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シトロエンC3に乗って東京からスーパーカミオカンデまでいく 新型C3。シトロエンらしさ健在。ロングドライブで真価を発揮

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スーパーカミオカンデは、富山から岐阜に抜ける飛騨山中にある。国道を一本逸れると右は狭くなる。

クルマの真価は長距離を走ることでわかる……部分もある。モーターファンVol.9の企画で、ニューモデルをロングドライブに連れ出した。新型シトロエンC3で、往復約1200kmのロングドライブに出かけた。東京〜金沢〜飛騨山中にあるスーパーカミオカンデ〜東京。先代(つまり初代)シトロエンC4のオーナーだったモーターファン編集長がレポートする。

存在感は十分だが、実際のボディサイズ、全長×全幅×全高:3995×1750×1495mmは、やはりコンパクト。

今回、僕がロングドライブの相棒にC3を選んだのは、以前、C4(初代前期型)を所有していた経験から、最新シトロエンを試してみたかったからだ。2006年型C4は、1.6ℓ直4自然吸気エンジンと悪名高かったAL4という4速ATを組み合わせたパワートレインで、お世辞にも速くも燃費の良いクルマでもなかった。

しかし、フランス車らしいデザインと乗り心地、それを支えるシートの出来の良さが魅力だった。高速道路で100km/h前後で走っているとき、すーっと滑るように走る“ゾーン”があって、それがとても心地よかったのだ。最新のパワートレインを持つC3も、同じ味を持っているか。それがテーマのひとつだ。旅を共にしたもう1台は、MINI初のPHEVであるクーパーS E クロスオーバーALL4。向かった先は、岐阜県飛騨市神岡町にあるスーパーカミオカンデである。

カミオカンデは、ご存じの通りニュートリノの研究でノーベル賞を受賞した小柴昌俊東大名誉教授が監修した巨大な観測装置で、その後継であるスーパーカミオカンデは、神岡鉱山内の地下1000mに5万トンの純水を湛えた直径39.3m、高さ41.4mの円筒型タンクとその壁面に設置された約1万3000本の光電子倍増管から構成された巨大施設なのだ。なぜ、スーパーカミオカンデなのか、といえば、人間の技術の粋が詰まった巨大施設が見たかったという単純な理由から。それが飛騨の山奥にあるというのだから、行ってみたくなるわけだ。

午前中の会議を終えて東新宿を出たのは午後1時。一泊二日のロングドライブの出発時間としては遅すぎるが、とにかく、宿泊地である金沢を目指す。金沢工業大学工学部機械系機械工学科の長沼要教授にMINIをテストしてもらうためだ(長沼教授によるMINI クーパーS E クロスオーバーALL4のインプレッションは、MotorFan Vol.9に掲載)。C3は僕が、MINIはYカメラマンがドライブする。

高速道路での燃費は、16〜17km/ℓだった。省燃費走行に徹したわけではなく、周囲の流れに乗って走っての結果である。
なんの変哲もない(オシャレだけど)シートなのだが、一度座ったら、ベストポジションを探してお尻の位置を動かすことなく座っていられる。長距離走っても、腰が痛くならなかった。
PSAのダウンサイジングエンジン、PureTECH。3気筒直噴ターボは、スムーズで3気筒のネガは感じない。気持ちのよいエンジンだ。

C3は、シトロエンらしい個性的なデザインが気になっていた。ちょっとドイツ車っぽくなった現行C4に食指が動かないフランス車好きにも魅力的に映るデザインだし、MINIに惹かれる女性にもアピールするのでは、と注目していた。メカニズム的には、取り立てて新奇性があるわけではない。ベースとなるのは、従来のプラットフォーム1の改良版。パワートレインは、PureTEC1.2ℓ直3直噴ターボとアイシン・エィ・ダブリュ製6速ATを組み合わせだ。

冒頭にあるとおり、じつは結構フランス車が好きだ。その僕にして当日朝、雨中、東京・目黒のプジョーシトロエン・ジャポンの広報部でクルマを借りて乗り出した時には、「う、これは……」と唸ってしまった。悪い意味で、である。ワイパーは、盛大に軋み音を立てる、路面の段差を越えるとドタンバタン、トランスミッションはまるでAMTのように低速でぎくしゃく。ややや。これでロングドライブか……と少し憂鬱になっていた。

