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1997年は世界一美しいプジョー406クーペ&豪華なマイバッハに注目!  第32回東京モーターショー1/2【東京モーターショーに見るカーデザインの軌跡】

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メルセデス・ベンツ・マイバッハ(1997)

東京モーターショーでは毎回テーマが決められている。1997年第32回は「つ・な・ぐ=あなたとくるま」だった。毎回発表されるテーマは抽象的で解釈に困るのだが、この年はヨーロッパ勢と国産メーカーの“ユーザーとクルマを結び付けているソフトウエアの違いが如実に表れたかたちとなり、今回は上手くテーマが当たったと私は感心したのであった。

もっとも美しいクーペを追求したプジョー406クーペ

プジョー406クーペ。写真は初期モデルで、その後インテークが大きくリデザインされた。

BMWやメルセデス・ベンツは自社顧客の求めに応じたセダンでの成熟した質の高さを追求し、日本のメーカーは新しさやEVなどエコ社会に向けた提案性を求めるユーザーの志向に合わせ、多種多様なニッチ車種を提案していたのだ。
ヨーロッパと日本では人々がクルマに求めているソフトウエアが明確に異なっていたのが、1997年頃なのである。
そこで今回は、まずはデザインの質の高さ、美しさで評判になったモデルから解説を進めることにする。

第一番目はプジョー406クーペである。
一足早く1996年に発売したセダンとはデザインが似ているが、全く新規にデザインされ、エクステリアでの共通部品は全く無いというのだから驚いた。
世界一美しいクーペを造るため、デザインはピニンファリーナに依頼し生産も委託したのであった。
確かにヘッドランプもセダンより細長く優美で、リヤコンビネーション・ランプも洗練されていてスマートである。ピニンファリーナの歴史の中でも、最もデザインレベルが高く、個性的で優しいシャープさを特徴とした造形のモデルを、次々と発表していた黄金期の作品だ。

クーペプロポーションながら、後席には大人も十分な居住スペースを確保、また後席シートバックをすべて倒すトランクスルーも採用。エクステリアにセダンとの共用パーツはほとんどない。
セダン、ブレーク(ステーションワゴン)と共通のインパネ周り。

デザイナーはダビデ・アルカンジエリという方だそうだが、とにかく大人のデザインという表現がピッタリで、当時「世界一美しいフォーマルクーペ」という賛美の言葉で評されたようだ。
ボンネット表面を、平らすぎないギリギリまでのフラットさに挑戦しながらニュアンスの有る映り込みを実現した面造形や、サイドの断面カーブの絶妙な丸みとシャープな稜線との対比の見事さは、これぞ“ジドウシャ美”という言葉がピッタリなオリジナルな造形手法ではないだろうか。
クルマにとっての美しさは、周りの景色をどれだけ美しくボディに映し込んでいるかで決まる。特にボディサイド面はプランビューの適度なカーブと縦断面の微妙な相関関係が重要で、当時最高だったのがピニンファリーナで次にオペル、ブルーノ・サッコ氏がデザイン・ダイレクターだったころのメルセデス・ベンツといった順位で美しさを競いカーデザインをけん引していた。

そうした点ではこの1997年頃のヨーロッパ車はカーデザイン史上特筆すべき頂点を極め、同時に日本が先行していたエモーショナルデザインに影響を受け、21世紀への新しいモードに変化し始めたターニングポイントでもあったのだ。
そんなわけで私にとってプジョー406クーペは、こうした時代の最後を飾る美車として20世紀の名車トップ10に入ると思うし、死ぬまでに一度は所有したいクルマなのである。

幸せのデザイン・アイデア集大成とも言えたトヨタ・ファンカーゴ

ヴィッツのコンセプトカー、ファンタイムとともに提案されたファンカーゴ。その後1999年に、同名で量産モデルへと移行する。

冒頭で述べた切り口で次に解説するのは日本勢を代表し、最も美しかったトヨタ・ファンカーゴが相応しい。
コンセプトや使われ方が往年のルノー4(キャトル)に似ているが、ファンカーゴのスタイルはそれまで無かったモノボックス(ボンネットとキャビンがつながっている)的で、完全に乗用車である。
さらに大きく異なるのがFFレイアウトのメリットを最大限に生かした超低床と、シートが上手く床のくぼみに収まり巨大な室内空間が生まれるという、凄いアイデアで偉大な進化を遂げている点だ。

当時のトヨタデザインの中で他の何物とも似ていないキャラクターで、ソフトな角の取れた丸みが魅力的で未来的なデザインは素晴らしかった。私の個人的な意見だが、ベースとなったヴィッツよりデザインレベルは1ランク上なのではないだろうか。
全体にわたって各ウインドウのコーナーの丸さ、ヘッドランプの角アールとボディの角アールなどがきちんと統一されていて、いつものエントリークラスのトヨタデザインとは一味も二味も上回る丁寧なチューニングの跡が見える造形なのだ。

