【輸入車ベスト3(瀨在仁志編)】第1位:ジャガーXKR-S/第2位:メルセデス・ベンツC63 AMG /第3位:フォルクスワーゲンup! GTI 【人生最高の輸入車を選ぶ】国産派が夢に描いた外車、それがジャガーXKR-Sだ(瀨在仁志)
- 2020/09/30
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瀨在 仁志
これまでの人生において、所有したり試乗したりした輸入車のなかからベスト3を業界人に選んでいただく本企画。「国産派」を自称する瀨在仁志さんにとって、特別な存在であるという輸入車。そのなかから選出されたベスト輸入車は、5リットルのスーパーチャージドエンジンを搭載したジャガーのスポーティクーペだ。
TEXT●瀨在仁志(SEZAI Hitoshi)
この仕事をしていなかったら間違いなく、輸入車に触れる機会はごく限られていたに違いない。免許をとったときの思いで言えば、遠い国からきた『外車』。サイズも使い勝手も、ハンドル位置だって異なっていて、特別なもの。本を見て日本車にはない、デザインやスペックにうっとりするだけで、とても馴染めるモノではなかったかもしれない。
もちろん最近では価格差が小さくなったきたことや、販路が充実したことでグッと身近になったとはいえ、一度染みついた『外車』感覚はなかなか抜けない。普通に評価するだけなら冷静に見ることはできるけど『人生最高の輸入車』になると、国産派の自分にとっては、大きな期待値や憧れが加わってしまう。ひと言で言えば、人生最高の輸入車は自分にとっては特別な存在。日本車では味わえない特別感こそがポイントだ。
第3位:フォルクスワーゲンup! GTI(2018年-)
「贅肉をそぎ落としたアスリートのような無駄のない動き」
そのなかで、今回は第3位にフォルクスワーゲンup! GTIを選ぶ。このクルマの特別感は日本車では得ることのできない正確なFFハンドリングだ。残念ながら限定販売ということであまり目にすることはないが、軽量コンパクトな3ドアボディと、1L3気筒ターボエンジンの組み合わせは、贅肉をそぎ落としたアスリートのように動きに無駄がない。
ステアリングを切り込んでいけばピタリとノーズはラインに乗ってくるし、一体感のあるボディはヒョコッとリアを持ち上げながらもGを逃がすことはない。決して足元がタフとは言えないものの、しっかりとストロークさせることでバランス良くボディを支えてくれる。落ち着いた姿勢からの身軽さも接地感の良さを表していてラインの修正もたやすい。
組み合わされる6MTも、不規則サウンドながらも軽快に吹けあげるエンジンパワーをしっかりとつなぎ止めて、フロントを蹴り上げる。ボディ、サス、エンジンが三位一体となって走る様は、どんな国産車でも敵わない。
第2位:メルセデス・ベンツC63 AMG(2007年-/W204型)
「大排気量NAエンジンらしい打ち出の小槌のような力強さとレスポンス」
第2位は、M156ユニットを積むW204型のAMG C63。実際には6.2Lながら、そのネーミングが表しているとおり、大排気量V8ユニットであることはもちろん、それをAMGの手によってパワーをとことん追求。ライバルモデルや、現行モデルのように、普通だったらターボでパワーを絞り出す方が手っ取り早いが、AMGでは手間をかけて精緻な大排気量スポーツユニットを作り上げた。
同モデルのなかでもアップデートを重ねることで当初の457psから最終モデルでは50psアップの507psまでパワーを引き上げ、その後、AMG SLSではドライサンプ化や120の部品を変更することで、571psのM159へと進化させるなど、作り込みには執念を感じさせるほど。
結果、大排気量でありながら自然吸気エンジンならではのレスポンスと伸びの良さによって、Cクラスのボディを驚くほど大胆に走らせてくれた。なかでもサーキットにおいては、多少のミスなど物ともせずに大トルクがカバーしてくれるいっぽう、各ギアをしっかりと使い切れば天井知らずの加速感を味わえる。現行のターボエンジンもこのフィールを継承しているものの、ザクザクとパワーを生み出す、打ち出の小槌のような力強さとレスポンスは自然吸気でしか味わえない。
ABSや7ATのプログラミングもAMGが独自開発し、減速時のコントロールもクルマ任せでまったく問題なし。ブレーキングポイントに集中していれば、旋回しながらの減速やシフトダウンも容易に行なってくれるなど、パワフルユニットのサポートも万全。
大排気量ユニットそのものは探せばほかにも出てくるだろうが、パワーフィールや電子デバイスを初めとする緻密な作り込みはなかなかお目にかかれない。日本車でもレクサスRCFが5LNAで頑張ってはいるけれど、当時のC63の獰猛さを考えると育ちの違いは明らかだ。
第1位;ジャガーXKR-S(2011年-)
「日本車には決して真似できない獰猛さとしとやかさの絶妙バランス」
最高モデルとして選んだのは、この欧州の獰猛さを、しとやかな走りにぶち込んでしまった、ジャガーXKR-S。ベースモデルの乗り味はストローク感たっぷりでありながらも決して接地感を失わないことから、乗り心地の良さと安定感を高次元で両立。足元が大きく動いても、オールアルミのボディは何事もなかったかのように力を受け流してフラット感を常に保ってくれている。サスペンションがボディを支え、路面からのショックを吸収する働きであることを、しっかりと教えてくれる貴重な存在だった。
そこに、V8 5Lスーパーチャージャーユニットを積んで走りの可能性を追求した、XKRが投入され、さらに550psまでパワーアップしたXKR-Sがデビュー。おちょぼ口のフロント回りには空力パーツやダクトが加えられ、リアにはウイングを装備することで、しとやかさは一変。パワーフィールもひと踏みするたびにバフッという排気音とともに路面を蹴り上げ、乗り味は俄然筋肉質なものとなった。
この激変ぶりこそが日本車には決してまねできないものだし、XKR-Sでは演出こそ派手に違いないが、基本的な乗り心地の良さをしっかりとキープしている点も見逃せない。確かに骨太感はあるものの、足元の動きに無駄はなく接地性はいささかも失われていない。その証拠にタイトなワインディングや、荒れた路面を走行しても依然ボディはフラット感を保ち、パワーをしっかりと伝えてくれるから、自然とペースもアップ。
シャシー性能の良さをしっかりとグレードアップして、軽快ともいえるハンドリングと速さを両立させた点に驚かされた。見た目も演出も獰猛だが、しとやかな乗り味は絶妙なバランスをもって進化させた。攻めるほどに基本性能の高さと、シャシーの良さを思い知ることとなり、このクルマだけは無理を承知で所有してみたかった。国産派が夢に描いた『外車』に出会えた、そんな貴重な一台だ。
近況報告
テスト車(広報車)に乗って帰った後の心配は保管と洗車。以前だったらなにも考えずに載せていたパレットも、最近では車検証とにらめっこの上で入庫。普通のHBのようでじつは規格外だったり、先代が入ったから大丈夫と思っても頭がはみ出したりと、サイズの変化や大型化を実感。近所のスタンドは皆セルフになって、イラッシャイマセー! と元気良く飛び出してきたクルマ好きのお兄ちゃんもいなくなって、洗車も頼めない。クルマも、それを取り巻く環境も大きく変わっていることをひしひしと感じながら、洗車場探しをしている今日この頃です。
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