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陸上自衛隊:雪国の機動力と輸送力「78式&10式雪上車」、雪面の飛び魚・スノーモービル「軽雪上車」

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一方、軽雪上車とは、いわゆるスノーモービルだ。一般のソレとほぼ同様の装備で、ヤマハの市販車をベースに陸自側の要求に合わせて小改造を施し、後部に大型キャリアを装着してある。キャリアにはスキーや背囊(はいのう、バックパックのこと)、燃料タンク、スコップなどを積載する。二人乗り仕様のロングシートに大型キャリアという車体構成だ。

エンジン始動に関して、旧型はヒモを引っ張るリコイルスターター方式だったが、新型はセルモーターを装備し始動性が向上した。加えてバックギヤも装備されているという。

陸上自衛隊の軽雪上車。いわゆるスノーモービル。主用途は偵察任務など。タンデムシートの後ろに大型キャリアを備える。軽度の物資輸送にも使えるわけだ。

軽雪上車は偵察用途で活躍する。つまり偵察オートバイの雪上版ということだ。雪上車と同じく、主に北海道や東北北部の部隊に配備されている。

軽雪上車とスキーの能力を見たのは、青森県弘前市に置かれた第39普通科連隊を冬に取材した時のことだった。駐屯地近傍の演習場の山の峠をいくつも走破する訓練とスキー競技会である。普通科部隊はスキーを履き、筆者は徒歩で部隊に随伴する。スキーができないからだ。そして要所で先回りしてスキーで登ってくる部隊を撮影することにした。

装備品のクロカンスキー、いわゆる歩くスキーを履いた普通科はとても速かった。89式小銃を背負い、スキーはザッザッと雪を噛んで急斜面を登る。なかには「アキオ」と呼ぶボート型のソリを牽引して走る猛者もいる。この、ソリを意味する言葉・アキオとはフィンランド語だそうだ。これに物資などを載せて人力で牽引する。競技会なのでほぼ空荷だが大型ソリゆえにそれなりの重量がある。重さ以上に、かさばるものを身体に結びつけて引っ張るのは走りにくいはずだが、担当者は淡々と登ってくる。部隊は一定速で確実に前進している。そして徒歩の筆者はあっという間に取り残された。コースをショートカットして先回りするなどという目論見は開始直後に崩れた。

陸上自衛隊第39普通科連隊(青森県弘前市)のスキー訓練・競技会の様子。スキーで峠を登る39連隊、中央の隊員が白い袈裟懸けのロープで引っ張っているのが「アキオ」と呼ばれるボート型のソリ。

シンガリで登ってきた地元出身の広報班長はスキーのベテランで、隊員たちよりも速く登る。ゼェゼェと息を上げスタックしている筆者を抜き去りざま津軽弁で『大丈夫が?』と聞き、振り向きざまニヤリとする。とても悔しい。スキーのできる人を羨ましく思い、自分の脚力体力のなさを痛感した。そして寒さに震え膝を激しく笑わせながら、青森の郷土部隊・39連隊の能力の一端を体感し、彼らをとても頼もしく思った。

結局、最後尾から追い上げてきた安全管理役の軽雪上車にお世話になった。その快速ぶりに驚く。これはまさに雪上バイクだ。全備重量約370㎏の重量級車体を滑る雪面で操る隊員の技量に感銘を受ける。有事の偵察、相手に接近して必要な状況にはこの重車体を倒して盾にし、小銃で応戦するという。これも偵察バイク同様のテクニックと運用だ。

雪国には雪国に対応した機動力や防衛装備が必要で、雪上車やスノーモービルの軽雪上車は充分にその能力を発揮していることを体感し理解したのである。

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