[毎週月曜日朝更新企画]自動車業界ウラ分析「スバルの次世代パワートレーンはどうなるのか? トヨタ、マツダ、スバルでアイシンを使う?」 電動化を見据えてスバルのリニアトロニックCVTはどうなる? 水平対向を縦置きするスバル、トヨタ、マツダのFR用縦置きAT=アイシン製を3社で使う?
- 2020/07/06
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牧野 茂雄
スバルの次世代パワートレーンはどうなるのか……電動化シフトという動きはすでに見られる。7年前に同社の技術系役員は「電動モーターをうまく使いこなす将来」への見通しを語っていた。同時に「スバルは直4エンジンはやらない」と明言していた。しかし、次世代パワートレーンの姿がなかなか見えてこない。水平対向エンジンを縦置き搭載するため、過去のスバルはつねにトランスミッション(変速機)開発は自前だった。トヨタとFR2座の86/BRZを共同開発するに当たってはトヨタグループから部品の提供を受けたが……ん、縦置きトランスミッション? マツダがFRを開発しているではないか! トヨタ、スバル、マツダの3社がユニットを共有してもおかしくない。いや、その可能性は十分にある……以下は筆者の推測である。
TEXT◎牧野茂雄(MAKINO Shigeo)
スバルは北米向けに「スバル版THS II」とも呼べるHEV(ハイブリッド車)用トランスミッション搭載モデル「クロスバック」を設定している。同車はスバル初のPHEV(プラグインハイブリッド車)であり、外部からの充電が可能だ。トヨタからTHS(トヨタ・ハイブリッド・システム)IIのコンポーネンツであるモーター、パワーコントロールユニット、2次電池(バッテリー)、ハイブリッド用ECU、充電器の供給を受け、トヨタとは違った手法でPHEVを完成させた。横置きTHS IIユニットを分解し、縦置きAWD (全輪駆動)ユニットに組み替えた。しかも全長と前軸出力位置およびエンジン取り付け部分がリニアトロニックCVTとまったく同じ寸法に作られている。モーターが加わる分だけ重量は増すが、車両搭載要件はほかのスバルの変速機と互換性がある。
興味深いのは、このHEVユニットをどう設計しても水平対向エンジンの出力軸とトランスミッション側の入力軸が合わないことを逆手に取り、この位置に歯数35:37という微妙な減速ギヤを組み込んだ点である。ここでの減速比1.057は、後段のトランスファー側にあるセカンダリー・リダクション・ドライブ・ギヤの増速比0.780との間でバランスを取ってた。HEVユニット全体を真横から見ると、スバル車に共通する前軸デフと後輪への出力軸との位置関係を動かさずにTHS IIのモーター/発電機と動力分配のための遊星歯車セットをうまくレイアウトしてることがわかる。
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なぜ、このHEVユニットを2019年に北米市場に投入したのか。その理由はスバルの米国でのポジションにある。2017年は65万台、2018年は68万台、そして2019年は70万台のスバル車が米国で売れた。、メーカー別でいまや全米第8位。マニアが支持するニッチ市場向けのメーカーではなく、社会的責任が出てきた。PHEVは全米の約4分の1州が導入するZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)規制に対応するために必須である。しかし、独力で開発・製造するにはコストと時間がかかる。だから盟友トヨタの力を借りたのだ。
スバルはトヨタと株を持ち合う仲だ。以前はトヨタが一方的にスバルに出資していたが、現在はトヨタがスバルに20%出資しスバルもトヨタ株を約0.4%持つ。この日系メーカー同士での株保ち合いは、古くはいすゞとスズキなどに見られたが、近年のエポックはトヨタが初めて株も保ち合いを打診した相手がマツダだったということだ。トヨタはマツダに5.1%を出資しマツダはトヨタ株の約0.3%持つ。最近、この関係にスズキも加わった。
世界的には株保ち合いは「ナンセンス」と呼ばれる。1%以下の出資など「意味がない」とも言われる。筆者は、ここに欧米流とは一線を画した日本流の「精神的つながり」とでも言うべき経営感覚を感じる。トヨタがスバルのPHEV開発に協力した背景は20%という出資比率である。しかし、見方を変えれば「86のお礼」でもある。おそらく、トヨタ、マツダ、スバル、スズキは、ゆるい資本関係のままで互いに自社のビジネを補完し合う関係を続けるだろう。
だとすれば、トランスミッションも「相乗り」の対象になって不思議はない。2週間前、筆者は本Motofan jpで「マツダのFR(フロントエンジン・リヤドライブ)プラットフォームをトヨタが利用する可能性」について述べた。すべて状況証拠からの推測であり、マツダとトヨタは何も発表していない。しかし、状況を分析すると「相乗りするほうが得策」という結論に至った。そしてプラットフォーム共有を前提にすると、当然、トランスミッション共有もあり得る。
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