本拠地に見る「ポルシェクラシックパートナー」の真髄 【年末特別企画】ポルシェ クラシックの世界②ポルシェ クラシックのレストア
- 2017/12/30
- GENROQ編集部
ポルシェセンター青山 世田谷、ポルシェセンター名古屋につづき、ポルシェセンター横浜 青葉も加わるなど、日本においてもネットワークの拡充を見せている「ポルシェクラシックパートナー」。では、本国のポルシェクラシックではどのような作業を行っているのか? 今回特別にその本拠地を訪れ、作業工程を見学することができた。
REPORT◎藤原よしお(Yoshio Fujiwara) PHOTO◎ポルシェジャパン
前回レポートした1964年型ポルシェ911(901)No.57など、ポルシェ・ミュージアムの所蔵車に関するレストアやメンテナンスは基本的に、ミュージアム1階にあるワークスペース(ガラス張りなので外からも見学できる)で行われているのだが、一般の顧客から請け負ったレストア、メンテナンスについては守秘義務の都合もあり、ポルシェ本社からクルマで30分ほど走った先にあるポルシェクラシック専用の施設で行われている。
地下1階、地上2階建ての建物は広大なもので、地下が作業待ちのクルマたちやスペアパーツなどの保管場所。2階が鈑金、塗装スペース、そして3階がエンジンなどメカニカルパートのO/H部門と、8基のリフトをもつアッセンブリー&メンテナンス・スペースとなっていた。
「2014年には7箇所だったクラシックパートナーは、2017年現在世界60箇所に広がっています。ポルシェクラシックではレストア、メンテナンスの他にクラシックパーツの開発、再生産、販売も行っており、約5万2000種類のパーツをストック。さらに年間約300種類のパーツの生産も行っています」
と語るのは、マーケティング部門の責任者であるフィリップ・サイモン。基本的にクラシックの対象となるのは生産から20年が過ぎたモデルで、今や996、986ボクスター、さらにカレラGTもその対象となっているという。
これまで生産されたポルシェのうち約70%が今も生き残っていると言われるように、ポルシェクラシックでは現時点で世界中におよそ65万台のクラシック・ポルシェが存在していると見積もっている。そのためにも幅広い年式の様々なモデルのパーツを充実させることに注力しており、2017年度は356Aのブレーキドラムから、964用のエアバッグセンサー、トランスミッションカバーなどの再生産を手がけたのだそうだ。
その後、サイモンの案内で各フロアでの作業過程を見学したのだが、そこで見たのは、オリジナリティの保持と伝統の技術の継承を施設全体で貫く徹底した姿勢だった。
例えば、エンジン&ギヤボックスのO/Hパート(朝6時30分から2人の職人が作業に取り掛かっている)では、オリジナリティを重視して基本に忠実な作業を行っているのはもちろんのこと、約2年の月日をかけて後任に技術を引き継ぐ努力も行われているという。
また鈑金部門では、数カ所のブースで同時進行的にナロー911のボディレストアが行われていたのだが、興味深かったのは最新の技術やマテリアルも使いながらも、パネルの接合部にパテでなくハンダを盛る昔ながらの工法が採られていたことだ。それゆえ工場には当時の工具はもちろん、356や911、928など全車種のジグが大切に保管、活用されているのである。
その理由は簡単。オリジナルに準じたパーツ、技法で直していれば、数十年後のレストアする際もワークショップマニュアルどおりに問題なく作業ができるからだ。そう、彼らのレストアは“今、綺麗にする”のが目的ではなく、“数十年後の世界に正しい形で継承する”ことが最終目的……ということなのだ。
現在ポルシェクラシックで行われているフルレストアは、市販のロードモデルのみが対象で、1年に10台のペースで仕上げるのが限界。今も世界中から多数のオーダーが入っており、地下のストレージには多数のレストア待ちのクルマが保管されていた。
ポルシェクラシックでは、こうしたレストアやパーツ製作の業務のほかに、各種イベントにも積極的に参加、2017年には928の生誕40周年をニュルブルクリンクのオールドタイマーGPなどで盛大に祝ったほか、英国グッドウッド・リバイバルには2010年から毎年出展を続けている。
ちなみに、今年2018年には964の30周年が控えているとのことで、内外で様々な活動が見られそうな気配である。
《予告》【年末特別企画】ポルシェ クラシックの世界③ポルシェ ミュージアム(12月31日 18:00 頃 公開予定)
【年末特別企画】ポルシェ クラシックの世界①幻の”901”#57のレストア
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