量産では5ドア化、しかしその長いリヤサイドウインドウのイメージは保たれた。
量産モデルのファンカーゴ。荷室は超低床ながら、さらに後席を床下に格納することが可能。

インテリアもデザインの質の高さが感じられる好ましい造形処理が目を引き、特にセンターメーターと共にATセレクターハンドルの考え方が合理的で、他社の追随を許さない徹底したアイデア実現の気合みたいなものが感じられた。
そしてシート形状や素材、カラーも新世代ファミリーの“幸せ感”が見える出来の良さに、私は大いに感心したのであった。

日本のみならず世界でも、この質の高さとアイデアをこの価格で実現できるのはトヨタ以外には当分現れないだろうと、当時考えたことを思い出したのだが、それは2020年になっても変わっていないことに敬意を表したい。私は歴代のトヨタデザインの中で、2000GTと並ぶ名作ではないかと思っている。

日本のデザイン・スタジオから復活したマイバッハの絶妙

東京モーターショーに出品されたマイバッハのベースとなるコンセプトカー、メルセデス・ベンツ・マイバッハ。まさか日本のデザインセンターで開発されたとは。この時点ではフロントグリル、オーナメントなどがメルセデス・ベンツそのものとなっていた。

今回のトリに何を選ぼうかと迷ったが、やはりヨーロッパ人の自動車観が集約された“最高峰のクルマ”マイバッハをご紹介することにした。

マイバッハは1920年代にドイツで造られた超高級車で、第2次大戦後も鉄道や産業エンジンを手掛け、1966年からダイムラー・ベンツ(当時名)の傘下に入った歴史あるエンジンメーカーがかつて製作したクルマなのだ。
ダイムラー・ベンツがこのハイエンド・カーを復活させることを突然この東京モーターショーで初公開し、その趣旨を発表したのだから世界が驚いた。

やはりメルセデス・ベンツは、「顧客の願いは“乗用車の頂点を極める”クルマを造ってほしい」と信じていて、それに応えようと一貫した信念を貫き通していることの証明である。

Sクラスのフロアを補強し使用しているものの、ボディやインテリアはすべてオリジナルで、目に見える共通部品は見当たらない。
ロールス-ロイスのようにクラシカルな中心線を強調したデザインは避け、やはり現代のダイムラー・ベンツらしさを尊重したところに、歴史あるプライドを感じるのである。

あまり知られてはいないが、このマイバッハを手掛けたのは、日本にあるメルセデス・ベンツのアドバンスト・デザインスタジオなのである。
そして携わったデザイナーやクレイモデラー、スタジオ・エンジニアの多くは元マツダに
在籍していた方々なのだ。実は私がマツダ時代に担当したプレッソやユーノス500で活躍してくれた優秀なメンバーがごっそり移籍し頑張った結果、世界に3か所あるダイムラー・ベンツ研究所のコンペティションでのウィナーになり、日本案が選ばれたのであった。

おおらかで威厳に満ちたデザインは、グローバルな価値観での高級車としての絶対条件である“他の何物とも似ていない”“格調の高さが他と比較し勝っている”といった点を完璧に満たしている。だがデザイナーやモデラ―達の実力をよく知っているせいか、評価が厳しくなってしまい恐縮なのだが言いたいことがあるのだ。

豊かさを機能を盛り沢山にするのではなく質感で表現。

最も不満だったのがサイドの面の単調さだ。伸びやかさの表現を重要視したいのは理解できるが、ドア下端のシャドウをもう少し明確に入れたほうが緊張感はプラスされて良かったのではないだろうか。ちょっとしたさじ加減でカタチの緩さが出てしまっていた。

もう一つはボンネットの間延び感である。
同じようにシンプルな曲面で成功しているのが最初に述べたプジョー406で、何もキャラクターラインがないマイバッハは巨大なボンネットの長さを持て余しているように見える。ボンネットのセンターにモールのようなラインを走らせるなど、何かしらの工夫が欲しかった。
インテリアは和のテイストである“簡略の美”が感じられモダンな格調の高さが表現されていて素晴らしかった。しかし2002年に発売になった量産モデルでは重厚なデザインは認められるものの、天然ウッドの各パーツの表面が全て似たような丸みのある形状で、フラットなウッドの美しいメリハリがあったコンセプトモデルの面影が消失していてがっかりした。

1997年の東京モーターショーで何よりうれしかったのは、ショーの初日に開催されるデザイナーズナイトというカーデザイナーの集まるパーティで、かつての仲間達がメルセデス・ベンツ・アドバンストデザインセンターオブジャパンの名刺を持って挨拶してくれたことであった。そして「あれは私たちがやったんですよ」と話してくれた時はひっくり返りそうに驚き、本当に誇らしく思えた。ドイツ本社とは頻繁に行き来しているという忙しさを語る彼らは、マツダ時代よりも何倍も輝いて見えたのであった。

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