日産セレナe-POWERのECOモードと1ペダルは最強のショーファーカー Nissan Serena e-POWER impression 日産セレナe-POWERをフル乗車で試乗。ECOモードと1ペダルの滑らかさ 3列目の乗り心地は?
- 2019/06/20
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MotorFan編集部
ノートで搭載が始まったe-POWER。それをミニバンであるセレナに載せたら、どんなクルマの仕立てになるのか。あえての3列目シートまで乗員してあれこれ試してみた。
シリーズハイブリッド最強説(自分では)
シリーズハイブリッドが好きだ。駆動はモーター、給電は最高効率点で固定したエンジンによる発電機から、そして必要最小限の二次電池。機械構成に特段高価だったりするものもなく、従来構造の自動車から仕立てるのも難儀ではない。しかし走行感覚はすべてモーターによるもので別次元、エンジンが載っているので暖房の熱源にも困らず、唯一の欠点といえば超高速走行に向いていないことか。そんな特質が、個人的には自動車としての究極解である。
三菱自工の「PLUG-IN HYBRID SYSTEM with TWIN MOTOR 4WD(長い)」やホンダの「i-MMD」は、シリーズハイブリッドの欠点である超高速走行まで視野に入れた快作だ。しかし、いかんせんクルマの値段が高い。そしてクルマが大きい。日産のe-POWERがノートに搭載されて登場したとき、その割り切りの良さに感動し、リーフを売れなくしてしまうのではないかと心配するくらいだった。そのe-POWER第二弾に日産が選んだのが、ミニバンのセレナである。
ノートのシステムをセレナに搭載するにあたって多少の増強はなされたものの、基本的には同じものを使用する。エンジンでどれだけ発電するか、そこからどれだけ電動モーターに給電するかによって駆動の特性を変えられるシリーズハイブリッドの柔軟性をいかんなく発揮した設計だ。
とはいうもののやはり、ノートと比べて約500kg強の車重増があり、さらに重心が高いセレナで大丈夫?という心配がどこかしらあるのも事実。ならば3列目シートまでちゃんと乗員して確かめてみようと考えた。
3列目まできっちり人を乗せてみる
今回の試乗は運転者を含めて5名+αの乗車。ご協力をいただいたのは以下のメンバーである。
・Rさん(運転歴あり、免許返納済み。クルマの運転は近所の買い物がほとんどだった)
・Kさん(運転歴なし。軽自動車の後部座席に乗車することが多かった)
・Cさん(運転歴あり。ときどき、軽自動車で通勤や買い物に出る。家族での同乗時は後席)
・Sさん(運転歴なし。家族での同乗時は後席。ジェットコースター好き)
・MZW(運転者。ミニバンの運転はグラリが強くて苦手意識あり)
RさんとKさんがお年を召していて、加えてKさんがクルマ酔いしやすいということで、運転には気を使う必要がある。e-POWERというと「モーター駆動による抜群の加速力!」といきたいところだが、今回はそれをやってしまうと大変だ。ということで、ドライブモードは「ECO」を選択した。
ECOモードで最上のショーファードリブンを
ご存じ、e-POWERには「ノーマル」「S」「ECO」の3モードがある。「S」と「ECO」は発進から停止までをアクセルペダルだけで操作できるワンペダル運転が可能で、対する「ノーマル」はブレーキペダルを使う通常の運転スタイル、通常のAT/CVTのようなクリープ走行も創出している(「B」レンジを選択して強い回生ブレーキを得ることも可能)。
「ECO」モードを選択した理由は、このモードなら発進加速が穏やかになるだろうと考えたから。実際、多少速めにアクセルペダルを踏んでも車両が尻を沈ませるようなことはなくなり、スーッと進み始めることで、乗員への加速度の影響は最小限に抑えることができた。加えて、当然ながら無音でいつまでもシームレス。街中の発進では無上の快適さだ。多人数を乗せたことによる動力不足については、ECOを選んでもなおまったく気にならなかった。
そしてさらに便利だったのがワンペダルである。非常にジェントルな発進加速とともに、とても穏やかでスピードが消え入るような制動を実現できるのだ。
じつは渋滞していたこともあり、ProPILOTで横着してみようと画策した。するとCさんが「ブレーキがラフ。急にどうしたんですか」と訊いてきたのだ。う、するどい……。実はProPILOT、運転者には非常に優しいシステムなのだが、完全停止時の少し急なブレーキが少々気になっていた(もしかすると前走車の忠実なトレースなのかもしれないが)。
