CX-8は文句なしに2.5Lガソリンターボ車がベスト/CX-5はディーゼル車にしかない6速MTの存在が悩ましい 【改良型マツダCX-5/CX-8比較試乗】SKYACTIV-G 2.5T&GVC+は全速度・回転域が官能的! CX-5のSKYACTIV-D 2.2&6速MTはスポーツカーから乗り換えても楽しめる!
- 2018/10/26
-
遠藤正賢
「GVC+」の効果は? CX-5ディーゼル6MT車とCX-8ガソリンNA車の走りは?
そしてもう一つの大きなトピック、従来の「G-ベクタリングコントロール」(GVC)と同じく日立オートモティブシステムズと共同開発した「G-ベクタリングコントロールプラス」(GVC+)だが、これは従来のGVCが行うターンイン時のエンジントルク低減によるステアレスポンス向上制御に、立ち上がり時の外輪制動による安定性向上制御を加えたもの。
詳細には、立ち上がりの際にステアリングを戻す操作をトリガーとして、旋回外輪へわずかにブレーキをかけ、直進状態へ戻そうとする復元モーメントを与えることで、安定性を高める効果を狙っている。
これを、改良前のCX-5にGVC+のオンオフを可能にしたテスト車両で試したところ、その効果は絶大。エルクテスト(急に飛び出してきたヘラジカを避けるのを想定したテスト)と同様の急激なレーンチェンジでは、直進状態に戻るまでのふらつきが非常に早く収まるため、車高が高いSUVでは効果が大きいように思われた。
またパイロンスラロームでは、ターンイン後の“オツリ”が残りやすいよう意図的にアクセルのオンオフを大きめにしても、GVC+がステアリングを直進状態へ戻す操作に応じてヨーとピッチを収束させるため、オーバーステアの兆候すら見せず難なくクリア。
通常の旋回でも、ステアリングを戻してからヨーとピッチが収束し車体が直進状態に近づくまでの時間が短くなるため、ステアリングをより早く直進に近い状態へ戻し、アクセルもより早いタイミングで深めていくことができた。
そして何より、ドライバーの操舵を起点として制御を行うため、旋回中にGVC+の制御が介入しても、こうしたヨーコーントロールシステムにありがちな違和感を全く覚えない。それこそが、GVC+が持つ最大の凄さだと、私は思う。
なお、足回りのハードウェアも細部が改良されており、その具体的メニューは下記の通りとなっている。
●フロントナックルアウターボールジョイント位置の最適化(CX-5のみ)
●フロントスタビライザー径拡大(22.2→23.0mm)
●フロントスタビライザーブッシュ硬度低減
●リヤスタビライザー径縮小(19.0→18.0mm)
●リヤダンパートップマウントのウレタン化
●前後ダンパー内のバルブ構造変更
フロアの板厚がCX-8より薄く、わずかに凹凸のある路面でもフロアから振動を発生しやすかったCX-5では、特にダンパーの改良が大きな効果を発揮。今回は荒れた路面を連続して試すことはできなかったものの、明らかにその振動が少なくなっているのを体感できた。
さらに、CX-5の「SKYACTIV-D 2.2」6速MT・4WD車の「XD Lパッケージ」、CX-8の「SKYACTIV-G 2.5」6速AT・FF車「25Sプロアクティブ」7人乗り・ルーフレールなしにも試乗した。
まず前者は、「これほどまでにこのディーゼルと6速MTは相性が良いのか」と驚愕することしきり。よりダイレクトな加速フィールが味わえるのはもちろん、ヒール&トー時の吹け上がりも鋭いため回転を合わせやすい。また450Nmの有り余るトルクと5000rpmものレブリミットを利して、高めの回転数まで引っ張って加速すれば1速飛ばしのズボラシフトも許容してくれる。ただし、燃費は悪化するだろうが。
一方で後者は、CX-5より210kg重い1740kgの車重に対し、190ps/6000rpm、252Nm/4000rpmというスペックはFF車で辛うじて必要充分といえるレベル。最終減速比がCX-5の4.624から4.957まで低められているため実用上は不足のない加速性能が担保されているが、その分市街地で流れに乗るのを想定した発進加速でも3000rpm付近まで引っ張る必要がある。
ストップ&ゴーの多い使用環境ではもちろん、アテンザやCX-5と異なり気筒休止機構が備わっていないため高速巡航時においても「SKYACTIV-G 2.5T」よりもむしろ燃費が悪いのでは、と思わずにはいられなかった。
また今回改めて、CX-5とCX-8を乗り比べてみると、両車の性格が好対照なことを再認識させられる。CX-5は355mm短い全長と230mm短いホイールベース、約200kg軽い車重のおかげで加速・旋回性能とも高く、操る喜びに満ちているが、NVHは一歩劣る。特に「SKYACTIV-G 2.5T」搭載車では、加速時は高周波のタービンノイズ、巡航時は低周波の排気音が耳に付く傾向にあった。
