燃費、安全装備、一層の高級感…他の追随を許さぬ進化を果たす トヨタ アルファード/ヴェルファイア 完全無欠の孤高の存在へ|ミニバンレビュー/試乗インプレッション
- 2019/07/13
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青山 尚暉

ミニバンという枠を越え、いまや日本を代表する高級サルーンとしても認められるようになったトヨタ アルファード/ヴェルファイア。
現行型の登場から3年を経て行なわれたマイナーチェンジでは、数少ない弱点を払拭するとともに、もはやライバルの存在しない孤高の境地に達した感さえある。
<試乗グレード>
●アルファード ハイブリッド エグゼクティブラウンジ S
●ヴェルファイア ZG
REPORT●青山尚暉(AOYAMA Naoki)
PHOTO●平野 陽(HIRANO Akio)/宮門秀行(MIYAKADO Hideyuki)
※本稿は2018年2月発売の「 新型アルファード/ヴェルファイアのすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。
内外装はもちろんのことボディやサスに至るまで改良

2015年1月にデビューした現行型アルファード/ヴェルファイアは、クラス75%という圧倒的なシェアを持つ、国産ミニバン最高峰の“大空間サルーン”。
VIP愛用者が多いのは、現行モデルから加わった2列目席を一段と豪華に&贅沢に仕立てた「エグゼクティブラウンジ」のラインナップによるものだ。
そんなアルファード&ヴェルファイアが2017年12月、登場から3年を経てマイナーチェンジ。最大のハイライトは先進安全運転支援機能の拡充で、普及を目的とした第二世代セーフティセンスを新(初)採用(単価で約6万円とか)。
また3.5ℓ V6エンジンも刷新され、海外では北米仕様のカムリなどに搭載されている直噴+ポート噴射D-4Sの2GR−FKSに換装。最高出力/最大トルクは従来の280ps/35.1kgmから301ps/36.8kgmへと増強。
併せてトランスミッションは6速ATから8速ATの組み合わせとなり、ブレーキもフロントのディスクサイズが17インチに大径化されている(2.5ℓ直4とHVのパワーユニット&ブレーキサイズに変更はなし)。
もちろん内外装もリフレッシュ。エクステリアでは主にフロントマスク&リヤガーニッシュを変更し、よりワイド&ローを強調。
意外なのは今回のマイナーチェンジで顔つきの変化幅がより大きく感じられるのはアルファード。もはや迫力と押し出し感では、精悍な二段構えのヘッドランプを持つヴェルファイア以上という印象だ。実際、マイナーチェンジ以降、アルファードの販売台数が伸びているという。
VIPや芸能関係者も好んで選ぶ700万円超えの「エグゼクティブラウンジ」は、これまで標準ボディのみの設定だったのだが、顧客の要望に応え待望のエアログレードが新設定されたのもトピックのひとつだ。
ただし、ガソリン車の他のエアログレードには操安性重視の18インチが装着されるところ、「エグゼクティブラウンジ」ではガソリンエアログレードも含めた全車が乗り心地に配慮した17インチとなる。
しかし最近のトヨタのマイナーチェンジは単なる化粧直しにとどまらない。
まず注目すべきは、Aピラーとスライドドアまわりに構造用接着剤、及びウインドウを構造材にする高剛性接着剤を用いたボディ剛性の強化だ。
次に静粛性の向上で、フェンダーライナーの吸音材張り付け、ダッシュサイレンサーの遮音用樹脂フィルムの多層化、ステップ部内部の二重シール材構造など、室内に侵入するエンジン、ロードノイズ低減を徹底。
さらにドアミラーベース後端を、風が外側に流れる形状に変更し、風切り音の低減をも実現している。1-3列目席間の会話がしやすくなったことがその効果の証明だ。
「エグゼクティブラウンジ」はさらにフロント&スライドドアのガラスをラミネートタイプとし、ドアの密閉性を一段と高めた、より入念な遮音対策が施されているほどだ。
そして走行性能、快適性の改善も抜かりなし。シート、サスペンションから、新3.5ℓ V6エンジン搭載車のパワーステアリングに至る改善が盛り込まれている(詳細後述)。
ところでアルファード/ヴェルファイアがライバルを圧倒する人気を得ている理由が3種のパワーユニットの選択肢に加え、実は室内高にあるという。
アルファード/ヴェルファイアはボックス型ならではの1400mm(販売伸び悩みの競合車は1300mm前後)。それが大空間パッケージを成立させ、乗員に乗用車最大級のゆとり、贅沢感、大いなる居住満足度をもたらしている。
一流ホテルがロビーや客室の天井の高さを競うのと同じ理屈である。
また、アルファード/ヴェルファイアには4種類もの2列目席が用意されているのも高い商品力の要因。
8人乗りのベンチシート、7人乗りの超ロングスライドによる膝まわり空間世界最大級のリラックスキャプテンシート、センタースルーを実現しつつ豪華さを極めたエグゼクティブパワーシート、そしてVIP御用達のハイエンド仕様となるエグゼクティブラウンジシートという豊富な選択肢は他にない独自の美点だ。


