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三菱自動車の技術戦略2030 ─ ふたつのシナジー ─ 【三菱自動車】PHEV × S-AWC DNAの融合にみる近未来 PR

  • 2021/07/15
  • Motor Fan illustrated編集部
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三菱自動車は、中期経営計画で「PHEV(電動)を軸とした環境技術の強化」と、「S-AWC(駆動と旋回)技術・オフロード性能による安心感の提供」を掲げている。三菱自動車のように、PHEVとS-AWCという2本の柱をシナジーとして強く打ち出している自動車メーカーはない。ふたつのDNAを融合させた先に、三菱自動車はどのようなクルマづくりを目指しているのか。モーターファン・イラストレーテッド vol.178(7月15日発売)では、これらの技術成長のカギを握るふたりのキーパーソンにインタビューを行なった。

TEXT:世良耕太(Kota SERA)

 三菱自動車が得意とする技術はPHEVとS-AWCだ。PHEVは外部電源から充電できるハイブリッド車を意味するのが一般的だ。三菱のPHEVの場合はコンセプトが異なり、ガソリンエンジンの搭載によって航続距離を延ばしたEV(電気自動車)と理解するのが正しい。

 いっぽう、S-AWCは車両運動統合制御システムを指す。2007年のランサーエボリューションXで初適用され、アウトランダー(10年)、アウトランダーPHEV(13年)、エクリプスクロス(17年)、エクリプスクロスPHEV(20年)へと進化を遂げている。前後輪間トルク配分と左右輪間トルクベクタリングに、4輪ブレーキ制御を組み合わせて、ヨーモーメントを制御できるようにしたのがポイントだ。

 三菱はEVに端を発した電動化技術とガソリンエンジンとの組み合わせで始まった4輪制御技術を組み合わせ、独自の価値を生み出している。各技術領域の技術者に考えを訊いた。

澤瀬 薫<Kaoru SAWASE>  三菱自動車工業株式会社 EV・パワートレイン技術開発本部 チーフテクノロジーエンジニア
──三菱自動車は09年に量産EVのi-MiEVを発売しています。初めて乗ったときに、車両運動制御側の立場から感銘を受けたとか。

澤瀬薫 開発期間中に乗りました。アクセル操作に対するトルクのフィーリングや、前後運動のリニアリティが人間の感覚に合っているところに、運動性能の制御面で可能性を感じました。とくに可能性を感じたのは、AYC(アクティブ・ヨー・コントロール)の面です。

──それはなぜ。

澤瀬 電動化したAYCのメリットは、日常域で効果があることです。ほんの少し舵角を切ったところから制御できるし、クルマの運動を大幅に改善できます。ランエボで使っていたメカ式AYCはクラッチを滑らせながら制御していたので、やりたいことがすべてはできていませんでした。エネルギーロスが出るので日常域で使うと燃費が悪くなるし、クラッチを滑らせているので耐久性が持たない。モーターであれば耐久性を気にしなくて済みますし、応答性が高く、制御自由度も制御精度も高い。

──いいことばかりですね。

澤瀬 この領域をしっかりやると弊社の武器になるだろうと思いました。そうこうするうちに、アウトランダーPHEVを(フロントとリヤにモーターを搭載する)ツインモーターでやる話が出て来て、一緒にやることになりました。ツインモーターにすると、理想前後駆動力配分が実現でき、それこそ指1本分の舵角がついたところから制御に入れるようになります。

半田 和功<Kazunori HANDA> 三菱自動車工業株式会社 EV・パワートレイン先行開発部 担当部長
半田和功 私もi-MiEVの試作車に乗ったときに、良く走ると感心したのを覚えています。アクセルを踏んだら踏んだだけ走るし、力強くて軽やかだしで、「これはいける」と確信しました。アウトランダーPHEVを開発することになった際、「先進的なことをやろうとしているのに、プロペラシャフトで繋いだ4WDはないだろう」という話もあって、フロントとリヤにモーターを搭載した4WDにしました。ただ、そうなったときに制御はどうするんだと。そこに現れたのが澤瀬さんです。S-AWCをやるぞ、と。

澤瀬 ツインモーター4WDにすることは決まっていたのですが、S-AWCを成立させるためにはヨーモーメント制御を入れなければなりません。ランエボはAYCデファレンシャルというメカで成立させていましたが、これを搭載するのはコストの面で厳しい。だったらブレーキ制御でヨーモーメントを制御しようと。ところが、反対にあいました。残された時間が限られていたにもかかわらず、開発工数が増えるからです。

