【日産スカイライン試乗記】プロパイロット2.0だけじゃない! 先進技術と史上最強パワーで飛躍的進化
- 2019/10/01
- ニューモデル速報
プロパイロット2.0の ハンズオフドライブや如何に
それはとにもかくにも、ハイブリッドモデルにプロパイロット2.0が搭載されたから。高速道路においてハンズオフドライブを可能にしたこのシステムは、一体どんな走りを示すのかは興味津々だ。
早速ーズコントロールを制限速度内のスピードにセットしている場合に限り、プロパイロット2.0が介入することがまずは確認できた。制限速度を大きく超過するとハンズオフは機能しない。今回は試乗中に故障車があり50㎞/h規制の区間があったのだが、50㎞/h速度看板を通過した瞬間、「ステアリングを握ってください」とのアナウンスがあり、ハンズオフは終了することになったのだ。周囲の交通の流れを考えると突然減速するのはかえって危ない。制限速度が変わった途端に急減速するのではなく、自然に減速させながら、その間はドライバーがステアリングを握り状況の変化に備える。現実に即したこの制御は、ある意味で融通が利くもので有難いとさえ思えた。
ただし、速度規制が解除となっているにも関わらず、なかなかクルマが認識しないこともあった。速度規制「50」の看板の下に解除を示す左矢印「↓」が存在したのだが、それまでは読んでくれなかったようだ。ずっと先にある速度規制「100」の看板が出てくるまでハンズオフは使えないことがあったのだ。これからは速度規制看板を増やすか、もしくはより読み込み制度を高めるなどの対策が必要かもしれない。
また、トンネルを走行してGPSが途切れるような状況になると、ハンズオフはできなくなる。システムのすべてが完全に機能する場合に限りプロパイロット2.0を作動させる状況をつくっていることは、かえって安心だ。何から何まで全自動としないところに日産の良心を感じる。
ただし、ハンズオフが行なえない状況であっても運転支援は続いている。ステアリングは車線の中央を突き進むかのように保持されることから、実際にはステアリングを軽く握っているだけでドライブは可能だ。これは疲労の低減にかなり役立つように感じた。
こうした大前提がある上で、プロパイロット2.0は条件が整ったところではじめて機能する。今回は東北自動車道を北上し、北関東道の途中までそれを試したのだが、9割以上でハンズオフドライブが可能だった。ワインディングが続こうとも、きちんと車線の中央を滑らかにキープ。アップダウンが存在したとしても、速度変化をもたらすことなく設定速度を維持していたところが好感触だった。また、スイッチひとつでスムーズに遅いクルマに追い越しを掛けることも可能だし、インターチェンジにアクセスすることもできる。ここまで支援してくれるとは、衝撃的だった。
ハイブリッドのドライバビリティの高さ、そしてこうしたシステムとのマッチングが高いであろう、ステアバイワイヤのDAS(ダイレクト・アダプティブ・ステアリング)、さらには3D高精度地図データがあってこその仕上がりなのだろう。不安な感覚を一切持つことなく、ハンズオフドライブを可能としたことは本当に凄いことだと感心する。普段のロングドライブでは首や肩が張ってくることが当たり前なのだが、手を下にダランとさせられることで、そんな疲労を感じることは皆無だった。これならプレミアムセダンの新たなる価値として、プロパイロット2.0はかなりのアドバンテージとなることだろう。
そして何より、このシステムがあるならば、速度違反などしようとも思えなくなるところが意外な発見だった。制限速度を守って走っていればハンズオフというメリットがある。ならば飛ばす必要などないじゃないか、という考えになるのだ。いつの間にやら安全運転の方がオトクという思考になり、かなり改心させられている自分がいた。人の心まで誘導する、それが運転支援の最先端を行くプロパイロット2.0なのかもしれない。
ハイブリッドモデルの魅力はもちろんそれだけでは終わらない。1モーター2クラッチという独特なシステムを搭載するこのクルマは、トルクコンバーターを使うクルマとは違い、アクセルのダイレクト感が非常に高い。ミリ単位の操作がそのまま直結してトラクションとして跳ね返ってくるのだ。MT車に乗るかのようなこのフィーリング。ある意味スポーティだ。それはモーター走行であっても同様。よく調教されたレーシングユニットに乗るかのような感覚がそこにある。ただし、タウンスピードでは状況次第で「コンッ」と変速ショックが感じられる部分はご愛嬌か!?
