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【美しすぎるクルマ・ベスト3(瀬在仁志)】レースカーが街中を走っている!?と少年を驚かせた日産フェアレディZ(240Z-G)

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瀬在仁志さんが選んだ「美しすぎるクルマ」で、第1位い輝いたのは日産フェアレディZ。そのなかでも、Gノーズとオーバーフェンダーが特徴の240Z-Gだ。まるでサーキットから飛び出してきたかのようなスポーティなルックスに、瀨在少年は強い衝撃を受けたという。

TEXT●瀬在仁志(SEZAI Hitoshi)

第1位:日産フェアレディ240Z-G(S30型)

「走りを極めることが特別な存在感につながった」

誰が見ても目を奪われてしまう美しいクルマは、あまた存在すると思う。クルマ好きじゃなくても「オッ」とか「ナンダあれは」となるものも多いだろう。とくに都心の繁華街などでは、排気音に振り向いてみればすぐに名前が浮かばないほどに多彩だ。

池沢先生の「サーキットの狼」やテレビのスーパーカークイズは高校生になっていただけに残念ながらチラ見でしか楽しめなかった(いまと違って、高校生にもなって...と言われる時代でした)。そんな隠れファンにとって、ランボルギーニやフェラーリといったビッグネームか、主役のロータスヨーロッパぐらいしかクルマの名前はアタマに浮かばない。そもそも、最近のその手のクルマの名前は濁音が多い上に、長くて言葉に詰まる。だから、ナンダあれは? で終わってしまう。

かといってよく知る日本のクルマで目を奪われるようなことは、ほとんどなく、輸入車の大胆なデザインには改めて感心する。大量生産が中心の日本のクルマにとっては超えられない壁といえるだろう。そんななかで、いまも目に焼きついて忘れられないクルマがある。

少々(いや、かなり)古い話で恐縮だが、小学校からの帰り道、友だちが住むマンションの駐車場に背が低くてフロント部分が異様に長くて尖っているスポーツカーがあった。そのシルエットは街中でもときたま見ることはあったが、フロントの尖り具合とワイド感が特別際だって見えて、「ナンダあれは!」と、初めてクルマへ走り寄った。

「ジャガーか?」いや「トヨタ2000GTだ!」と口走りながら、興奮して窓越しにへばりついた。興奮のあまり駆け寄る際には工事現場の杭に腕がとられ3針を縫う名誉の負傷もした。そのクルマが日産フェアレディ240Z-Gだった。

1969年に登場した日産フェアレディZ(初代)だが、71年には240Z-Gを追加発売。Gノーズやオーバーフェンダーが特徴だった。(写真:井上誠)

ガラス越しに車内を覗くとセンターコンソール上に3連メーターが埋め込まれ、コーンタイプに見えたステアリングの奥には大きなメーターがふたつ。当時は横長メーターが多いなか、肉厚のインパネのなかに直接埋め込まれているデザインは特別感満載。なにしろ親父のクルマにはないタコメーターがとにかく大きくて、意味はわからなかったけど、これこそがスポーツカーの証なのだ。と、すり込まれた。

240Z-Gのインパネ。ダッシュ中央には3連メーターが備わる。

外観を見回せばオーバーフェンダーが装着され、このままサーキットを走るに違いないと確信した。レーシングカーが街中にある違和感こそがレースファンの子どもには、胸に刺さり倒れそうになった(実際には興奮のあまり腕の怪我を忘れ、ぱっくり開いた傷口を見て腰を抜かした)。

ロングノーズ&ショートデッキのFRスポーツカーらしいプロポーション。約40年後の今も色褪せない美しさだ。(写真:井上誠)

そのときから、クルマに目を奪われる美しさとは、普通のクルマとは異なる特別感だと思っている。速さやレースをターゲットにアップデートされた特別仕様こそが胸にささり、普通とは異なる歪なスタイルこそがパフォーマンスの象徴であり、レースファンにとって心を奪われるクルマなのだ、と。走りを極めたことによる究極の姿が、自分にとってのクルマの美しさ、そしてカッコ良さだ。

昔話が長くなってしまったが、そんな訳で一番はもちろん、日産フェアレディ240Z-G。ボディカラーは小豆色。

第2位:日産チェリークーペ1200X-1R

「果敢に攻めているレースでの姿は今も目に焼き付いている」

2番目は1973年に発売されたオーバーフェンダーつきの日産チェリークーペ1200X-1Rだ。

普通のチェリーはいまで言えば、マーチやノートといった日産のエントリーモデル。FRのサニーに対して、チェリーはFF。当時その駆動方式の違いの意味はあまりわからなかったけれど、小学生時代に乗せてもらった記憶では、開放感のあるサニーに対して、足元が異様に深くて広くて外が見えにくかった。