半田 三菱自動車としても、プラグインを含めてハイブリッドを量産するのは初めてだったので、まだパワートレーンが固まっていない状況でした。そうした状況で新規の開発アイテムを追加するのは結構大変です。厳しい状況ではあったのですが、最終的にはやりきりました。

澤瀬 この技術が三菱自動車の将来を背負うんですからね。

モーターは「よく走る」ことを知らしめた

2006年10月に発表し、09年6月に量産を開始した電気自動車。当初は法人向けに販売し、10年4月から個人向けの販売を開始した。バッテリー容量は16kWh。最高出力47kW(64ps)のモーターをリヤに搭載。普通充電および急速充電に対応。「何千回も試乗会をやりました。乗る前は怪訝そうな顔をしていたお客様が、笑顔で降りてくる。EVの良さを感じてもらうことができました」(半田)

──EVからPHEVに軸足を移したのも大きな決断だったと思います。どのような背景があったのでしょうか。

半田 i-MiEVに乗っていただいたことで、EVの良さはわかっていただいた。そうなると、もっと遠出したいとか、もっと荷物を載せたいという要望が出てきました。それに、価格が高いし、充電インフラが整ってきても、航続距離に不安があるのもわかりました。i-MiEVよりも大きなクルマでEVの良さを生かそうと考えた際に行き着いたのが、SUVのPHEVでした。EVで走るのを基本に、電池がなくなったらエンジンで発電して走れるシステムです。i-MiEVの良さをSUVで実現するのが、もともとの命題です。

──ツインモーター4WDになったことでS-AWCとの組み合わせが生まれ、新たな価値を生むことになった。以来、PHEV開発サイドとS-AWC開発側はワンチームとして機能している。

半田 ワンチームです。なぜかというと、S-AWCの制御を入れているのがPHEVのコントローラーだからです。モーターをコントロールする機能の一部としてS-AWCの制御を入れている。

澤瀬 綿密に連携をとらないとうまくいきません。ツインモーター4WDを中心にしたS-AWCは、前後の駆動力配分をしっかりやることが一番の肝だからです。ドライバーがアクセルペダルを踏んでどれだけ要求トルクを出しているか。それに対して前と後ろにいかに振り分けるかが大事なので、PHEVのシステムと一心同体。制御はPHEVのコントローラーに入れるのが合理的だし、応答性の面でもいい。AYCの制御もPHEVのコントローラーで行なっていますが、そこは世界的に見てもユニークだと思います。

半田 正直、ランエボならわかりますが、アウトランダーのようなクルマにS-AWCを載せたときにどういう効果が出るのか、最初はよくわかっていませんでした。我々は電動車を成立させるのに精一杯だったところがあります。ただの電動4WDではなく、その一歩先を行くという意味で、S-AWCを載せたのは正解でした。

フロントとリヤにモーターを積むツインモーター

2013年にアウトランダーPHEVを発売。i-MiEVの資産を活用する狙いもあり、i-MiEV用のモーター(出力は前後とも60kW)を前後に搭載したツインモーターにし、SUVの重たい重量に対応。4WDの制御をきっちりやりたいという意向からS-AWCを適用することに。1980年代には理想前後駆動力配分の理論は見つかっており、前後を独立して駆動することで理想に近づけることができるようになった。

──アウトランダーPHEVとパワートレーンは同じなのに、エクリプスクロスPHEVはキャラクターがまるで異なります。格好はSUVなのに、乗るとまるっきりラリーカー。意のままに走るし、楽しくて仕方ない。

澤瀬 ボディやサスペンションをやっているメンバーまで含めて、三菱自動車の現場に脈々と受け継がれているものがあります。クルマを使っているといろいろな天候にあう。雨の日もあれば、雪の日もあり、風の日もある。道もきれいな乾燥舗装路ばかりではなく、荒れているところもあれば、水浸しの道もある。ラリーで培った、極限でクルマをコントロールする技術が、日常ユースでの強みになっていると思います。ツインモーターによって実現する前後の理想駆動力配分は、限界付近での効果は理論的に解明されていましたが、日常領域はあまり効かないとされていました。エクリプスクロスPHEVでS-AWCオンオフでの比較動画を撮影したのですが、S-AWCが日常域でも役立っていることが、操舵のしっかり感や安心感といったフィーリングはもちろん、映像でも確認できます。いまはそれをデータに落とし込もうとしているところです。

ヨーモーメントコントロールを進化させる

ランサー・エボリューションX(2007年)の左右輪間トルクベクタリングはAYCデファレンシャル(左)+ブレーキAYCで行なった。アウトランダーPHEVはブレーキAYCのみで成立させる。右は17年の東京モーターショーに出展したe-EVOLUTION CONCEPTのシステム構成。リヤはギヤ機構で左右をつないだ2モーターとしている。ヨーモーメントを発生させるやり方は「いろいろある」(澤瀬)