実際の制動Gの変化を測ってみると、その差は明らか。ProPILOTは途中までなめらかに減速していくのだが、最後の最後に急な制動Gを立ち上げるのが特徴。いっぽう、「ECO」モードのワンペダルによる自身の運転では(同乗者にもンのすごく気を使っていることもあり)、一定のカーブで減速していくのが見て取れる。数字にしてみればごくごくわずかな差なのだろうが、同乗者は気がつくものなのだ。
——と同時に非常に頭を使うスポーツでもあるワンペダル
そして、ワンペダルコントロールが思いのほか「スポーツ」なのにも気がついた。ここでいうスポーツとは動力性能に優れているということではなく、クルマを動かす最中の速度マネージメントに頭を使うという意味である。
ワンペダルで先述のような「消え入るような制動停止」を実現するためには、加速〜巡行ののちに、いつどこでクルマを停めるかという先読みの深さがとにかく求められる。漫然と前走車のブレーキランプを見ているだけでは到底追いつかず、先の先の先まで見通して周囲の道路交通状況をきちんと把握しないと、いつペダルを踏み戻すかというタイミングを計るのが難しい。
難しいと綴ったのだが、これが慣れてくると非常に楽しくなってくる。何せ、自分のペダル操作ひとつで乗員すべてに影響を大きく与えるわけで、うまくいったときの達成感が大きいのだ。
最後に、同乗者の感想をお伝えしておこう。
「いやあ、いいクルマだった。(電動スライドドアなので)乗り降りも楽。(2列目の)シートもいいね。またこのクルマで出かけたい。あなた、コレに買い替えなさい」(Rさん)
「(当日は雨だったので)傘を気にしないで乗れたのがうれしかった。(2列目の)シートの乗り心地がとてもよかったです」(Kさん)
「3列目は狭くて乗り心地が悪いと思っていたんだけど、全然そんなことはなかったです。酔いそうな感じもありません。でも長く乗っていたらシートが平坦で、(座面が水平気味のためか)ときどき前に滑り落ちそうな感じがありました。2列目に乗り換えるとそれがよくわかります」(Cさん)
「3列目に乗り込むときに大変かと思ったけど、ドアが大きく開くし2列目の間があいているのでスッと乗れたのはびっくりした。乗り心地も悪くなかったし、運転中はずっと寝ていられました」(Sさん)
——乗り心地が良かったというのはe-POWERの面目躍如だろう(もちろん相当に気を使った運転だったということもあるだろうが)。一般的にグラリとしやすいミニバン、しかし車両姿勢をしっかりさせたいならダンパーや空気圧でかためて——となれば通常の乗り心地が犠牲になってしまう。車重はエンジン車に比べて嵩んではしまうものの、モーターの動力特質によってそこを補い、さらに上質な乗り心地を創出できていることが今回の試乗でよくわかった。
大人数で移動することが多いあなたにはぜひともお勧めしたいセレナe-POWERである。
今回の試乗でどれだけの燃費だったか
今回の試乗車は「e-POWER ハイウェイスター V(2WD)」。セレナのウェブページを参照してもグレードランキング1位の売れ筋グレードである。2位は「ハイウェイスター VセレクションⅡ(2WD)」で、つまりe-POWERではない同程度のクルマであった。
e-POWER ハイウェイスター V(2WD):340万4160円
ハイウェイスター VセレクションⅡ(2WD):287万4960円
差額は52万9200円である。なかなかの金額差ではあるが、JC08モード燃費値にも結構な開きがあり、
e-POWER ハイウェイスター V(2WD):26.2km/ℓ
ハイウェイスター VセレクションⅡ(2WD):16.6km/ℓ
と、実に10km近い差がある。車重は1760kg:1690kg。ただし、「ハイウェイスター VセレクションⅡ(2WD)」は8名乗車が可能であり、かたやe-POWER仕様はすべて7名乗車仕様。どうしてもシートベルトアンカーが8つ必要な方もいらっしゃるだろう。
では今回の「e-POWER ハイウェイスター V(2WD)」で燃費関連はどうだったか。
平均燃費値は14.3km/ℓだった。総走行距離は492.1km、平均速度は35km/hである。
本レポートの道程が40kmほど、当日は降雨でひたすら渋滞に付き合った格好だった。その日の走行終了時で平均燃費値は14.9km/ℓ。
その翌日に1名乗車で320kmほどの高速走行というシチュエーション。渋滞にはさほど見舞われず、快適なクルージングで往復をこなした。
e-POWERは高速走行が苦手というが、一人で乗っていたこともありさほどの瘙痒は感じられなかった。当然ながらエンジンは始終発電&給電している状況だったが、最適燃費点で運転しているためか、回し続けても燃費値が悪化していかなかったのはお見事である。
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