逆にCX-8は、CX-5に比して運動性能、特に旋回性能は劣るものの、居住性や静粛性、乗り心地では確実に上回る。今回の改良で3列目周辺の遮音性能が高められたことによって、CX-9のボディ・シャシーがベースであり、かつワンランク上の車格に位置付けられていることが、より明確に体感できるようになった。
初代CX-5の発売以降長らく、その余りにも高性能なディーゼル車の前に、マツダのガソリン車はどれほど安価であろうと霞んで見えてしまう傾向にあった。だが、今年に入ってから各車で、ディーゼル以上にガソリンエンジンの改良が進んだことで、ガソリン車を積極的に選びやすくなっている。
そして今回、2.5LガソリンターボがCX-5とCX-8に設定されたことで、初代CX-5の発売以来初めて、ガソリンエンジンがディーゼルを動力性能と走りの楽しさで上回った。しかもCX-8では2.5Lガソリンターボ車と2.2Lディーゼルターボ車とで、その他の装備が同等レベルの車両同士で10万円前後の開きがあるため、CX-8を買うなら2.5Lガソリンターボ車がベストチョイスと言い切れる。
2.5Lガソリンターボには4WDとの組み合わせしかないのがネックだが、標準グレードの「25Tプロアクティブ」で374万2200円、ナッパレザーシートが標準装備となる「25T Lパッケージ」で424万4400円という価格はもはや破格と言っていい。「ちゃんと使える3列目シートを備えたクロスオーバーSUV」を他社に求めると必然的にフルサイズとなるため、2倍以上のプライスタグを提げていることも珍しくないのだ。
だがCX-5では、2.5Lガソリンターボ車と2.2Lディーゼルターボ車の価格差が5000円強と極めて小さい。しかも後者には6速MTとの組み合わせがあり、ホンダS2000を愛車とする筆者でさえ「これならスポーツカーから乗り換えても楽しめる」と思えるほど、その走りは楽しさに満ち溢れているのだ。そして価格は、ナッパレザーシートを標準装備する最上級の「XDエクスクルーシブモード」4WD車を選んでも、388万2600円。
2.5Lガソリンターボ車ならCX-5とCX-8のどちらにするか、はたまたCX-5 2.2Lディーゼルターボの6速MT車にするか。実際にいずれかを購入するとなったら、その答えは永遠に出そうにない。
【Specifications】
<マツダCX-5 25Tエクスクルーシブモード(F-AWD・6AT)>
全長×全幅×全高:4545×1840×1690mm ホイールベース:2700mm 車両重量:1680kg エンジン形式:直列4気筒DOHC直噴ガソリンターボ 排気量:2488cc ボア×ストローク:89.0×100.0mm 圧縮比:10.5 最高出力:169kW(230ps)/4250rpm 最大トルク:420Nm(42.8kgm)/2000rpm WLTCモード燃費:12.2km/L 車両価格:387万7200円
<マツダCX-8 25T Lパッケージ7人乗り(F-AWD・6AT)>
全長×全幅×全高:4900×1840×1730mm ホイールベース:2930mm 車両重量:1890kg エンジン形式:直列4気筒DOHC直噴ガソリンターボ 排気量:2488cc ボア×ストローク:89.0×100.0mm 圧縮比:10.5 最高出力:169kW(230ps)/4250rpm 最大トルク:420Nm(42.8kgm)/2000rpm WLTCモード燃費:11.6km/L 車両価格:424万4400円
<マツダCX-5 XDエクスクルーシブモード(F-AWD・6MT)>
全長×全幅×全高:4545×1840×1690mm ホイールベース:2700mm 車両重量:1680kg エンジン形式:直列4気筒DOHC直噴ディーゼルターボ 排気量:2188cc ボア×ストローク:86.0×94.2mm 圧縮比:14.4 最高出力:140kW(190ps)/4500rpm 最大トルク:450Nm(45.9kgm)/2000rpm WLTCモード燃費:18.6km/L 車両価格:388万2600円
<マツダCX-8 25Sプロアクティブ7人乗り(FF・6AT)>
全長×全幅×全高:4900×1840×1730mm ホイールベース:2930mm 車両重量:1740kg エンジン形式:直列4気筒DOHC直噴ガソリン 排気量:2488cc ボア×ストローク:89.0×100.0mm 圧縮比:13.0 最高出力:140kW(190ps)/4500rpm 最大トルク:252Nm(25.7kgm)/4000rpm WLTCモード燃費:12.4km/L 車両価格:325万6200円
- 前へ
- 2/2
|
|
自動車業界の最新情報をお届けします!
