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プロユースを見据えた唯一無二のモデルと好対照をなすクロスオーバーSUVたち スズキ・ジムニー×ジムニーシエラ×日産ジューク×ジープ・レネゲード〈ライバル車比較インプレッション〉

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クロスオーバーSUVとは一線を画すその開発姿勢

大部分の乗用車が独立懸架式サスペンションであるのに対し、ジムニー/ジムニーシエラは古典的とも言えるリジッドアクスル式サスペンションを新型でも踏襲。凹凸路で優れた接地性を誇り、堅牢な構造で過酷な使用環境でも信頼できる耐久性を確保している。
 先代のジムニー/シエラの20年間で、この種のクルマは日本でも「SUV」と呼ばれるようになった。重視されるのは舗装路での快適性や機動性に置き換わり、この種のクルマに無縁だったメーカーもほぼ例外なくSUVを手掛けるようになった。

 そんな時代に刷新された新型ジムニー/シエラだが、その開発目標や商品力アピールに「高級感」や「舗装路での洗練」といったいまどきのお約束的な文言はあまり見当たらない。今回も目指されているのはあくまで現代に必要な安全性や環境性能を満たすことだ。それ以外の本質では、ある意味「先祖返り」した部分すら少なくないのは、ファンや好事家にとって、とても痛快である。

 ただ、そこに投入される技術はあくまで現代の価値基準で構築されているわけで、結果的・必然的に新しく洗練された部分は少なくない。例えば、内外装の仕上がりは今の軽としては平均的だが、先代と比較すると明らかに質感が高く、各部の人間工学も進化している。そして、エンジンも0.66ℓターボ、1.5ℓ自然吸気ともども、従来よりも圧倒的に滑らかで低燃費となり、走行中も明らかに静かになった。

 捻り剛性を大幅向上させたラダーフレームや「横方向に硬く、縦方向に柔らかい」という新開発ボディマウントゴム、キックバック低減に効果的なステアリングダンパーといったシャシー関連の新機軸にしても、その最大の効能が「悪路での接地性や走破性向上」と主張されるあたりはジムニー/シエラならではだ。しかし、技術に詳しい読者のみなさんならお気づきのように、これらはすべて舗装路や高速域での操縦安定性や快適性にも確実に効くものだ。事実、今回のオンロードコースでも、前記の静粛性と同時に高速での「座り」は明らかに改善しており、ステアリングの手応えは清涼になった。

 しかし、ジムニーはジムニーである。先代と改めて乗り較べても、新型がいきなり「乗り心地は2階級アップ!」と驚愕させたり、あるいは「まるでスイフトスポーツのごとき旋回性能」を披露することは……まったくなかった。ラダーフレーム+前後リジッドの味わいは伝統的オフローダーのそれであり、コーナーで走行軌跡が外にはらみ始める臨界点が、ジュークやレネゲードより目に見えて低いことも事実だ。

 新型ジムニー/シエラに搭載されるエンジンの単体性能は2種ともはっきりと上がっている。ただ、実際の動力性能では軽のジムニーでは増加した車重と相殺されて新旧でほぼ同等といったところか。一方の新型シエラの走りは先代より明確にパンチが増して、誰が乗っても軽のジムニーより余裕があると感じられるレベルになった。さらに「5速MTなら、欧州で150㎞/h以上の巡航も問題ありません」とチーフエンジニアも太鼓判を押すものの、今回のような周囲に他車がおらず、しかも先を急ぐ目的地もなく走っていると、80〜90㎞/hあたりで静粛性や振動、乗り心地/操縦性がバランスしていて、いつしかそこに自然と落ち着く。これはジムニーとシエラで大差なく、また先代ジムニーもほぼ同じ。このジムニーならではの快適巡航速度も、もはや伝統の域か?

 ……と、ちょっと冷めた書き方になってしまったが、竜洋の砂地コースでのジムニー/シエラの超絶な走破性を見せつけられれば、舗装路におけるいくつかの弱点すら逆に「積極的にこうあるべし」と思えてくるから、好事家はチョロいものだ。

 だから、新型ジムニー/シエラを今回連れ出した2台とダイレクトに比較して、表面的な優劣をつけたところで意味はない。冒頭にもあるようにジムニー/シエラの厳密な意味での競合車は世界に存在しない。

 特にジュークなどは、いまどきの見た目優先SUVの典型といってよく、ある意味ではジムニー/シエラとは正反対の存在である。それでも、今や必須の先進安全装備が標準となる新型シエラの上級「JC」グレードと同じく先進安全装備を備えたジュークの1.5ℓは、価格や排気量でドンピシャの関係になるのが面白い。ジューク1.5ℓには2WDしかないが、ジュークを候補にする時点で、そもそも「街乗りSUV」のクルマ選びなのだから、2WDと4WDは乗り方次第。そこに優劣はない。

