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「一発タイムはDCT、ロングランならMT」ニュル最速男、ロラン・ウルゴンが明かすルノー・メガーヌR.S.トロフィーのすべて

  • 2020/03/17
  • ニューモデル速報
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ニュル最速レコード奪取は至上命題ではなかった?

 繰り返しになるが、聖地において日本のホンダ・シビック・タイプRのタイムを更新してニュル最速の称号を奪還したトロフィーRの開発も、ウルゴンが担当した。その詳細な技術内容については別項にゆずるが、EDCや四輪操舵の4コントロールといった特徴的なメカニズムまで省略するという、壮絶かつ容赦ない軽量化が、トロフィーRではなによりも目を引く。

「トロフィーRの開発にあたって、目指す性能を達成するシミュレーションをしたところ、130㎏の軽量化が必要と判明しました。それがすべての出発点でした。130㎏という数字を見て最初に思い浮かんだのが、このクルマのコンポーネントで最も重い4コントロールでした。

 EDCや4コントロール以外の部分で130㎏の軽量化ができたなら、それらを残したほうが明らかに速く走れたでしょう。我々としてもそれが理想的なソリューションだったはずですが、今回はそういうアプローチは不可能でした」

 しかし、そこには開発陣の中にも葛藤があったという。

 「そのメリットを訴えてきたアイテムを外すことは、メガーヌRS全体の商品企画としてどうなのかという議論はありました。さらに、4コントロールを外すことでリヤが一気に軽くなりますから、それを操れるのは、かなりのエキスパートドライバーに限られるであろうことも予測されました。まあ、その後の開発で、当初の予想よりはドライバーのレンジは拡大できましたが」

 意外だったのは、トロフィーRの最初の仕様書ではニュルの周回タイムは必達項目でなかったということで、ウルゴンも「そういえば隅に小さく書いてあったかなあ」と笑いながらうそぶく。彼は標準モデルに近い状態であのタイムを叩き出したシビックへのリスペクトを今も強く抱き「このクラスであれ以上のエンジンは存在しないし、変速機のフィーリングも最高。最初は、あのタイムはとても抜けるとは思っていませんでした」と振り返る。

 「今回のトロフィーRの開発目標は、あくまで先代トロフィーRの性能をあらゆる要件で超えることでした。加速、減速、旋回速度、ストレートのすべてです。ニュルブルクリンクのラップタイムの優先順位は、決して高くありませんでした」

軽量化の弊害を担保したのは歴代最高のエアロダイナミクス

 重量削減を最優先に、看板技術までもあえて削除したトロフィーR。しかし、それでも容易に達成できないほど、目標はあまりにも高かった。

「軽量化のためにEDCと4コントロールを外すことは否応なく決まりましたが、実際にはそこから先の軽量化が大変でした。カーボンパーツやチタンマフラーまでは比較的簡単なアイデアでしたが、それでも足りません。現在は先々代のR26Rのようなプレクシガラスは使えませんのでガラスそのものを薄くして、後席を取り去りました。最後は本国のメガーヌRSで標準装備の縦型の8.5インチディスプレイを横型の7インチ(=日本仕様はこれが標準仕様)に変更して250g減らしたり、といった地道な作業の積み重ねでした。

 パワートレインは基本的にトロフィーと共通ですが、1カ所だけトロフィーR専用の部分があります。それはシフトレバー下のウェイトを外したことです。これによって変速がわずかにスピーディになることは事実ですが、振動などの日常フィーリングは悪化します。その目的は……もちろん軽量化ですね(笑)」

 4コントロールの省略によって低下したリヤのグリップは、歴代RSで最大のダウンフォースを発生するという空力、後輪操舵を省略することで専用設計となったリヤトーションビームの高剛性化、そして専用コンパウンドのブリヂストン・ポテンザS007によって補ったという。

 この取材時点では残念ながらトロフィーRの試乗はかなわなかったが、専用スプリングやオーリンズ製の調整式ダンパーによる乗り心地はさぞやガチガチなのでは……と、最後にツッコミを入れてみた。

 「いいえ、いかにトロフィーRであっても、オープンロードでも走れるのがRS製品の大前提。ダンパーを調整式としたのもそのためです。車高の調整幅は16㎜あり、工場出荷時は最も高い位置にセッティングされています。その状態であれば、普通のトロフィーと大差ない乗り心地が確保されていますよ」
(文中敬称略)

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