【美しすぎるクルマ・ベスト3(河村康彦)】プジョーとピニンファリーナが手を取り合った最後の傑作「プジョー406クーペ」
- 2020/11/10
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河村 康彦
河村康彦さんが選んだ「美しすぎるクルマ」、その第1位はプジョー406クーペだ。ピニンファリーナが手がけた最後のプジョー車は、ベースとなったセダンとは別物の姿をまとって登場。全長4.6mほどのコンパクトなボディでここまで流麗なフォルムを実現させたのは、さすが名工の業と称えたなくなる。
TEXT●河村康彦(KAWAMURA Yasuhiko)
第3位:スズキ・フロンテクーペ
「半世紀ほど前に、こんな個性的な軽自動車が存在していたとは!」
「小さいこと」が特徴なのに、それを売り物としたモデルがひとつも存在しない昨今の軽自動車。室内空間の大きさを競い合って広大なヘッドスペースに一喜一憂(?)し、リアドアに両側電動スライド式を採用するなどの結果、車両重量が1トン超えも珍しくないという”重厚長大”なモデルばかりなのは寂しい限り...。
ところが、実は半世紀ほど前には世界にも通用しそうな魅力的デザインを備えた、こんな個性的軽自動車が存在していたとは! それが、軽自動車のエンジン規格が360ccまでに限定されていた1971年に登場のフロンテクーペだ。
全長は3mに満たず、ホイールベースも2mそこそこ。さらに、全幅も1.3mを下回るという”小さなキャンバス”に描かれたのは、何ともスタイリッシュで魅力的な本格クーペ。実は、このモデルのスタイリング原案は、自動車デザインの巨匠であるかのジウジアーロさんの作なんだとか。
そういえば、そのシルエットはやはり同時期に登場したアルファロメオのアルファスッドにそっくりなのだからさもありなん! こなたフロンテクーペはRR、かなたアルファスッドはFFと全く異なる駆動レイアウトの持ち主なのに、どうにも同類の血統を感じられるのは、当時のジウジアーロさんが、ボディ後端をスパンと切り落としたいわゆる”コーダトロンカ”の仕立てがよほど気に入っていた証ということか。
第2位:シトロエンDS
「自動車業界の『奇想天外大賞』の一等賞は間違いなし!」
このモデルの後継が今の時代へと生き永らえていたら、いったいどんな姿を見せてくれたのか...そんな想像に思いを馳せてしまうのが、”宇宙船”なる愛称もまさに言い得て妙と思えるこのモデル。油空圧式のハイドロニューマチック・システムともども、「正気の沙汰」とは思えない(?)アイディアをそのまま具現化させたのが、なんと70年ほども昔の1950年代のことだったと聞けば、それもまた驚き以外の何物でもないというもの。
「美しいか?」と問われれば素直には頷けない気もするものの、とりあえず”怖いもの見たさ”(?)の感覚から多くの人に「一度は乗ってみたい!」と思わせる作品であることは間違いなし。もしも自動車に『奇想天外大賞』なるものがあるとすれば、掛け値なしの一等賞をとるであろうことに間違いなしという一台!
第1位:プジョー406クーペ
多くの自動車デザイナーが「自身の思いを表現するためには、それ相応のサイズが必要」と訴え、それを受けるようにモデルチェンジのたびにボディサイズの拡大が続いているというのが現状。
が、そんなフレーズはエクスキューズに過ぎないことを証明するかのように、全長4.6m、全幅1.8mと今となっては”コンパクト”とも呼べるサイズの中で見事に流麗なスタイリングを完成させたのが、1997年にローンチされた406クーペ。
ネーミングからも明らかなように、プジョーの基幹モデルであった406セダンをベースとはしているものの、「全ての外装パーツは専用デザイン」と言われたクーペのスタイリングには、流麗なだけでなく優雅ささえも感じられたもの。
なんでも、著名なカロッツェリアであるピニンファリーナとプジョーの蜜月関係は、この406クーペをもって終焉を迎えることになったとか。
事実上の後継モデルであるクーペ407(”407クーペ”にあらず...)の凋落ぶり(失礼!)を目にすると、確かに「そういうこと」であったのかも知れないと、改めてどこかのメーカーから「小粒でもピリリと美しいモデル」が誕生する日がやって来ることを期待したくなる。
『美しすぎるクルマ・ベスト3』は毎日更新です!
どんなに走りが楽しくても、どんなに乗り心地が良くても、ブサイクなクルマには乗りたくない。そう、デザインはクルマの命。ということで、これまで出会ったクルマの中からもっとも美しいと思ったベスト3を毎日、自動車評論家・業界関係者に選んでいただきます。明日の更新もお楽しみに。
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