Toyota Corollasport 1.2 turbo impression from editor's room トヨタ・カローラスポーツ:せっかくのMTなんだから燃費に特化しなくともよろしいのでは
- 2019/05/29
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MotorFan編集部 萬澤 龍太
カローラスポーツのMT仕様に試乗してみた。いろいろ気がつくことがあったので思いつくがままに列挙してみよう。
走り出してすぐ、ハンドルがとても軽いのに驚く。極低速での取り回し、例えば駐車時の切り返しや路地裏のクランク路などで効果を発揮するだろう。ステアリングも神経質なところはなく、中立からの操舵開始で急激なヨーが立ち上がって車両姿勢が急変するなどということとは無縁、また進路をとらえやすい性格にもなっているので、安心してクルマを動かすことができた。
一方で閉口したのが操舵感の希薄さ。極端なことを言えばいまハンドルを切っているのかまっすぐ走っているのか、感触だけではとてもつかみにくい。舵が正確なだけに一層惜しく感じる。
この操舵力の異常なまでの軽さについては、力の弱い女性や高齢者が駐車時に往生しないように、という心配りが理由のひとつにあると各社は訴える。うなずけなくもないが、千キログラム単位の重量物を時速何十キロメートルで動かしているという責任は、この操舵の軽さが喪失させてしまってはいないだろうか。
タウンスピードにおいて、運転席の乗り心地は普通である。何かが目立ってダメということはなく、なにががきわめてすばらしいわけでもなく、まことにもって普通。ただし、試乗車のタイヤがダンロップのスポーツマックスであり、225/40R18という低扁平タイヤということに気がつくと、偉大なる普通というように心が動く。強いて言うならばロードノイズが耳に届きやすいか。この銘柄このサイズにしてみれば乗り心地はソフトであり、少しダンピング不足かなと思うフワフワ感も許せてしまう。段差を越えたときのボディの仕立てにも不満はなく、ペダルオフセットも少ない。ぜひ、機会を改めて後席や高速域などを試してみたい。
残念ながら、今回の試乗でどうしても慣れなかったのがパワートレインの仕立てだった。MT仕様ということでCVTをはじめとする自動変速機勢に対して意のままに操れるという期待が大きかっただけに、そうでなかったという落胆は小さくなかった。一言、ギヤ比が高すぎるのである。
カローラ・スポーツ(欧州仕様)
1速:3.727
2速:2.045
3速:1.310
4速:0.971
5速:0.764
6速:0.619
後退:3.333
最終ギヤ:5.045
カローラ・スポーツ(国内仕様)
1速:3.727
2速:2.045
3速:1.310
4速:0.971
5速:0.764
6速:0.619
後退:3.333
最終ギヤ:3.944
ご覧のとおり、各段のギヤ比は国内/欧州では違わない。注目すべきはファイナルレシオである。欧州仕様の5.045に対してに対して国内仕様は3.944としている。このおかげで100km/h巡航時に国内仕様は2000rpm以下に回転数を抑えられるというメリットは得ているものの、市街地での常用回転域でのハンドリングが著しく悪くなってしまっている。
例えば渋滞でノロノロ走り続けているシチュエーションを想像してほしい。10km/h以下の惰性走行している際に前のクルマが少し勢いよく走り出した。そのときあなたは何速ギヤを選択するだろう。クルマが転がっているということもあり、筆者なら2速でクラッチをミートさせようと試みる。しかし国内仕様のカローラスポーツはそうするとスナッチ、しくじるとエンストに見舞われる。
クルマが転がっているときに1速に落とすというのに(運転技術が乏しいのか)どうしてもストレスが生じる。ギヤ鳴りを起こしてしまうのではないかという不安である。しかし再加速に充分満足できるトルクを得るためには、もう一段下のギヤを選ばないといけないというのが試乗を通しての感想だった。
実は試乗当日は別なMT車と並走していて、カローラスポーツが降坂路でブレーキを早々と点灯させているのに違和感を覚えていた。こちらはシフトダウンで充分なエンジンブレーキを得ているのにもかかわらずである。つまり、国内仕様のカローラスポーツはギヤ比が高いので、1段高いギヤで走っていると思えば納得できる。2速ギヤは、3速ギヤに相当するというイメージだ。さすがに1速ギヤ@カローラスポーツを通常の2速ギヤと捉えるにはギヤ比が低すぎたが。
クラッチミートが遠いというのも少々気にはなったが、これは慣れでなんとかなりそう。シフト/セレクト操作やギヤ噛みの手応え、ステップ比には大きな不満がないだけに、より違和感が際立った。せっかくのMT仕様なのに自身の好みと合わなかったのは残念である。
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