Follow @MotorFanwebおすすめのバックナンバー
自動車業界 特選求人情報|Motor-FanTechキャリア
三菱自動車工業株式会社
人事<海外人事担当>
年収
500万円〜700万円
勤務地 東京都港区芝浦3丁目1−21 田町ステーシ...
この求人を詳しく見る
三菱自動車工業株式会社
エンジン制御・エンジンECU開発
年収
450万円〜900万円
勤務地 愛知県岡崎市橋目町字中新切1番地
この求人を詳しく見る
三菱自動車工業株式会社 人事<海外人事担当>
年収 | 500万円〜700万円 |
---|---|
勤務地 | 東京都港区芝浦3丁目1−21 田町ステーシ... |
三菱自動車工業株式会社 エンジン制御・エンジンECU開発
年収 | 450万円〜900万円 |
---|---|
勤務地 | 愛知県岡崎市橋目町字中新切1番地 |
これが本当の実燃費だ!ステージごとにみっちり計測してみました。
日産キックス600km試乗インプレ:80km/h以上の速度域では燃費...
- 2021/03/26
- インプレッション
BMW320d ディーゼルの真骨頂! 1000km一気に走破 東京〜山形...
- 2021/04/03
- インプレッション
日産ノート | カッコイイだけじゃない! 燃費も走りも格段に...
- 2021/02/20
- インプレッション
渋滞もなんのその! スイスポの本気度はサンデードライブでこ...
- 2019/08/11
- インプレッション
PHEVとディーゼルで燃費はどう違う? プジョー3008HYBRID4と...
- 2021/06/28
- インプレッション
スズキ・ジムニーとジムニーシエラでダート走行の燃費を計って...
- 2019/08/09
- インプレッション
会員必読記事|MotorFan Tech 厳選コンテンツ
フェアレディZ432の真実 名車再考 日産フェアレディZ432 Chap...
- 2018/08/28
- 新車情報
マツダ ロータリーエンジン 13B-RENESISに至る技術課題と改善...
- 2020/04/26
- コラム・連載記事
マツダSKYACTIV-X:常識破りのブレークスルー。ガソリンエン...
- 2019/07/15
- テクノロジー
ターボエンジンに過給ラグが生じるわけ——普段は自然吸気状態
- 2020/04/19
- テクノロジー
林義正先生、「トルクと馬力」って何が違うんですか、教えて...
- 2020/02/24
- テクノロジー
マツダ×トヨタのSKYACTIV-HYBRIDとはどのようなパワートレイ...
- 2019/07/27
- テクノロジー
Motor-Fanオリジナル自動車カタログ
自動車カタログTOPへMotor-Fan厳選中古車物件情報
マツダ CX-5
20S ブラックトーンエディション 衝突被害軽減システム アダプティブクルーズコントロール 全周...
中古価格 330.4万円
マツダ CX-5
XD Lパッケージ【BOSEサウンド】【禁煙1オーナー】 【衝突軽減】【サンルーフ】【2023年...
中古価格 346.4万円
マツダ CX-5
XD エクスクルーシブモード ワンオーナー BOSEサウンド 10.25インチナビ 360°カメラ...
中古価格 371.6万円
マツダ CX-5
XD SE ナビ 全方位モニター
中古価格 272.4万円
マツダ CX-5
XD スポーツアピアランス 雹凹有 SBS SCBS 11.25インチSDナビ 360度ビューモ...
中古価格 282.3万円
マツダ CX-5
2.5 25S スポーツ アピアランス ナビ テレビ ETC ドラレコ アドバンスドキー スマー...
中古価格 305.9万円