しんかい6500(6K)に乗れる人だけが行ける深海6500mの世界とは? 深海6500mとはどんな世界なのか? そこへ行ける世界でも稀な「しんかい6500」とはどんな船なのか?
- 2019/11/19
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MotorFan編集部
JAMSTECが世界に誇る有人潜水調査船、それが「しんかい6500=6K」である。水深6500mという想像を絶する世界へ人間を連れて行ってくれる希有な船である。しんかい6500とはどんな存在で、深海6500mとはどんな世界なのか?
TEXT◎貝方士 英樹(KAIHOSHI Hideki)
建造は1989年。以来人身に関わる事故なしの「しんかい6500」
有人潜水調査船「しんかい6500(以下、6K)」はJAMSTECが保有運航する潜水調査船だ。3名の乗員(研究者1名、パイロット2名)が乗り込み、深さ6500mの深海へ潜航できる。
6Kが建造されたのは1989年、建造メーカーは三菱重工だ。運航開始は翌90年からで、来年2020年には就役30年を迎える。就役から現在まで、6Kは国内外で1500回以上の調査潜航を重ねており、数々の実績を残している世界トップの潜水船となった。素晴らしいのは運航開始以来、人身に関わる事故が発生していないこと。数千メートルもの深海底への安全運航を現在もなお継続している。これは6Kの運航に関わる全ての人々が安全を追求する強い意志を持ち、努力を続けているからだ。
地球表面の70%は海洋で、地球全体の海の平均水深は約3800mだ。加えて、海底は3000mから6000mの深さのところが最も広く、全海洋の70%、地球の全表面積のほぼ半分を占めている。そして深海とは深さ200m以上の海を指す。つまり世界の海のほとんどは深海と呼ばれる海ということになる。
6Kの最大潜航深度である6500mの深海とはどんな環境か? そこは「高圧、低温、暗黒」の世界だ。深海底6500mでの水圧は約681気圧、水温は1.5〜2℃、太陽光線は全く届かず、強力な水中ライトを照射しても見えるのは船体から10m前後の範囲だけだという。生身の人間では到達不可能な「極地」といえる環境だ。6Kはこの極地へ潜航し、海上と往来する能力を持つ。
3名の乗員は船首区画にある「耐圧殻(たいあつかく)」と呼ばれる球形の部屋へ乗り込む(6K運航チームでは「たいあつこく」と呼ぶ)。耐圧殻の素材はチタン合金製で、殻の厚さは73.5㎜。半球にした殻を溶接し球体にした真球構造物だ。内径は約2mで非常に狭い。この耐圧殻が深海の数百気圧に耐える設備となる。各種のポンプやモーターなどの機能部品は耐圧容器に入れられ密封される。配線類は内部に油を満たしたホースの中に封入され水圧に対抗する。船体のあらゆるものが高水圧対策を施されているのだ。
潜水「船」である6Kは船体に浮力材を搭載し、あらかじめ「浮く」構造になっている。潜航するにはこの浮力材による「浮量」を上回る重量のバラスト(重り、錘)を積み、この重さで潜る。ピンポン球に重りを取り付け沈下させるイメージだ。潜航速度は約45m/毎分。深海に到達したらバラストを少し切り離し中性浮力を得て「浮かず沈まず」の状態にして航走する。深海底から浮上するさいは、残りのバラストを切り離すだけで海面まで浮き上がってゆく。
6Kの潜航をサポートするのは深海潜水調査船支援母船「よこすか」だ。本船は6Kを保管・整備・輸送するための格納庫を持ち、後部作業甲板には6Kを投入・揚収するための大型クレーンが設置されている。「よこすか」と「しんかい6500」は合わせて深海潜航調査システムとなっているのだ。
海洋国ニッポンが世界に誇る海洋研究機関が「JAMSTEC」=国立研究開発法人 海洋研究開発機構です。1971年に設立されまもなく50周年を迎えます。宇宙のJAXA(宇宙航空研究開発機構)に対して「海のJAMSTEC」と言えます。地球深部探査船の「ちきゅう」や有人潜水調査船「しんかい6500」など多くの研究船や研究機材を擁しています。そのレベルは世界トップ!。この『JAMSTEC最前線』では、研究船やしんかい6500、無人探査機などJAMSTECが持つ最新機材を余すことなく紹介します。JAMSTECファン、海洋科学ファン、テクノロジー・ファンのみなさんにお勧めです。
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