火曜カーデザイン特集:レクサスLF-Zのデザイン レクサスLF-Z ElectrifiedにみるEVレクサスのデザイン またも勝手な思いを巡らせてみた
- 2021/04/06
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CAR STYLING編集部 松永 大演
このLF-Zの写真を見たときに、いくつかの要素によって、この車は実在しないのでは? あるいはエクステリアモデルだけか? と感じているのだが、もはやそんなことは何の問題でもない。コンセプトカーをこの時点で実在させ、走れるものにするのかなどは、それほどの課題ではない時代に入っている。むしろここで示されたコンセプトが2025年までに実現を見据えた走りやデザイン、先進技術であるという点が重要だ。レクサスのコンセプトカーであるLF-Z Electrifiedは2021年3月30日にウエブ上で開催された、LEXUS CONCEPT REVEAL SHOWで発表されたものだ。
新EVプラットフォーム いよいよ稼働か
2019年のEV専用プラットフォームe-TNGAの発表に続き、2020年12月にトヨタ/レクサスにEV専用のプラットフォームによる欧州での展開が発表されていた。発表の中では、RAV4クラスのサイズで、スバルとシェアされるということだったが、そちらのモデルはすでに2021年内の登場を待つ状態となっている模様。採用されたプラットフォームのサイズはフロント&リヤセクションを固定するのみでホイールベース、トレッドに自由度がある。
そしてLF-Zの登場は、ここに示された諸元によって先の可能性の一端を示しているといえる。
RAV4クラスであればホイールベース2700mm+、全長4600mm程度となるだろうが、LF-Zで示されるのは、2950mmという数値。外寸3サイズも4880×1960×1600mmというから、さらに大きなEVだ。
車両重量は2100kgで、90kWhの容量を持つリチウムイオンバッテリーを搭載し、航続距離は600kmと示された。先の発表では固形バッテリーの存在も示され、20年代の半ばに登場というからe-TNGAの余裕をさらに示すものとなるようだ。
このコンセプトカーLF-Zは、e-TNGAをベースに作られたようでその情報を随所にみることができる。また、このモデルは明らかに2019年の東京モーターショーで発表されたコンセプトカー、レクサスLF-30 Electrifiedの進化型だと見受けられる。3サイズは5090×1995×1600mm、ホイールベースは3200mmからLF-Zではやや小さくなり、重量も2400kgから300kg軽くなった。航続距離は当時500kmとされていた点も、100km伸びている。そしてネーミングの由来と推察されるLF-30は2030年の世界に実現させるべきモデルとしてのものだったよだが、その実現も5年早くしている。
LF-ZはLF-30に、現実味を帯びた形で進化させて登場した。唯一違っているのは、LF-30がインホイールモーターの採用を前提としていたが、LF-Zではインボード式となる模様。しかし、それ以外の考え方は、驚くほどにブレていない。パッケージに対する人間中心の考え方、そしてインテリアでもすでに新たなコンセプトとして「Tazuna」(たづな)を掲げていた。つまりLF-30は単なるイメージモデルではなく、真っ正直な次世代ビジョンによって生まれていたということが、改めて理解されることになった。
このパッケージからわかることは、2100kgという重量ながらフロントのオーバーハングが驚くほど短いことだ。タイヤがブリヂストン製のコンセプトモデルで285/40R22という超絶な大きさを持っているにしても、内燃機関をフロントに抱えないことで、より合理的なクラッシャブルゾーンを確保できていることを意味している。また、フロントタイヤ後方からドアのオープニングラインまでの距離も短く、内燃機関とは大きく異なるスペース効率を見ることができる。LF-30ではフロントピラーを大きく前方に伸ばし、ボンネットを不要とするほどのパッケージとしていたが、LF-Zでは歩行者保護、フロントウインドウの軽量化、あるいはフロントセクションへの荷室確保? まで考えたのか、とも思えるような現実的な形となっている。
デザイン上最も大きな変化となるのは、フロントのスピンドル(糸巻き形状)グリルの扱いだ。このスピンドルを全体デザインの中にも取り込んだとのことでもあるが、継続的にフロントの造形にも採用されている。しかし、これまでは空気を取り込むインテークとしての存在だったのが、ここからはフロントフェイスの「面」としてスピンドルをいかに表現するかの挑戦となってきたようだ。
これによって、エクステリアデザインのすべてが反転したように感じる。フロントのスピンドルが空気を取り込む形から、押し出す形に変わった。それを強く感じてしまう。ボディをじっくりと見ていくと、テーマとなるのは2つ。このスピンドルのフェイスと、大きな大きなタイヤだ。
たとえばなのだが……、スピンドルフェイスとタイヤが付いただけのプラットフォームが、水面に突入した時のその水の流れ、ざぶんと飛び込み左右に跳ね、ボンネットを包み込む水流。そして、さらに突進することでタイヤを避けながら、サイドに流れる水流。そんな動きを感じることができるなんて言ったら、間違っているだろうか。
通常、エクステリアデザインは、塊から考えたり、室内の必須なサイズから考えたりしながら、空力性能を重視するものとなるのが現代流。しかしこのLF-Zは、持つべき個性をまず揃え、その要素の押し切る強さから造形が生まれているのでは? と思ったりする。
LF-Zは、EVの新しい世界観を形にしたのではなく、目的を形にしたのではないだろうか。諦めない自由のような、といえばあまりに感傷的だろうか。
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