"S"の称号は伊達ではない。滑らかな身のこなしは、さすがフラッグシップ【メルセデス・べンツGLS試乗】
- 2020/10/21
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安藤 眞
メルセデス・ベンツSUV軍団の中で大将に位置づけられるのがGLSクラスだ。全長は5mを優に上回り、全幅も2mを超える巨艦の存在感は圧倒的。日本のSUVでは決して味わうことのできないラグジュアリーの世界がここにはある。
TEXT●安藤眞(ANDO Makoto) PHOTO●MotorFan.jp
大人7名を飲み込む全長5.2mのラグジュアリーSUV
“A”から“S”まで5つのカテゴリーを網羅するGLシリーズの頂点に君臨するのが、GLSクラス。19年にフルモデルチェンジされたX167型が、今年の3月、日本市場にもやってきた。
日本に上陸したのは、3.0L直列6気筒ターボディーゼルエンジンを搭載するGLS 400d 4MATICと、4.0LV型8気筒ガソリンツインターボエンジンを搭載するGLS 580 4MATIC スポーツの2種類。今回、試乗させていただいたのは、前者にオプションの“AMGライン”が装着されたクルマだ。
そびえ立つようなボディは、全長5220mm×全幅2030mm×全高1820mmという巨体。これは乗り降りする段階から手強そうだ。
と思ったのだが、サイドシル高は約500mmと、一般的なSUVより50mm高い程度。身長181cmの僕ならば、サイドステップの助けがなくても乗り降りできる。ただしサイドシル幅が210mmもあり、その外側にサイドステップがはみ出しているので、降車時にはむしろステップが邪魔に感じる。
ちなみにサスペンションはエアスプリング式なので、車高調整が可能。必要なら乗降時には車高を30mm下げることができる。
内装のレイアウトやデザインは、1セグメント下のGLEと共通。トリムのカラーが異なるため、GLSのほうが上級感はあるが、飛び抜けて特別な感じはしない。GLEで同じエンジンを積む400d 4MATIC スポーツの価格差は140万円弱なので、それほど差別性を出せないのはやむないところかも知れないが、“S”を神格化してしまう60年代生まれには、ちょっと寂しい感もある。
2列目席に座ってみると、ヒザの前には140mmぐらいの余裕がある(シートスライドはいちばん前)。ボディサイズからすると驚くような広さはないが、これ以上広くても前席との会話がしにくくなるだけだろう。
3列目への乗り込みは、2列目のウォークイン機構を使用することになる。なんとこれも電動式で、高いクルマは違うなぁ、と感心するより、動作速度が遅いのが気になった。特に戻す際にはスイッチを押し続ける必要があり、3列目に座ってしまうと手が届かない。安全性からは好ましいけれど、手動式でも良かったのではないか。
3列目の着座空間は僕にはギリギリ。2列目をいちばん前に出しても、ヒザ前の余裕はゼロで、頭上は手のひらの厚いところ1枚分(約40mm)。ヒール段差がそこそこあるので“体育座り”にはならないとはいえ、背もたれのサイズも小さく、快適に座れる身長は165cmぐらいまでといった感じだ。
頼もしい3.0L直6ディーゼルターボ。必要十分なトルクで巨体を引っ張る
では、走ってみたらどうか。
駐車場を出て、西湘バイパスの導入路で一時停止してから発進。「一時停止しないほうが安全ではないのか?」と思うような環境なのだが、むしろ発進のトルク応答をチェックするには良いシチュエーションだ。
GLS400dの心臓であるOM656型エンジンは、そんな場面でも遅れることなく強大なトルクを発生する。ターボチャージャーは大小2個をリレーして使用する2ステージ方式で、低負荷域で使う小ターボは可変ジオメトリーにするなど、考え得るターボラグ対策はすべて搭載。2570kgのボディに3.0Lでは無過給域のトルクがどうか? と心配だったが、まったくの杞憂。どんな速度でもモリモリとトルクが湧いてくる。
コンフォートモードの乗り心地はゆったりとソフトで、まるで船に乗っているかのよう。ベンツの“S”らしい優雅な乗り心地だ。西湘バイパスのジョイント通過ではバウンシングの揺れが残りがちだが、クルマのイメージとしては違和感はない。スポーツモードに入れれば収まりは良くなるものの、少し硬さが出て「らしさ」が薄れる。
ならば操安性はおっとりかと言うと、決してそんなことはない。「軽快」とは言えないものの、車高や車重を感じさせない操舵応答性や滑らかな身のこなしは、さすがベンツといった趣だ。
もっとも元気な運転をするほどに、まわりに与える威圧感が増してくるから、やはり優雅に走ったほうが似合う。GLでも“S”はSらしく乗りたい。
メルセデス・ベンツGLS 400d 4MATIC
※[ ]はAMGライン装着車
■ボディサイズ
全長×全幅×全高:5210×1955×1825mm[5220×2030×1825mm]
ホイールベース:3135mm
車両重量:2540kg[2570kg]
乗車定員:7名
最小回転半径:5.8m
燃料タンク容量:90L(軽油)
■エンジン
型式:656
形式:水冷直列6気筒DOHCディーゼルターボ
排気量:2924cc
ボア×ストローク:82.0×92.3mm
圧縮比:15.5
最高出力:243kW(330ps)/3600-4200rpm
最大トルク:700Nm/1200-3200rpm
燃料供給方式:電子制御燃料直接噴射(コモンレール)
■駆動系
トランスミッション:9速AT
駆動方式:四輪駆動
■シャシー系
ブレーキ:Fベンチレーテッドディスク・Rベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:275/50R20[F275/45R21・R315/40R21]
■燃費
WLTCモード:10.9km/L
市街地モード:8.0km/L
郊外モード:10.5km/L
高速道路モード:13.3km/L
■価格
1263万円[1313万5000円]
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