【火曜カーデザイン特集】変わりゆくホンダ・シビックの価値観とは ホンダ・シビックを越えていけ!
- 2021/06/29
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CAR STYLING編集部 松永 大演
歴代数えて、これが11代目というその歴史は1972年から。ベーシックカーという立ち位置にあったものが、北米やアジアに育てられ、Cセグメント以上の立ち位置を持つようになったのがシビックだ。さてそのデザインとはどんなものなのだろうか。
より扱いやすく進化
一見すると先代とも大きく変わったように見えないが、そのプロポーションを始め仕上げがもたらす存在感は大きく異なる。先代ではハッチバックのコンパクトさを表現しようとしていたが、新型ではもはや5ドアのベストスタイルを実現させたように見える。
どういうことかというと、一番印象的に見えるのが斜め後ろから。先代ではできるだけ小さくまとめ上げていたものが、若干の長さを印象付けることでラウンディッシュに引きしまったリヤフェンダー面やリヤエンド、ハッチへと流れる面に動感が表現されながら美しいまとまりを見せている。すごいのはハッチゲートのオープニングラインがサイドに回り込むという、広さを最大限重視しながら造形としてもまとまりのあるものとした点だろう。ラウンディッシュなりやピラー造形とテールデッキを持ちながらも直線的なオープニングラインを普通に成立させられるあたりに、造形手腕のすごさを感じる。
この辺りは、斜め前から見ても綺麗な面のままで、オープニングラインもブレずに外側に広がったりするような見え方もしない。全体の印象として、リヤ周りをキュッと引き締めながら、ゲートはガバッと開くというこの驚きが新型シビックのマジックだろう。このあたりは、次期フェアレディZも外に回り込んだ大きく開くゲートを持っているが、それよりもうまくまとめたようにも思う。
力を抜いた自然体で登場
また、フロント周りもボンネット先端を低く張り出させる一連のホンダ顔的スタイルがまとまりだしたように感じられる。スラントさせないグリルも魅力のポイントだ。
と言いつつ、注目するべきはデザインから走り出しているのではない、という点だ。先代からの違いは、フロントピラーを立たせて視界をよくしたり、後席の頭上空間を確保したりということがフォルムからも見られる点。後席の乗降性に対する意識も高く、2人のためではなく4人のための車としての真面目さも好印象だ。
そんなプロポーションを前提にしながらも、全体の印象が先代のマッシブなスタイルから、緩やかで上品な立ち姿に変わっている。言ってみれば先代は、拳を握りしめたボクシングの戦闘スタイル(タイプRのことばかりではない)だったものが、手を握らずに、ふわっと広げて構える太極拳のようなスタイルとなったと言えばいいのだろうか。筋肉質なところをうちに隠した印象だ。
先代は、シビックのキーワードとしてのコンパクト&スポーツの表現から、凝縮されたマッシブなスタイルを表現して見える。対する新型はシビックのキーワードにあるコンパクトという表現を、現代風に再定義したのではないだろうか。この緩くも伸びやかで、キュッとまとまる感じが心地よい。
変わったのはユーザーの生活
そしてインテリアは、多くのインテリアデザイナーが夢見る、全幅に至るエアアウトレットの存在する表現を、ヴェゼル同様に実現してた。ハニカム状のスリットはクラシカルな印象だが、さらに併せてその造形が初代シビックの直線貴重インパネを思い出させてくれるあたりは、ちょっと憎い。センターのシンプルな操作系は現在のホンダのトレンドだが、バランスとしても美しい。
上級すぎるシビックの「これがシビックでいいのか論争」はきっと続くのだろうが、1972年時点でのユーザーと違い、現代では大型テレビを持ち、部屋には全てエアコンを完備する時代。また、瞬時に世界と交信でき、個人としての平均的な住空間は広くなるものの、所有欲は減退し価値観のベクトルは一定の方向に向いていたものから、人それぞれに拡散するというように大きく異なっている。ベーシックとはいえそんな時代の最先端の層に向けたのがシビックであり、求められる車、その価値に大きな違いが生まれてきてもそれは当然のこと。むしろそれこそが、正常進化と言えるのではないだろうか。
お詫び ・"新・カーデザインここだけの話"にて誤った記載がありました
元三菱自動車デザイナーの青木秀敏さんの記事に関して、逝去されているとの誤った情報を掲載してしまいました。青木秀敏様、関係者の方々、読者の方々に謹んでお詫び申し上げます。以後、間違いのないよう万全の体制にて臨ませていただきます。大変失礼いたしました。(編集部・担当/松永大演)
以前に、私が在籍していた三菱自動車のデザイン部門で天才的な描写力のレンダリングを描いていた尊敬する青木秀敏さんが亡くなったと記事に書きましたが、先日ご本人から「私はどっこい生きてます。いい加減なことを書かれては困る。」とのメールが編集部に届きました。
ここに謹んでお詫びいたします。ごめんなさい。関係者から2度にわたり誤報を受け、すっかり落ち込んだ私は彼の功績を後世に何とか残したいとの思いで記事を書きました。偶然のミスが重なったとはいえ、書いた私が悪いのです。しかし、ほんとうにご存命で良かった!今後は人の生き死にの情報は肝に銘じ慎重に書くことといたします。申し訳ありませんでした。(荒川健)
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