トヨタがヤリスクロスを出さなければならない理由 激戦区のBセグSUVの8%を狙う戦略モデルの登場。欧州でトップを狙う意欲作
- 2020/05/02
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MotorFan編集部 鈴木慎一
ヤリスクロスの日本仕様は、1.5ℓ直3+CVTと1.5ℓ直3+THSⅡの2種類のパワーユニットを用意するが、欧州仕様は当初は1.5ℓ直3+THSⅡだけでスタートするだろう。これは先に発表されたヤリスと同様だ。
欧州での新型ヤリスクロスのCO2排出量は
FFモデル:90g/km以下
AWDモデル:100g/km以下
と現時点で発表されている。
これは、NEDC(欧州の燃費モード=New European Driving Cycles)の数値。最新の世界統一モードであるWLTPでは
FFモデル:120g/km以下
AWDモデル:135g/km以下
だ。最新のWLTPよりもNEDCの数値が先に出てくるのは、欧州の厳しい燃費規制のためだ。自動車メーカーは欧州で販売したクルマの1km走行あたりの二酸化炭素(CO2)排出量(g/km)の平均を95g/km以下にすることが義務付けられ、95g/kmを超えると、1g当たり95ユーロ (1ユーロ=118円換算で約1万1000円)×欧州での販売台数という罰金を科される厳しい規制だ。
もちろん、電気自動車(CO2排出量0g/kmで計算)の扱いなど複雑な仕組みだが、ともかく「95g/km」を下回っていることが重要。しかも、この場合に基準となる数値は、「NEDCモード」のものなのだ(次の規制ではWLTPの数字に切り替わるが)。
ヤリス(1.5ℓ直3+THSⅡ)のデータは
NEDCモードで64g/km
WLTPモードで86g/km
だから、やはりSUVモデルであるヤリスクロスの燃費はそれなりに悪化はする。
B-SUVに関してはAWDであることはさほど重要視されない。つまりFFモデルが主力となるはずだ。となれば、ヤリスクロスが目論見通り20万台前後売れれば、95g/km以下であるわけだから、その分メーカー平均値を下げてくれるということになる。
となると、下げた分、CO2排出量が多い、高級・大型車(つまり利益率が高い)を売ることができるということになる。
英国の調査会社JATOによると2019年の欧州の自動車メーカー別CO2排出量平均はこうなっている。
2019年の欧州におけるメーカー別CO2排出量平均
1:トヨタ 97.5g/km
2:シトロエン 106.4g/km
3:プジョー 108.2g/km
4:ルノー 113.3g/km
5:日産 115.4g/km
6:スコダ 118.1g/km
7:セアト 118.1g/km
8:スズキ 120.6g/km
9:VW(フォルクスワーゲン) 121.2g/km
10:キア:121.8g/km
11:フィアット 123.7g/km
12:オペル/ボグゾール 124.9g/km
13:ダチア 125.6g/km
14:ヒュンダイ 126.5g/km
15:フォード 128.5g/km
16:BMW 129.0g/km
17:アウディ 130.3g/km
18:ボルボ 133.8g/km
19:マツダ 135.4g/km
20:メルセデス・ベンツ 140.9g/km
トヨタはレクサスブランドを入れても99.0g/kmだから、テスラ (0g/km)を除けば、もっとも95g/kmクリアに近い自動車メーカーだ。
95g/km規制にはさまざまなルールが設定されている。そのなかに「マニュファクチャラー・プール(Manufacturer Pools)」という考えがある。これは簡単にいうと、グループ一緒の計算でもいいですよ、という意味だ。VW、セアト、スコダのCO2オフセットをアウディやポルシェに使えるというわけだ。
トヨタでいえば、このマニュファクチャラー・プールにレクサス、スバル、マツダも入る。このプール全体で95g/km以下にする必要があるのだ。BセグコンパクトハッチバックよりもCO2排出量は多いがその分価格も高いB-SUVが90g/km以下で20万台売れれば、そのインパクトは非常に大きい。
新型ヤリスクロスが担う使命は、そのボディサイズよりはるかに大きいのだ。
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