
それとは対照的に三菱パジェロは、中間グレード「エクシード」のディーゼル車をベースにルーフレール、サンルーフ、本革パワーシート、リヤデフロック、サイド&カーテンエアバッグを標準装備し、専用のシリアルナンバー入りスカッフプレートと腕時計、ステッカーをプラスする、700台限定の「ファイナルエディション」をもって、国内での販売を終了することとなった。
これは、歩行者脚部保護基準が9月より強化され、それに対応するにはフロントの骨格やデザインを大幅に変更する必要があるため、というのが直接的な理由になるのだが、i-MiEVやデリカD:5はそのために大がかりなマイナーチェンジを実施している。だから、パジェロでそれができないのは、その投資に見合った販売台数を見込めない、ということに他ならない。
では、本当にそれほど、競争力がなくなってしまったのだろうか?
現行四代目パジェロの発売は2006年10月。すでに13年ものモデルライフを過ごしている大ベテランなのだが、その古さを最も如実に感じ取れるのは、インテリアの質感だろう。
率直に言って三菱は旧来、樹脂部品の質感表現が不得手なメーカーの最右翼で、それが他社と遜色なくなったのは、昨年国内デビューのエクリプスクロス以降。しかも見た目だけに留まらず、スイッチ類やコラムレバー、フタものなど可動部は作りも華奢で、乱暴に扱えば壊れてしまいそうな不安感が常につきまとう。
さらにパジェロの場合、高度や気圧、平均燃費などを表示できる「センターインフォメーションディスプレイ」が、1990年代以前のゲーム機を思わせるほどドットが粗い。メーカーオプションのメモリーナビも、ディスプレイは7インチのWVGA。今となっては小さく感じられても致し方ないものだ。
なお、デザイン自体は、エクステリア共々、実はさほど古くさいなものではない…2014年7月のマイナーチェンジより前は。この時にメッキなど加飾パーツの使用部位が増えるとともに、フロントマスクの造形が直線基調に改められた。それにより、分かりやすく高級感が増したもののモダンさは失われ、かえって陳腐化を早めてしまったのが残念でならない。
そして、この13年間で状況が激変した、予防安全技術の進化と普及から取り残され、2015年7月の一部改良で「オートマチックハイビーム」が追加されるに留まったのも、寂しいと言わざるを得ないだろう。
また、シート、操作系とも革が硬く滑りやすいためフィット感に乏しいこと、ステアリングの操舵力が速度域を問わず重いことは、古さというよりも単純に欠点として挙げておきたい。
では、肝心の走りはどうか。この手の本格オフローダーでは、高い悪路走破性を確保しつつ、どれだけオンロードでの乗り心地と、高負荷域での操縦安定性を両立するかが難しい所だが、その点パジェロは申し分なし。大きなギャップでこそ突き上げは強いものの、細かな凹凸はキレイにいなし、不快な揺れや振動を乗員に伝えてこない。
さらに、高速コーナーが連続する中央道でも、操縦安定性は抜群。低中速コーナーを主体に長めの直線も交える荒れた路面の本栖湖周辺でも、しっかりと荷重移動を行えば、スローかつリニアな挙動でドライバーの意思に忠実に応えてくれる。
そしてその際の静粛性は極めて高く、フラットかつ音解像度も高い12スピーカーの「ロックフォードアコースティックデザイン プレミアムサウンドシステム」も相まって、総計10時間弱のドライブを通じて快適に過ごすことができた。
2008年10月の一部改良とともに追加され、2010年9月の一部改良ではポスト新長期規制に適合した、4M41型3.2L直4直噴ディーゼルターボエンジンおよび5速ATも、2340kgという重量級ボディに何ら不足はなし。アクセルレスポンスは決してシャープではないもののリニアで、可変ノズルベーンを備えたターボも踏み始めのラグをほとんど体感させない。
これならばドライの舗装路はもちろん、滑りやすいオフロードでトランスファーレバーをローギヤ&センターデフロックの「4LLc」に入れても、常に適切にトラクションをかけられることだろう。
ただし燃費は、外気温40℃という猛暑の中、1時間にも及ぶ大渋滞の首都高を含んだこともあり、トータルで8.0km/Lと振るわず。JC08モード燃費が10.0km/Lに留まることを考慮すれば、落ち込み幅が少ないとポジティブに解釈できるものの、絶対的にはやはり高燃費と言わざるを得ない。
さて、そんな三菱パジェロだが、「果たして“買い”か?“待ち”か?」と問われれば、これは「買い」だと断言できる。内外装や安全装備に古さを感じさせるものの、走りの実力は今なお一線級。特に旋回性能と低速域での乗り心地に関しては、最も近いライバルであるトヨタ・ランドクルーザープラドにも勝っている。
そして、生産終了間際となった今、割り当てられた販売枠を売り切ったディーラーも現れ始めている。また残念ながら、かつて初代が「チャレンジャー」として日本でも販売されており、7月にタイでマイナーチェンジを受けた現行三代目「パジェロスポーツ」が日本に導入される見込みは、現在の所立っていない。
欲しいなら、もう迷っている時間はない。今すぐにでも、印鑑を持ってディーラーへ駆け込むべきだ。
【Specifications】
<三菱パジェロ・ファイナルエディション(F-AWD・5速AT)>
全長×全幅×全高:4900×1875×1900mm ホイールベース:2780mm 車両重量:2340kg エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ 排気量:3200cc ボア×ストローク:98.5×105.0mm 圧縮比:16.0 最高出力:140kW(190ps)/3500rpm 最大トルク:441Nm(45.0kgm)/2000rpm JC08モード燃費:10.0km/L 車両価格:453万600円
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