剛性アップのおかげで乗り心地&操作感が向上

まず走らせたのはマイナーチェンジ色がより強く反映された2.5ℓ 直4+2モーター、システム出力197psのアルファードハイブリッド 「エグゼクティブラウンジS」(新設定のエアロ仕様)。
パワーステアリングは軽く扱いやすく、出足はもちろんモーター走行で静かに滑らかに発進。
2t超えの車重ゆえ早期にエンジンが始動するものの「エグゼクティブラウンジ」ならではの万全の吸音・遮音性もあり、実に静かなままモーターアシストによる伸びやかな加速を披露する。
バッテリーの充電量にもよるが、80㎞/h程度での静かなEV走行も粘り強く行なってくれるほどである。
操安性も全車に施されたボディ剛性の強化がはっきりと現れていた。
市街地の交差点、カーブ、高速レーンチェンジではパワーステアリングの操作に対して応答遅れなくノーズがスッと反応し、水平感覚を保ったまま気持ち良く、自然に向きを変えてくれるから実に走りやすい。
言い方を変えれば車体の大きさ、車重、不安を感じにくい運転・走行感覚だ。
乗り心地は直近の従来型にあったフワつき、グラリ感なしの、バネ上に無駄な動きのないフラットで快適感に満ちたもの。
段差の乗り越えもしなやかにいなし、荒れた路面でフロアに振動を伝える場面があるものの、無粋なショックは皆無に近い。
そして2列目席の乗り心地の向上も明らか。ボディ剛性やひじ掛けの振動改善に加え、ダンパーに新バルブを採用したサスペンション(全車)、背もたれに内蔵される振り子状のダイナミックダンパーの改良で、車体とシートそのものの振動も低減しているからだろう(スライド位置は前寄りが乗り心地面で有利とか)。
これまで「エグゼクティブラウンジ」はシートの見栄え、機能こそ優れていても、実はシート外側のひじ掛けに微振動があり、腕を置くとビリビリする欠点があった。
原因はひじ掛けの蓋や多機能リモコンを含むシート単体重量が約20kgもあり、振り子の原理で走行中に振動しやすかったからだが、VIP対応!? としてその点も改良され、走行条件によって依然、微振動皆無とは言えないものの、ほぼ気にならないレベルになっていたことは特筆すべきだろう。
ちなみにエグゼクティブラウンジシートは2-3列スルー機能を持たないが、VIPの乗降と反対側の右側から乗降し、3列目席に座る秘書のために!? シートの背もたれがワンタッチで倒れて前方スライドし、オットマンも畳まれる機能を右側にOPで新設定。
これは4月以降の車両から選べるそうだが、便利ゆえ一般ユーザーも必須の選択と断言する。
力強さに加えて操縦性も顕著な進歩の新3.5ℓ