そんなクルマのスポーツモデルとしてクーペスタイルのX1がデビューしたが、これまた屋根が異様に長くて窓がなく薄暗い室内はより一層強調された。免許取得後乗るチャンスを得たが、やっぱり薄暗さは変らず、斜め後方は見えず、特別感としては歴代トップ。その大胆のスタイリングだけでも際立っていたけど、これにオーバーフェンダーを装着したX-1Rは正にキワモノ。

日産初のFF車として1970年に登場したチェリー。クーペはトランクを備えたセミ・ファストバック風デザインが特徴だった。73年にオーバーフェンダー装着のスポーティグレード、X-1Rが追加された。(写真:増田満)

FRのサニーがレースで全盛期を迎えていたのを追うように、オーバーフェンダーをつけたこのクルマが交ざっているシーンにはワンオフのレーシングカーを見るような特別感があった。きっと当時のFFのレーシングカーなんて、とても乗りにくかったに違いないけれど、果敢に攻めているロングルーフとワイドボディのフォルムは目に焼きついている。

聞くところによると、当時、マシンを選ぶことなく何でも乗ったという星野一義さんのなかでも希有な一台だったとか。今度もしお話を訊けるなら、その乗り味を是非伺っていみたい。黒のオーバーフェンダーが白いボディを引き締めたチェリー、実際に星野さんがドライブしていたと思うとゾクゾクする。

ツーリングレースで活躍したチェリー。写真はレストア済みの車両で、2010年のニスモフェスティバルで星野一義がドライブした。

第3位:三菱ギャランクーペFTO 1600GSR

「なにをしでかすかわからないやんちゃなイメージ」

3番目は三菱のギャランクーペFTO 1600GSR。ボディと同色のオーバーフェンダーを装着し、コンパクトなボディながら、そのワイド感は特別。なにしろ全長はいまのヤリスの3940mmよりも175mmも短い3765mmで、張り出したフェンダーとの組み合わせは、上から見ればどのモデルよりも真四角に近い。

自分が乗っていたランサーGSR譲りの軽快な身のこなしに加えて、このワイドなボディが踏んばり感を高めているかと思うと、いまでも乗りこなしたくなる。

1971年に登場したギャランクーペFTO。ギャランGTOの弟分的存在で、当初は1.4L直4OHVエンジンを搭載し、のちに1.4L直4SOHCエンジンに変更された。写真はオーバーフェンダーなしのGSR。

その特徴的なフォルムから、兄貴分の洗練されたGTOの陰に隠れてしまっているものの、見るからにやんちゃ弟分こそ、なにをしでかすかわからぬイメージがあって魅力的。一般的には人気はなかっただろうけど、秘めたるポテンシャルに心がくすぐられた。

FFのチェリーX-1・RもFRのギャランFTOもなのですが、要するに普通のクルマなのに規格外! なフォルムと走りに胸がときめくんだなぁ。

もしこの3台が古いと言われるならば、次にぱっと浮かぶクルマとしては、マツダ・ユーノスコスモ3ローター、スバル・アルシオーネSVX、ホンダ・アコードエアロデッキ。どれもこの仕事を始めてから、ナンダこれは、と目を奪われ心惹かれたクルマです。でも、やっぱり昭和時代で? 古かったか。ハイ、失礼いたしました~。

【近況報告】
「最近のスマホは写りが良いから大丈夫です」と言われて、ひとりで参加する試乗会でも写真を撮ることが多くなってきた。

巨匠カメラマンと30年近くご一緒させていただいてきたから、そのポイントはしっかりとつかんでいる。前後7:3、俯瞰の止まり(業界用語)など、はお手のモノ。と、思っていたが...いざ撮ってみると、いろんな物が映り込んでいたり、大事な部分に光が当たっていなかったりと、成功率は墜落寸前。気がつけば日が暮れてシャッターチャンスを逃すなど、とても1時間の試乗枠では無理、と、泣きが入る始末。

一瞬でベストショットを決める巨匠のすごさを改めて知るとともに、カメラを買い直そうか、と、すでに逃げ道を考えている今日この頃です。

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