おそらくダイレクト過ぎるゆえの動きだろう。
ストップ&ゴーを繰り返すシティユースでも10㎞/ℓ、郊外や高速道路も含めたトータルでは14㎞/ℓを実現していたこともハイブリッドの魅力。後に乗ったV6ターボモデルではリッター8〜10㎞/ℓだったことから、ハイブリッドのメリットは大きいようにも思えた。
ベースモデルというには十分以上の新しいV6ターボ
続いて試乗したV6ターボモデルのGTは、今回新たに3.0ℓのVR30DDTTエンジンを搭載。これでベースモデルという位置付けとなるわけだが、走ってみると滑らかさがありつつも、十分なトルク感と高回転へ向けた爽快な吹け上がりがなかなかのバランスだと思えた。もちろん、上には「400R」がいるわけだから、パンチがあるという部類のグレードではないのだが、プレミアムセダンとして必要十分以上の仕上がりに感じたのだ。かつての4気筒ターボが廃止となり、これに代わったわけだが、滑らかさも力強さも明らかにそれよりは上。これがベーシックだと言うにはもったいないくらいに感じる。
残念ながらプロパイロット2.0は搭載されていないわけだが、セーフティシールドはきちんと機能しており、例えば前走車に近付き過ぎた時にアクセルを踏み続ければ、アクセルは徐々に跳ね返され、最終的にはブレーキを作動させて停止までしてくれる。電動パーキングを搭載していないため、停止保持まではしてくれないが、実質ワンペダルで動かせてしまうから安全性は十分かもしれない。
ハンドリングはハイブリッドモデルに比べてリニアに仕立てられており、微操舵から切り込み応答まで自然な切れ味なところが気に入った。V6ターボモデルはDASをチューニングし、レスポンスやライントレース性能を高めたというから、それが功を奏しているのだろう。
プロパイロット2.0が新型スカイラインの機能の目玉なら、走りの目玉は“史上最強のスカイライン”「400R」の存在だ。3.0ℓ V6ターボエンジンはさらなるチューニングが行なわれ、標準のV6ターボモデルから101㎰/7.6㎏mアップの405㎰/48.4㎏mを発揮! 外観上は400Rのエンブレムと専用ホイール&キャリパー、シートと大きな違いはないが、それが「羊の皮を被った狼」感を醸し出してスカイラインらしいといえばらしいところだ。
スカイラインらしい「走りのセダン」の復権。400R
最後に試乗した「400R」は、何もチェックせずに走り出したのだが、動き出した瞬間から感じるものがこれまでの2台より濃く仕上がっているように感じられた。特にブレーキのタッチに関しては段違いに向上しており、右足が求めた通りに細かく制動感が生み出せる感覚があったのだ。後にクルマを見れば対向キャリパーが装着されていたから理由はハッキリしたのだが、こうしてスペックや見た目を確認しなくても即座に伝わるほどブレーキは好感触だった。
動力性能についてはスペックやエンブレムできっと豪快なのだろうという先入観があったのだが、街中を静かに走らせている限りでは荒々しさは感じられない。GTと変わらずのフィーリングだ。だが、アクセルを深く踏み込めばタービンが変更されたVR30DDTTは一気に目覚めてくる。低回転からグッと前に出る感覚に優れ、それがレブリミットとなる7000rpmまで連続して続いていくその感覚は、かなりのスポーティさだ。ややスロットルオフ時の追従性が鈍いようにも感じるが、そこはこれからということか!?
