東芝:角度を直接検出する高精度ジャイロセンサーの小型モジュールを開発
- 2020/01/24
- Motor Fan illustrated編集部

東芝は、動作に伴う物体の向きの変化を高精度に検出する角度直接検出型のジャイロセンサーとして、大型の計測制御装置等を必要としない小型モジュールの開発に世界で初めて成功した。
本モジュールにより、ロボット・無人搬送車・ドローン等、従来は難しかった小型機器への搭載・実証実験が可能となる。また、機器が回転する角速度(角度の時間変化)を計測し、それを演算して角度を求める一般的なジャイロセンサーと異なり、機器が回転する角度を直接計測することで高精度と高速応答の両立を可能とした。
物体の向きを計測するジャイロセンサーは、大型で高性能なものは航空機や飛翔体、小型で低価格なものはスマートフォン等の民生機器に広く利用されている。今後は、倉庫や工場内での作業者や無人搬送機の位置計測、ドローンの精密姿勢制御、ロボットやモビリティの自動運転等の幅広い分野への応用が期待されているが、こうした分野への適用には、小型で、高精度かつ高速応答性が求められる。一方で、従来のジャイロセンサーは物体の角度を直接測定せず角速度からの演算処理によって求める方式のため、応答速度や精度において課題があり、小型で高精度、高速応答可能な新たなジャイロセンサーの開発が必要だった。

RIGは地球の自転の角度を計測できるフーコーの振り子と同じ物理的原理に基づき、物体の角度を直接検出することができる。RIG動作のためには、検出に用いる振動子を完全に対称な構造にすることが必須条件だが、製造時の加工誤差のため、非対称性が発生することが課題となっていた。そこで東芝は、独自技術の抵抗型可変ダンパーの導入等でこの非対称性を補正し、完全な対称状態を実現した。また、同社の振動子は独自のドーナツマス構造(ドーナツ型の錘を採用)のため、温度が変化しても縦横の振動特性が等しく変化し、対称性が保たれることから、温度変化による感度への影響が極めて小さくなる(注1)。今回開発したモジュールは、RIG特有の角度直接検出を実現しつつ、精度(注2)とドリフト(注3)のいずれの指標でも、同じMEMS技術を用いた民生機器用のジャイロセンサー以上の性能であることを確認できており、今後、更なる性能の改善を見込んでいる。


東芝は、今回開発したジャイロセンサーの精度および応答性をさらに改善し、2021年度以降を目処に、サンプル出荷が可能となるレベルまで技術完成度を高めることを目指す。その一方で、このジャイロセンサーを搭載した慣性計測装置(Inertial Measurement Unit:IMU)(注4)の開発を進める。
今回開発した技術にはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発/研究開発項目[3] 高度なIoT 社会を実現する横断的技術開発」助成事業の成果が含まれている。また、本開発に当たっては、デバイス&システム・プラットフォーム開発センターの協力を得た。
(注1)共振の非対称性Δfの温度ドリフトが1℃あたり1000万分の1(100ppb/K)以下。発表段階での世界最高値。
(注2)精度の指標となるARW(Angular Random Walk)=0.6deg/√Hz。
(注3)ドリフトの指標となるBI(Bias Instability)=4.3deg/h。
(注4)三次元空間における角速度と加速度を測定する装置を指し、搭載した機器の姿勢を感知する計測装置のこと。
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