次いで試乗したのは、ついにアイドリングストップを完備した301psを誇る新3.5ℓ V6エンジン+8速AT、エアロボディ、18インチタイヤを組み合わせる最も尖ったグレードのヴェルファイア「ZG」(2列目エグゼクティブパワーシート仕様)。
早速新エンジンを味わうと、アイドリング振動にこそ改善の余地ありだが、アクセル操作に対するレスポンスは車高、重心を意識したであろう穏やかなもので、ゆっくりアクセルを踏む限り、加速は意外なほどジェントル。
静かに、そしてV6らしい図太いトルクで静々と品良く走り出す。
しかしひとたびアクセルを深々と踏み込めば、エンジンは8速ATの多段変速のつながりの良さもあって実にスムーズかつ豪快に回り、低音が効いた、雑味なき快音とともに胸のすく加速力を開始する。
0-100km/h加速は従来型の約8.5秒に対し約8.2秒。2.5ℓは約11.3秒、HVが約10.7秒だから、圧倒的に駿足。速い!
乗り心地は18インチタイヤを履いていてもさらに高められたボディ剛性、微低速で高減衰力が出る新バルブ採用のダンパーによって、心地良い硬さ、HVの17インチタイヤ装着車に対して一段とフラットな安心感、快適感あるタッチを示してくれる。
とはいえ最も驚かされたのは操縦性だった。パワーステアリングはこのV6モデルだけ別制御で、切る、戻す方向のアシスト量を増やし、舵の効きを強めた結果、18インチタイヤの採用もあり素晴らしくすっきりしたリニアな操舵フィーリングを示すのだ。
結果、ステアリング操作に対するクルマの動きに強い一体感が出て、この巨体、車重にして意のままと言える操縦感覚を味わわせてくれるのだから走りやすく気持ちいい。
最小回転半径が、17インチの5.6mから5.8mになっても扱いやすく感じるのはそのためで、山道のS字カーブもまるでスポーティサルーンのようにクルマを手足のように操れ、運転好きにはたまらないファンな走行性能が実現されている!
逆に運転に少々不慣れなドライバーでも自信たっぷりに走行できるのがこの18インチタイヤ装着車というわけだ。
無論、V6、HVモデルともに高速走行での直進性は文句なく(電気式4WDのHVモデルが勝るが)、レーンチェンジはほぼ水平移動感覚。
これまでの車両に見られた高速走行時のフラつき感、きつい段差などでの突き上げも見事に抑えられている。
このあたりの改善幅は3.5ℓ V6エンジンの選択比率が多い、17インチタイヤを履く「エグゼクティブラウンジ」でより強く感じられ、VIPユーザーの要望にしっかりと応えたと言っていいだろう。
最後に新型アルファード&ヴェルファイアに新搭載された単眼カメラとミリ波レーダーによる、全グレード標準装備の第二世代セーフティセンスについても触れないわけにはいかない。
プリクラッシュセーフティ=自動ブレーキは新たに昼間の自転車、夜間の歩行者にも対応。
180km/hまで設定可能となった渋滞追従機能付きレーダークルーズコントロール=ACC作動時に運転操作の支援を行なうレーントレーシングアシストを新搭載。
ACCとセットで使う際は車線の中央を維持すべくステアリングをアシストし、車線内への自動引き戻し操作を重心の高さゆえ穏やかに行なうが、レーントレーシングアシストだけでも車線内への引き戻し機能は作動する。
さらにリヤクロストラフィックアラートや自動ブレーキに準じて“ぶつからない”効果があると思えるブラインドスポットモニターも新設定。
標識をメーター内に表示してくれるロードサインアシストは速度を超過すると制限速度標識表示が注意喚起のためオレンジ色になるのが面白い。
レーントレーシングアシストは高速道路の制限速度内なら500R程度までのカーブにも対応。作動は自然で結構使える印象が持てた。
夜間の歩行者を認識できるようになるなど単眼カメラの画像解像度を向上さ せた結果だが、天井が開いた明暗のコントラストが強いトンネル内などでは一時的に作動が中止(すぐに復帰するが)。
このあたりは単眼カメラの限界とも言えそうだ。
とはいえ、新型アルファード&ヴェルファイアは国産最上級ミニバン、“大空間サルーン”の価値を先進安全運転支援機能、走行性能、快適性能を含め、大幅に高めたことは間違いない。


その進化幅は「エグゼクティブラウンジ」が最も大きいのだが、一般ユーザーに身近な2.5ℓ直4モデルでさえ同様の進化、恩恵が手に入るのだから、ハイエンドミニバンを狙っている人は迷わず買いだ。
後席の家族、VIPはもちろん、運転者がドライバーズカーとしても満足できること必至である。
3列シートはレクサスRXを始めとするSUVへ……そんな世界的潮流もあるにはあるが、新型アルファード&ヴェルファイアはミニバンの存在意義を改めて強く感じさせてくれた一台だ。
ニューモデル速報 Vol.566 新型アルファード/ヴェルファイアのすべて
V6直噴化+8AT搭載。新世代セーフティセンス全車標準!
ドライビングインプレッション
ライバル車比較試乗
開発ストーリー
メカニズム詳密解説
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