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ホンダS2000 高すぎる限界とピーキーな操縦性に手を焼いているオーナーへ なぜホンダS2000のドライビングは難しいのか? 知ればセッティングの方向もわかる

  • 2019/06/28
  • レブスピード編集部
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 S2000の着座位置はリアタイヤの直前。そこから長いノーズを見渡してフロントタイヤは遥か遠くにある。そんな特徴的なパッケージからか、ビギナーは高い限界をつかめずに手を焼いてしまうもの。そこで、ビギナーも安心してドライビングを楽しめるエスの仕上げ方を紹介。

後にこのグラフの説明をするが、多くのS2000オーナーが尖った青線のスイートスポットが狭いセッティングで乗っている!?

グランドスラムプロ町田・福嶌稔大さんによるS2000セッティング&ドライビング論

 リアスポイラー装着車も多いエス。高速域での乗りやすさが大きく向上するという、「GT ウイングだとノッチひとつ変えるだけで富士の100R を全開で行けるくらい接地感が上がります。でも最高速も5〜6km/h くらい落ちます」。それくらいエスは感度がいい
 ドライビングが難しいS2000(以下:エス)を、どうしたらビギナーでも楽しく走れるようにできるのか? ここでは、さまざまなスキルのユーザーのエスを仕上げてきたグランドスラムプロ町田の福嶌稔大さんに話を聞いた。自身もエスを深く愛するオーナーだけに、エスならではの特性と、必要とされるドライビングの両面からレクチャーしてくれた。


【ポイント1】フロント荷重、リア荷重と分けて走ると途端に難しくなる

「エスは限界が極めて高いため、ビギナーがその限界内で走っていると、このうえない楽しいクルマになります。ハンドルを切れば曲がり、思ったとおりに動く。

 でも、ちょっとスキルアップして限界を超えた途端に『曲がらない』、『リアが食わない』という話が出てきます。それは、限界を把握しにくく、限界付近のスイートスポットが狭いためです。

 エスの特性として、4輪にバランスよく荷重を与えていれば極めて高い限界を発揮してくれます。でも、限界を超える手前でも荷重が抜けるとすぐ滑ってしまう特性があります。フロントタイヤに頼って、ハンドルだけで曲がろうとすると、簡単にリアが流れる。『ターンインまでフロント荷重、加速でリア荷重』なんて前後の荷重を分けて走ると、エスは途端に難しくなるのです。

 そこで、ブレーキングではリアがグッと沈み込むブレーキバランスを意識して、フロントに荷重を乗せ過ぎず、リアの荷重を抜かずにターンインしていくのがエスではとくに重要。そこで、リアに旋回を掛けるにあたって、『絶対に滑らせない』という意識と走りができない人には難しい。そう走らないとスピンです」

【ポイント2】ロールが少なくて内輪接地がいいS2000。車高で敏感に限界特性が変わることを知る

「重心点が低くてロールが少ないエスの特徴として、エスはタイヤの限界までなかなか到達しないことも挙げられます。それは、内輪接地に優れて、内輪がリフトしにくいからです。これがグリップの限界が訪れることを察知しやすいロードスターや86との大きな違い。エスは外側は沈むけど、内側が浮かない。そして、限界のスピードが高過ぎて、気づいたときにはタイヤは限界を超えている。

 その変化域の速さに追いつけないことから、アマチュアには『エスは難しい』となってしまうわけです。
 さらに付け加えれば、エンジンが前方にあるエスの着座位置はかなり後方の設計で、ほぼリアタイヤの上。リアのスライドを感知したときには、自分ごと横にもっていかれていて、どうしても反応が遅れてしまうこともあります」

【ポイント3】バネレートを下げつつ、車高を上げてやることで、「限界の山」を低くしてやる

「限界点が高く、ピーキーでスイートスポットが小さい。だから初心者がスイートスポットを広げて乗りやすくするための第一歩は、あえて『限界を下げる』ことを試してみること。それは、バネレートを下げて、車高を上げることになります。その分、MAXのグリップは落ちます。当然、その逆もいえることです。

 バネレートを下げていくと、グリップしている時間も長いけど、そのピークが低く山はなだからになる(下記参照)。そして、エスは車高を下げるだけで、感度よくその山がぐんと鋭く高くなってしまう。だから車高を上げてやる。
 広いスイートスポットで、限界の山をなだからに乗ろうと思うと、サーキット仕様だと通常はスプリングレート14〜16㎏/㎜となるところを、前後10㎏/㎜程度にして、車高も上げてやるのです。

 タイヤもネオバなどハイグリップラジアル以上を履かせる必要があります。それ以下のクラスだとエスにはクルマに対して相当プアになって、かなり難しくなります。

 LSDはオーソドックスなものがエスに合っています。イニシャルが低くアクセルを抜けば完全にフリーで、踏めば急激に100%になるタイプより、過渡的に作動するタイプのほうが連続するコーナーで乗りやすいでしょう」

撮影車はユーザーカー。筑波コー ス1000を走り込み、最近は富士 スピードウェイを走るにようになっ たという。タイヤはネオバAD-08R (F&R:235/45R17)で、L.S.D.は クスコType-RS(1.5way)。

この写真の車高でもビギナーにはかなり低いという。スキル アップのためには、前後10 ㎏ / ㎜程度のバネレート で、さらに車高を上げた状態を試してみるといい。

 バネレートと車高による、グリップ限界の違いを、「山の高さ」と「山の形状」でイメージした。バネレートを上げて車高を下げると、グンと限界は上がるが、山は険しくなりスイートスポットは狭くなる。そして、タイヤへの荷重が低くても、逆に掛け過ぎても、グリップを引き出せずに難しいことがわかる。レートを下げて車高を下げると、限界値は低くなるが、スイートスポットは広がる。こちらがビギナー向けだ。

サスペンションはオーリンズDFV。減衰力を高めてスプリングはスウィフトのF:12㎏ / ㎜、R:13㎏ / ㎜をチョイスしたグランドスラムpro 町田オリジナルセッティング

 エンジンオイルは0w-30など低粘度は避けたい。軟らか過ぎない5w-40がオススメ。銘柄により減りが早いので注意(特に初期型)。横Gで油圧が低下するコースではオイルパンバッフル装着も検討すべき。ミッションオイルは規定量だと少なく、5速、6速が渋くなってしまう。そこで車速センサーを外して、ちょっと多めに入れてやるのもポイントとのこと。

■取材協力/GRAND SLAM PRO 町田 東京都町田市根岸2-1-5 TEL042-793-4050 http://gspromachida.jp

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