 白ナンバーのシエラでも室内空間で軽と異なるところはないのがジムニーの特徴だが、2ドア+4名乗り(ジュークは4ドア+5名)になること以外、各座席の居心地や使い勝手に大きな差がないのは興味深い。フル乗車での荷室容量だけはボディが大きいジュークが優勢だが、1〜2名の普段使いを想定するなら、シエラでも後席を倒したままにしておけばジュークに引けを取らない。逆にいうと、ジュークは室内空間を犠牲にしてまで斬新なスポーツカールックを追求しているのだが、特徴的なサイドマーカーによって、車両感覚でもジムニー/シエラに大きく劣らないのは評価すべきだろう。

 ジュークの走りがジムニー/シエラと比較できないほど乗用車的なのは当然だが、それ以上に小気味いいウォームハッチの風情である。ジムニー/シエラと比較せずとも、その正確な操縦性やしっとりと落ち着いたフットワーク、剛性感は印象的。同じ1.5ℓエンジンで車重もシエラより重いのに、実際の動力性能がシエラより活発なのも好印象だ。

 このように既に8年選手のジュークが今も極端に古びていないのは、斬新なデザインに加えて、これが日産がスモールカー専用Vプラットフォームを開発する以前の作品だからでもあろう。ジュークの土台となっているBプラットフォームは、日産の最新ヒエラルキーでは、良くも悪くも少し贅沢な骨格ともいえる。

唯一無二の価値を手頃な価格で得られるという美点

副変速機で4WDローをセレクトすれば、より大きな駆動力が四輪に配分され、ぬかるんだ路面や滑りやすい急勾配でも力強い走りを実現。200㎜を超える最低地上高に加えて、十分に確保された3アングルが不整地での障害物との接触を防いでくれる。
 ジムニー/シエラの心意気にシンパシーを感じつつも、「自分の使い方では実用性や舗装性能がちょっと物足りない」と感じる向きには、ジープ・レネゲード「トレイルホーク」はまさに打ってつけかもしれない。

 基本構造はいかにも現代風SUVのレネゲードだが、各部のサイズは抑制が効いており、乗員を小高く座らせてボディの四隅がつかみやすいパッケージレイアウトには、さすがオフロード名門ブランドの経験が生きる。それと同時に、車高をさらに上げた今回のトレイルホークでも、高速からワインディングまでストレスフリーに正確な操縦安定性は、さすが現代SUVの美点である。

 トレイルホーク専用となる2.4ℓエンジンも余裕シャクシャク。対するジムニー/シエラの動力性能は、周囲の流れに合わせても思い切りスロットルを踏まざるをえないケースもあり、日常運転の気づかいもレネゲードのほうが少なそうだ。

 その一方で、ストローク豊かなトレイルホークの走りのリズム感には、ジムニー/シエラに似た本格派のオーラがわずかに匂う。今回は取材車の都合でレネゲードを竜洋に持ち込むことはかなわず、オフロードでの「日米最小SUV対決!」は実現せず。しかし、そのトレイルホークの地上高、そしてアプローチ/ディパーチャー/ランプオーバーの各アングルや4WDの内容を見る限り、少なくとも今回の砂地コースでは、新型ジムニー/シエラと好勝負になっていた可能性は高い。

 トレイルホークの4WDは副変速機のない乗用車的オンデマンド型だが、レシオを極端に低めた1速ギヤを活用したアクティブロー制御や、ダイヤルで路面を選ぶだけで積極的にロックするセレクテレイン機能、ブレーキLSDなどを駆使して、私のようなアマチュアが挑戦できる程度の悪路での不足はまるでない。

 輸入車である上に装備もジムニー/シエラより充実したレネゲード「トレイルホーク」の価格はなるほどシエラより150万円以上も高い。しかし、レネゲードはツルシで先進安全機能を標準装備する上に、先日の仕様変更で8.4インチナビも標準化されたので、実質的な価格差はそこまでではない。私も個人的に「セカンドカーとして割り切れるシエラだけど、ファーストカーならレネゲード」と迷うところで、新型ジムニー/シエラとレネゲード「トレイルホーク」は、事前に想像していた以上の好敵手同士だと思った。

 今回はあえて、価格的にシエラと真っ向競合するジュークと、スピリット的な意味で「ジムニーの兄貴分」といえそうなレネゲード「トレイルホーク」を連れ出して、個人的にはそれぞれに「こっちの選択もアリだな」と楽しく迷うことができたが、それもあくまで私個人の好みによるところが大きい。新型ジムニー/シエラを実際に購入する好事家であれば「一点突破の指名買い」が大半だと想像されるし、仮に比較するにしても、並ぶ顔ぶれは人それぞれでまるで異なることだろう。

 ジムニー/シエラは「軽である」だの些末な装備内容などととやかく言わなければ、価格は絶対的に安いことも伝統的な魅力である。世界に類を見ない孤高のカリスマがこれほど手頃に入手できることに、日本の好事家は素直に感謝すべきだと思う。

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