だが、いずれにしても積極的にパドルシフトしたくなるその仕上がりは、走りのスカイラインがカムバックしたかに思えるほど。いよいよスポーツセダンの復権だ。R34くらいまでの懐かしいスカイラインがようやく戻ってきたか、そんな風に感じてしまうのだ。
そしてシャシーもかなり引き締められたイメージで、フラットな路面におけるキビキビとした身のこなしは気持ち良い。荒れた路面になるとランフラットタイヤを装着していることもあってか、ややしなやかさに欠けるような気もするが、それもスポーツモデルだと捉えれば納得のレベルだろう。
今回のマイナーチェンジでは顔付きもテールもデザインを改め、スカイラインらしさ、そしてインフィニティではない日産らしさが戻ったかに思える。賛否両論あるらしいが、古くからのファンからすれば、そのヤンチャな仕上がりはうれしい。
そしてなにより、時代の最先端を行くスカイラインならではの世界観が今蘇ったことも喜びだ。「技術の日産」、「先進のスカイライン」が令和の現在でも続いたことに感動した。
実は冒頭に触れたスカイラインファンの父はもうこの世にいない。だが、もし生きていたならきっと飛びついていただろう。今度のスカイラインは、そう思えただけで価値ある一台だ。
モーターファン別冊・ニューモデル速報 ニューモデル速報 Vol.587 新型スカイラインのすべて
ドライビングインプレッション「伝統と革新と」
最新技術と最強パワーを引っさげて登場した新型スカイライン。国産車初の高速道路ハンズオフ運転機能「プロパイロット2.0」搭載モデルや、スカイライン史上最高405psを誇るモデルなどスカイラインらしさを色濃く打ち出したラインナップを徹底解説。
ライバル車比較インプレッション「帰ってきた真のスカイライン」
話題の運転支援技術の真価とスポーツセダンとしての走りを国内外のライバル車と比較。高速道路やワインディングでの試乗インプレッションで新型スカイラインの魅力に迫る。
ライバル車:BMW3シリーズ、メルセデスベンツCクラス、トヨタクラウン
開発ストーリー「先駆者のプライド」
一般ユーザーが現段階で体験できる最も自動運転に近い機能「プロパイロット2.0」を搭載した新型スカイライン。ハンズオフ走行を可能にする最新技術を開発者のインタビュー取材を通して詳しく解説。
使い勝手徹チェック「優れた運転環境で先進技術を使いこなす」
運転席まわりの操作レバーやボタンからナビ、空調の操作感、後部座席の居住性までクルマの基本的な使い勝手を徹底チェック。さらに室内収納スペースやラゲッジルームの広さなど実際に使うユーザーの目線で各所の機能を解説。
メカニズム詳密解説「新世代の嚆矢となる新技術」
プロパイロット2.0やコネクティッドサービスなどの先進装備だけでなく、スポーツセダンとしての走りの質を高める高性能V6エンジンや電子制御サスペンションなど、新型スカイライン投入された最新技術を詳密に解説。
- 前へ
- 2/2
|
|
自動車業界の最新情報をお届けします!
Follow @MotorFanwebおすすめのバックナンバー
これが本当の実燃費だ!ステージごとにみっちり計測してみました。
日産キックス600km試乗インプレ:80km/h以上の速度域では燃費...
- 2021/03/26
- インプレッション
BMW320d ディーゼルの真骨頂! 1000km一気に走破 東京〜山形...
- 2021/04/03
- インプレッション
日産ノート | カッコイイだけじゃない! 燃費も走りも格段に...
- 2021/02/20
- インプレッション
渋滞もなんのその! スイスポの本気度はサンデードライブでこ...
- 2019/08/11
- インプレッション
PHEVとディーゼルで燃費はどう違う? プジョー3008HYBRID4と...
- 2021/06/28
- インプレッション
スズキ・ジムニーとジムニーシエラでダート走行の燃費を計って...
- 2019/08/09
- インプレッション
会員必読記事|MotorFan Tech 厳選コンテンツ
フェアレディZ432の真実 名車再考 日産フェアレディZ432 Chap...
- 2018/08/28
- 新車情報
マツダ ロータリーエンジン 13B-RENESISに至る技術課題と改善...
- 2020/04/26
- コラム・連載記事
マツダSKYACTIV-X:常識破りのブレークスルー。ガソリンエン...
- 2019/07/15
- テクノロジー
ターボエンジンに過給ラグが生じるわけ——普段は自然吸気状態
- 2020/04/19
- テクノロジー
林義正先生、「トルクと馬力」って何が違うんですか、教えて...
- 2020/02/24
- テクノロジー
マツダ×トヨタのSKYACTIV-HYBRIDとはどのようなパワートレイ...
- 2019/07/27
- テクノロジー
Motor-Fanオリジナル自動車カタログ
自動車カタログTOPへMotor-Fan厳選中古車物件情報
日産 スカイライン
GT タイプP 3Lツインターボ・革シート・シートヒーター 黒革シート クルーズコントロール 1...
中古価格 390.8万円
日産 スカイライン
ニスモ 3.0 NISMO メーカーOPナビ・ETC・クルーズコントロール・パワシート・アルミホ...
中古価格 748.6万円
日産 スカイライン
400R 特別仕様車 コネクトナビゲーションシステム 全方位支援システム 白革スポーツシート シ...
中古価格 432.9万円
日産 スカイライン
3.5 ハイブリッド GT タイプP ナビ・プロパイロット2.0・本革シート
中古価格 315.3万円
日産 スカイライン
400R サンルーフ 全方位運転支援システム コネクトナビゲーション インテリジェントアラウンド...
中古価格 467.6万円
日産 スカイライン
ハイブリッド GT タイプP 4WD プロパイロット アラウンドビューモニター シートメモリー ...
中古価格 339.7万円