1995年はホンダS-MX、SSM、ニッサンCQ-Xも登場! 第31回東京モーターショー2/2【東京モーターショーに見るカーデザインの軌跡】
- 2020/12/18
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荒川 健
この第31回は、各メーカーともバブル崩壊後の厳しいマーケット環境を生き抜くための知恵と勇気を出し切ったモーターショーとなった。
前回ご紹介したマツダMX-01やトヨタ・プリウス、ホンダ・F-MXと並んで取り上げないわけにはいかないのがホンダ・S-MXである。
次世代カーデザインの美学か! ホンダS-MX
S-MXは、新開発のステップワゴンのフロアを有効利用して、かつてのシティを造ったノリで「トールボーイ・コンパクト」を提案したようだが見事大当たり、ショーの反響が凄かった。
ステップワゴンの大きさは要らないが、車高の高い広々空間のキビキビ走る小さいクルマが欲しい、という移動目的のお洒落な潜在ユーザーを見事掘り起こしたのである。
キュービックでシンプルな造形が現代的で新しいライフスタイルに敏感な若者に大いにうけ、「フロントウィンドウが立った四角いカタチがカッコいい」という新しい自動車デザインの美学までも確立してしまったのであった。
この時代のホンダデザインは基本のプロポーションのバランスがよく、その為シンプルなデザインが美しく映えるのであった。そのシンプルな素材を生かしたカスタム素材を提供し、自分好みにドレスアップが楽しめるといったビジネスを展開したのも先見の明があった。
トヨタも2000年に、さらにフロントウィンドウを立てたbBを発売しこのジャンルに進出したことからも、ホンダの功績は大きかった。
この形で出て欲しかった! S2000のコンセプト ホンダSSM
次にご紹介するホンダSSMもぜひとも取り上げなければならないコンセプトカーだ。
マツダ・ロードスターに刺激され、FRレイアウトのオープンスポーツをホンダならではのカタチで世に問うたモデルである。
とにかくシンプルな造形の美しさに驚いた。新しさと迫力に圧倒され、私はその後のデザインテイストに、かなりな影響を受けたのである。
伝統的な自動車デザインの手法である稜線によってカタチを決めるといったやり方を踏襲しながらも、一定の断面を通した力強い面造形でまるで刀のような鋭さのあるデザインなのだ。
ヘッドランプ位置が法規に適合していないなどの問題はあったが、それでもこの独創的で素晴らしい造形力が損なわれるものではなかった。
その後1998年にS2000として正式発表され、翌年発売になったが量産モデルではオリジナルの鋭さがかなり削がれてしまったのが残念だった。オリジナルはイタリアカロッツェリア式の石こうモデルから型取りしてFRP展示モデルを製作したため鋭い造形が可能だったが、量産化に向けたクレイモデル作業や板金プレスの金属ボディーでは実現不可能であったのかもしれない。
覚えていますか? 日産CQ-X 内容は凄いがデザインは…
日産も次世代に向けたスタディモデルを展示、その内容が凄かった。
コンセプトカー・CQ-Xである。
日産が未来の自動車社会で必要と考えている安全性やモビリティとしての利便性追求を最大限盛り込んだクルマだった。当時発表された資料によると、スタイルは最もクルマとして汎用性の高いセダンを選んだとのことであった。
ステージ上のCQ-Xを最初に見たとき、アルミ製の骨格で車体重量が870Kgであることやその性能と提案されている新技術内容に度肝を抜かれ、日産の技術開発目標をすべて公開した勇気には敬意を表したのだが、私は肝心のデザインがあまりにもぶっきらぼうなのが不思議でならなかった。
ディメンションのバランスの良さは感じられたものの、この素晴らしい技術提案が生かされる近未来社会でのセダンのカタチがこれなのか?と正直がっかりしたのだ。
さらには、トランク容量を最大限に設計したとのことだが後方下方視界が悪そうで、急な細い坂道を上がりきったところでのバックは出来るのか、非常に疑問に思った。
そして未来のセダンはこんなつまらないカタチになるのなら、いっそすべてミニバンになったほうが良いなーと思ったほどであった。
特にサイドの強烈なプロテクターはコマーシャルカーのような印象を与え、冠婚葬祭で主役のはずのセダンには使えないスタイルだと感じ、憤りさえ覚えた。
実はこのモーターショーの3か月ほど前、お世話になった方が亡くなり、葬儀で火葬場に向かう車列が何ともカラフルなのに私は「?」と疑問を感じたのだ。そしてフォーマルの大切さとセダンの存在意義を改めて考えたのであった。
知人が田園調布や名古屋の瑞穂区初日町といった超高級住宅街にお住みになっていて訪ねる度に感じるのが、真っ赤なスポーツカーやゴールドのポルシェ・カイエンをお持ちのお宅が並ぶが、必ずシルバーや漆黒のセダンもお持ちなのだ。ビジネスや社交を重んじるセレブの方々は、必ずフォーマルなクルマも大切にされていることを無視してはならないと思うのである。
そんなわけで、セダンの本質を無視してはならないことを再認識させてくれた日産CQ-Xは、私にとって第31回東京モーターショーでの最大の収穫であった。
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