雨の関越道をMINIと連なって走る。100km/h巡航はおおよそ2000rpm。ひと世代前のC4が3000rpmだったことを考えれば、確実にダウンサイジング、ダウンスピーディング=燃費改善している。周囲の流れに乗って走れば17-18km/ℓで走るのは楽勝だ。これまた生涯燃費が10.0km/ℓだったC4から格段の進歩である。気がつけばワイパーからの異音もなくなっている。どうやら、新車で初めて雨だったようだ。

関越トンネルを抜けると夏空になった。青い空、緑の田園。気分も上々だ。しかし、「滑るように走るゾーン」には残念ながら入らない。ただし、シートの良さはやはりシトロエンだ。一度腰を落ち着けてポジションを決めたら、お尻を動かすことは皆無。これはいい。C3の高速ロングツアラーとしての素性の良さに、少し印象が良くなった。

夜、金沢の街に着くと長沼教授が待ち構えていて、MINIを受け取るやいやな、詳細なデータを収集するために夜の街(山?)へ消えていった。ちなみに、MINIをドライブしてきたYカメラマンは「長距離走ると腰が痛い」とお疲れのご様子。

2トーンの塗り分け部を目立たなくするまてに、上手にシールしている。目立たなくするのではなく、デザインとして成立させるあたりがさすがだ。
ドアミラーは、電動可倒式ではない。手動で折り畳む。先代C4もそうだったらから気にならないが、国産車から乗り換えると、「あれ?」と思うかもしれない。
ここがスーパーカミオカンデへと続くトンネルの入口。もちろん部外者は入れない。夏の暑い日だったが、地底から吹き上がってくる風は冷たかった。

翌朝、北陸道から国道41号を通って飛騨山中のスーパーカミオカンデへ向かう。急な上り坂でも110ps/205Nmのパワースペックは1180kgの車重に十分。目黒を出た時に感じた足の動きとエンジンが渋かったのも、だいぶなじんでスムーズになってきた。借りだした時のオドメーターは997km。つまり、慣らしが終わってなかったのだ。最新の出来の良い3気筒エンジンは、ラフな振る舞いを見せない。

国道から一本逸れてスーパーカミオカンデに向かう狭い山道で撮影した。ツイスティなコースも、コンパクトなC3は、楽しい。ミラー越しに見るMINIは、車重(1770kg!)通り動きが重い。さて、スーパーカミオカンデは、観光地でない。もちろん、特別な機会を除いては中に入ることもできない。入口は単なる地味なトンネル。しかし、その前に立つと、驚くほど冷たい風が吹き付けてくる。スーパーカミオカンデの風だ。

「ここがノーベル賞の源か」という感慨に浸る時間もなく、長沼教授を富山駅に送り、一路東京へ帰る。夜に予定していた打ち合わせに間に合わせるために、休憩もとらずに走る走る。気がつくと、C3も滑るようにすーっと“ゾーン”を走っていた。これだよ、これ。最後までに気になったのは、市街地でのトランスミッションの躾だけ。借り出した時のネガな印象は、消えていた。いいじゃん、C3。

シトロエンC3 SHINE DEBUT EDITION
■全長×全幅×全高:3995×1750×1495mm ■ホイールベース:2535mm ■車両重量:1180kg ■エンジン形式:直列3気筒DOHCターボ ■総排気量:1199cc ■ボア×ストローク:75.0×90.5mm ■最高出力:81kW(110ps)/5500rpm ■最大トルク:205Nm/1500rpm ■トランスミッション:6速AT ■サスペンション形式:Ⓕマクファーソンストラット Ⓡトーションビーム ■ブレーキ:Ⓕベンチレーテッドディスク Ⓡディスク ■タイヤサイズ:FR205/50R17 ■車両価格:226万円

MotorFan モーターファン Vol.9

9月1日発売のモーターファン最新号Vol.9のメイン特集は、「激走!1万5000km」シトロエンC3、MINI初のPHEVであるクーパーS E ALL4、トヨタ・カムリ、マイナーチェンジした日産フェアレディZ、ガソリンエンジンを搭載したマツダCX-3、VWゴルフ・オールトラック、ダイハツ・ミラ イースとVW up!、マツダCX-5、それからBMW 5シリーズとなぜか「青春18切符」という組み合わせのロングドライブ特集です。ひたすら走ったからこそ書ける本当の新車インプレッション、どうぞご覧になってください。

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