住友ゴム工業の「路面の滑りやすさ」と「タイヤにかかる荷重」を検知するコア技術
自動運転時代に向けてタイヤができること
- 2017/08/29
- Motor Fan illustrated編集部
タイヤだからこそわかる情報、タイヤそのものの状態を把握することで、より安全に安心してクルマを運転できる。住友ゴム工業は車輪速信号の解析技術をさらに進化、融合させて高性能化させた独自の技術を開発している。
TEXT:野﨑博史(Motor Fan illustrated)
住友ゴム工業は、自動運転化を見据えてタイヤ開発から得たタイヤ特性に関するさまざまな知見と、すでに実用化しているタイヤ空気圧低下警報装置のDWS(Deflation Warning System)を進化、融合させて、路面や車両の状態を検知する独自技術を開発していると発表。「SENSING CORE」と称されるその技術のデモンストレーションをメディアに公開した。このSENSING CORE技術は、タイヤの回転により発生する車輪速信号を解析、統計処理することで、タイヤの空気圧低下のみならず、「路面の滑りやすさ」と「タイヤにかかる荷重」を検知するというもの。追加のセンサーを必要とせず、車輪速、ヨーレート、操舵角、加速度などすでにクルマに実装されているセンサーを活用し、独自のアルゴリズムに基づいたソフトウェアで推定、検知するのが特徴だ。
今回、このSENSING COREを搭載した車両を実際に走行させ、「路面の滑りやすさ」と「タイヤにかかる荷重」を検知する様子をモニタリングするデモンストレーションが行なわれた。結論から言うと路面状況やタイヤの情報をリアルタイムに画面で確認できたのが印象的で、このふたつの検知はすでに実用化の領域に達しているというレベルだった。
開発担当のオートモーティブシステム事業部 DWSビジネスチームの川崎裕章氏の説明によると、まず「路面の滑りやすさ」を検知するには、同じ路面でもタイヤによって滑りやすさが異なるため、装着されるタイヤに対する路面の滑りやすさを検知する必要がある。そのため①アスファルト路面のような高μ路を自動で識別 ②高μ路でのタイヤ特性を把握 ③そのタイヤ特性を基準に路面の滑りやすさを指標化 ④タイヤ特性を絶えず更新することでタイヤの経時変化に対応するといった4段階の検知ステップにて判別するとのこと。
高μ路でのタイヤ特性を基準に、車体速度とタイヤの回転速度の差からスリップ率をリアルタイムに算出し、滑りやすさを指標化。スリップ率と力の関係(傾き)が路面の滑りやすさによって異なる。「タイヤの回転信号にはさまざまなノイズが含まれており、ユニフォミティ(タイヤの均一性)成分を見て不必要なノイズをキャンセルアウトして、いかに傾きを精度良いものにするかが難しいポイントだった」と同氏。例えば、目視ではわかりにくい夜間の凍結路面状況の検知やハイドロプレーニング現象が起こる前に、グリップ力の低下を検知して警告としてドライバーへ伝達する。また、さまざまな搭載車両からビッグデータとして収集・分析し、他車に対して路面情報を配信するサービスに役立てる。最終的には車両を制御することも可能となるということだ。
一方、タイヤにかかる荷重の検知は「一見、自動運転に有益な検知ではないと思われるかもしれない。しかし、クルマの挙動を最適化させ、安全性向上に繋げるために欠かせない要素です」と川崎氏は強調する。その検知方法を簡単に説明すると、路面に接地している時点と、接地していない時点でのタイヤ半径の差異から生じるタイヤの振動を解析。その周波数特性の変化を前後左右のタイヤで比較することで荷重配分を推定し、走行時の荷重の変化を検知する。車両総重量のみならず、各輪の荷重を検知できるのがポイントだ。この方法によってクルマの荷重を検知できれば、例えばブレーキの圧力を4輪それぞれで最適化したり、高速道路を走行する際のレーンキープやレーンチェンジのときに微小なブレーキをかけ、車両姿勢を安定させる応用が考えられる。
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