──それは楽しみです。

澤瀬 ガソリン車は電子制御カップリングで前後の駆動力配分を行います。そのとき、前後輪の回転拘束を行なうので、それがクルマの安定性に効くのではないかという仮説を立てていました。ところが、アウトランダーPHEVでツインモーター4WDをやり、前後の駆動力配分をやってみると、ステアリング中立付近の締まりであったり、車体の揺れ方であったりに効くことがわかった。回転拘束の効果ではなく、前後駆動力配分自体が日常の乗り味に効くことがわかりました。半田君のおかげで勉強になりました。

半田 パワートレーン側としても勉強になりました。もともとポテンシャルは感じていたのですが、電動車ってこんなに気持ち良く走れるのかと。ICE(内燃機関)のクルマに比べて気持ちいいのは確かですが、どこで速いと感じるのか、どこが滑らかに感じるのか、トルクの出方やGの出し方など、人はどこに差を感じてレスポンスがいいとか、力強いと感じるのか、分析を行なっています。アウトランダーPHEVは誰が乗っても疲れないファミリカーにできましたが、エクリプスクロスPHEVはよりパーソナルな方向に振ることができた。トルクの出し方は本当に自在で、懐の深さを実感しています。

澤瀬 クルマの運動は、アクセルとブレーキで操作する前後運動も、ハンドル操作に対する旋回横運動も、遅れが小さければ小さいほどいいはずです。操作量に対する変化量がリニアなほど、感覚に合って運転しやすくなる。ツインモーターで前後の配分を緻密にコントロールすることで、クルマの運動を人に合わせるベースができました。現在はさらにその先を目指しています。AYCの制御をもっと人の感覚に合わせ込み、もっと舵に対する遅れを小さくして、運転が苦手な人でも直感的にハンドル操作を行なえるようにしたい。しかも、路面を選ばず。

半田 AYCってランエボみたいなクルマだとイメージしやすいのですが、限界領域だけに効く技術ではありません。特別な人のための技術ではなく、どんな人でも安全に気持ち良く走れるようにする技術で、電動車によってそこの裾野を広げていきたいと思っています。

澤瀬 そこはS-AWCが目指している姿でもあります。クルマを運転するすべての人が、運転に対して不安であってほしくない。電動技術とS-AWCが組み合わさることによって、不安が安心に変わり、さらに自信に繋がる。すると、運転が楽しくなるし、事故も減る。そういう方向に導いていきたいと考えています。

4モーター方式のPHEV+S-AWC

2019年の東京モーターショーに出展したMI-TECH CONCEPT。小型・軽量なガスタービンエンジンを発電エンジンに採用したPHEVで、スモールサイズのSUVにメカを凝縮。デュアルモーターAYCを前後にそれぞれ搭載したクアッドモーター4WDとし、車両運動統合制御システムのS-AWCを適用。ブレーキキャリパーも電動化し、4輪の駆動力・制動力を高応答・高精度に制御するコンセプト。

「ただの電動4WDではなく、その一歩先を行くという意味で、S-AWCを載せたのは正解でした」
(左:Kazunari HANDA)

「AYCの制御をもっと人の感覚に合わせ込み、直感的にハンドル操作を行なえるようにしたい」
(右:Kaoru SAWASE)

モーターファン・イラストレーテッド vol.178 特集「よくわかるバッテリー」

CONTENTS
[モーターファンイラストレーテッド vol.178]

【図解特集:よくわかるバッテリー】

[Introduction]
本当に“電気自動車こそエコ”なのか 
現在の発電事情から考えるWtB=ウェル・トゥ・バッテリー

[Basic]
バッテリーシステム 役割とその機能
電気のエキスパートに訊く・バッテリーのギモン解決

[Case Study]駆動用2次電池の現在
01 東芝の独自路線「SCiB」
02 日産 ノートe-POWER
03 ホンダ Honda e
04 マツダ MX-30 EV MODEL
05 三菱 エクリプスクロスPHEV

[Latest News]
海外各社の最新バッテリー戦略

[Column①]
巻線界磁モーターは電動車の主流となるのか

[Future Tech]世界が変わるバッテリーの将来技術
全固体電池というインパクト[東京工業大学]
NEDO革新的2次電池開発[NEDO]
CHAdeMO規格の進化[CHAdeMO]
バッテリーの資源リサイクル

[Column②]
超小型BEVに見るバッテリーパッケージング

[Epilogue]
マージナル電源という概念 畑村耕一博士

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