〈試乗記:レクサスUX〉新プラットフォームと新パワーユニットがもたらしたもの|SUVレビュー
- 2019/11/10
- ニューモデル速報
タフさを感じさせながら洗練された走りを想起させるデザイン。キビキビしながらも上質ある独自のダライビングテイスト。レクサスで最もコンパクトなクロスオーバーSUVは、同時に最も濃厚にレクサスの在り方を提示している。
REPORT●西川 淳(NISHIKAWA Jun)
PHOTO●神村 聖(KAMIMURA Satoshi)
※本稿は2019年1月発売の「レクサスUXのすべて」に掲載されたものを転載したものです。
「ラグジュアリィとは?」に対するレクサスの回答
日本の高級車というと従来、とかく高性能や高機能、高価な素材の使用を謳うだけのモデルが多かった。ハードへの愛が強過ぎた、とでも言えばいいだろうか。けれどもその結果として、試験の成績は良いのだけれど現場ではさほど戦力にならない、そんな高級車が増えてしまったようにも思う。
だからレクサスがクロスオーバーSUVファミリィに末っ子となるUXを加え、“豊かなライフスタイルを送るきっかけとなるクルマ”が開発コンセプトであると知った時、“そうそう、そこが一番大事なんだ”と我が意を得たものだった。
ライフスタイルを変えてみたいと思って実際に変えられるのは、あくまでもその人自身だろう。クルマ=外身だけが無理やり変わったとしても、中=人が変わらず同じままじゃ、生活なんて変わりようがない。むしろ外見のグレードアップに中身が追い付いていかず、苦しむだけだ。
そうではなく、そのクルマで一日のスタートを切るだけでいつもと違う気分になれたとか、そのクルマの中で思いめぐらせるだけで新しいアイデアが見つかった、とかいうふうに、クルマに乗ることはあくまでも変わるきっかけであって、本質は決してそこにあるのではなく、すべては自分自身にあるということを知ることさえできれば、生活は必ず豊かになっていく。その気づきもまたラグジュアリィカーに求められる役割というものだ。
レクサスはUXの開発できっとそのことに気づいた(と思いたい)。それを確かめるべく、すでにストックホルムで試乗済みであったUXを改めてトーキョーでも乗ってみた。UX200「Fスポーツ」と、UX250h「バージョンL」だ。
この本を手に取るくらいの皆さんならUXにはすでに興味をお持ちのことだろうし、技術的及び機能的な詳細については別項にて懇切丁寧な説明もあるだろうから、ここではおおよその車両解説に留めておく。
レクサスで初めてGA-Cプラットフォームを採用した。といっても、既存モデル(トヨタプリウスや同C-HRなど)に使用されたものとまったく同じというわけでは決してない(そこがモジュラー型プラットフォームを活用したクルマづくりの肝なのだ)。もちろん、アンダーフロアなどまったく手出しできない領域も存在するが、逆にいうと、それ以外ではそれぞれのモデル専用の開発と設計が施されるのだと言っていい。UXの場合にも、車体そのものやサスペンションなどに独自の設計・生産手法を採り入れて、さらなる高剛性化、低重心化を試みた。それらはすべて“走り”を追求するためだ。
そのことは2種類用意されたパワートレーンを見ればよく分かる。200用には2.0ℓ直4直噴高速燃焼エンジン+ダイレクトシフトCVTを搭載。250h用には、200用2.0ℓ直4の低出力バージョンにハイブリッドシステムを加えており、いずれも新開発である。
熟成の進んだプラットフォームに改良を加え、そこに最新のパワートレーンを積み込むことで、妥協なきドライブフィールを実現しようとしたと言っていい。今回の取材車両はいずれもFF(前輪駆動)だったが、250hにはモーター駆動のE-Four(4WD)の用意もある。
日本で実物を見た第一印象は、パーソナルユースとしてとてもいい大きさだな、というものだった。SUVらしい存在の強さをしっかりとアピールしつつ、いかにも軽快に走り出しそうな雰囲気をたたえている。大き過ぎず、そうかと言って、小さ過ぎず。頃合いのサイズに見える点が好ましい。
いいプロポーションだとも思う。真横から見るとよく分かるけれど、キャビン(サイドウインドウ)とボディ(横腹)、前後のオーバーハング、骨太なエンドピラーの角度、そして個性的なキャラクターラインが、個別に何か極端であることをアピールするのではなく、全体として前方の空気を切って進んでいるようにまとめられている。このサイズの中でこれだけの表現をすることは、きっと難しい挑戦だったに違いない。個人的にはリヤからの眺め、特に横一線のテールランプが好みだ。走り去って行くUXは文句なしにユニークで、格好いい。
インテリアもいい。以前から国産車のインテリアについては、ディテールごとにデザイナーを変えているんじゃないかと思ってしまうほど統一感が無いと再三に渡り指摘してきた。ひとつひとつのパーツを見れば、いい素材を使っていたり、優れたデザインテーマがあったりするのに、インテリア全体として見た場合、単なる寄せ集めのごった煮という内装が多かったのだ。
UXのインテリアにはそれがない。どこかが悪目立ちすることもなく、かといって貧相なシンプルさとも無縁だ。隅々までデザイナーの意思が行き届いており、調和と対比のバランスに優れていると思う。こういうインテリアデザインであれば、例えとあるパーツに安価な素材を使っていたとしても(UXの場合、そういうパーツもまた限定されてはいるが)、安心して見ていられる。心地良い統一感の達成こそ、ラグジュアリィ・デザインの第一歩なのだった。
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