どこまでも安全快適に|レヴォーグの進化した走りをレビュー スバル・レヴォーグの試乗インプレッション |進化した走りを評価・レビュー
- 2019/07/24
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MotorFan編集部
レヴォーグのレヴォーグたる由縁はどこにあるのか
そして3つめのキモは、みなさんが想像する通り「走り」ということになる。
しかしそれは今回に限らず、これまでのレヴォーグの改良に通底する「より静かに、より快適に、つまりはより高級に」という思想のもとに追求されるものだ。
レヴォーグのデビュー当時、開発責任者の熊谷泰典氏に「なぜワゴンをこれほどギンギンに走らせるのか?」と尋ねたことを思い出す。
その時の熊谷氏の答えは「特殊なスポーツカーをのぞけば、日本で最も走りにこだわるのはワゴンユーザーなのです」というものだった。
この熊谷氏の言葉に、肌感覚で納得する日本人は多いはずだ。クロスオーバー全盛の昨今、“スポーツカーみたいにゴリゴリ走るステーションワゴン”は、世界的にも少数派の価値観から生まれた遺物かもしれない。
しかしこのような日本特有のカテゴリーを育ててきたイメージリーダーは、間違いなく歴代レガシィ・ツーリングワゴンのシリーズである。
ステーションワゴンが希少な存在になりつつある逆風の中、日本では「販売のキラーアイテム」といえるほど利点が浸透したアイサイトの商品力も手伝って、レヴォーグは開発陣の予想を超えて幅広い層に受け入れられた。
「荷物がタップリ積めるスポーツカー」という独自の魅力に惹かれたヘビーユーザーがいる一方で、「ちょうどいいワゴンだから」とか「とにかくアイサイト」などを理由にレヴォーグに目をつけたライトユーザーには、その硬質な乗り心地がフィットしていないのでは、という懸念もあった。
最初の年次改良からコツコツと積み上げられてきた乗り心地と静粛性の改善は、今回の大幅改良で「ここに極まれり」といった印象である。
バネ系やショックの再チューンにとどまらず、フロントロワアームを丸ごと交換、ガラスも厚板化、そしてドアシールの大幅強化……と、「やれることはすべてやった」という開発陣の言葉に誇張はなさそうだ。
さらに1.6ℓ車は、全高を10mm高くしてまでバンプストロークを拡大した。カスタムカーレベルではめずらしくない全高の変更も、量産カタログモデルでは、その実作業以上に認証などの手続きが膨大だ。
それは大メーカーとて簡単なものではなく、ある意味では、3分割リヤシートバック以上に「そこまでやるか?」 の大英断といっていい。
今回はスバルが主催するクローズドコースでの短時間試乗に限られたが、キモ入りの静粛性と乗り心地の向上は1.6ℓ車、2.0ℓ車を問わず、走り出した瞬間に即座に分かるレベルで明白だった。その改良内容から想像できる通り、向上幅は特に1.6ℓ車で顕著なのである。

キャラクターの棲み分けが1.6と2.0で明確に
今回は比較用に従来型モデルも用意されていたが、従来型では「ガタゴト、ポコポコ」が感じられた(といっても単独で乗るかぎりは、騒ぎ立てるほどでもない軽い程度だが)同じ路面で、新型レヴォーグはウソのように静かに、そして滑るようにクリアしていく。
まったくもってテキトーな脳内勘定でしかないが、50~100万円くらいは高額なクルマに乗っている気分である。
総合的に柔らかくなったバネ系、フロントロワアーム後ろ側をピロボールからゴムブッシュに変更……などの改良メニューの通り、ボディ上屋の前後左右方向の動きは改良前よりも明らかに増えているし、ステアリングの“キレ”のようなものは、改良前より後退した部分があるのは否定しない。
事実、ワインディング路限定となった今回の試乗会では、バリバリのレース系ジャーナリストの先生方からは「改良前のほうが走りは楽しめる」という声もちらほら聞かれたそうである。
しかしピッチングやロールの絶対量は増えても、そこに至る挙動はあくまでゆったり穏やかにしつけられている。
私のような“下手の横好き”系アマチュアドライバーには、新しいレヴォーグのほうが肌に合う。トータルでは圧倒的に扱いやすく、放物線のように滑らかなコーナリングラインを描きやすい、というのはお世辞でも誇張でもない。
まあ、新しいレヴォーグでも2.0ℓ車は全高変更までは踏み込んでおらず、改良前のキレ味の残り香がある。
それは「ライト層に人気の1.6ℓ車で、より快適性を重視した」という理由らしいが、現実には重量やコストその他の要件から2.0ℓ車では踏み切れなかった、という側面もあるそうだ。
結果的に、「乗り心地なら1.6ℓ、走り重視なら2.0ℓ」というキャラクター分けが以前より明確になったのは事実だろう。
一方で、パワートレーンは、一定以上のアクセル踏み込みでCVTがステップ変速に移行する制御が1.6ℓ車にも加わって、小気味良さが増している。その点ではレヴォーグならではのスポーツ性が単純に後退したわけではない。
フットワークの改良に微妙な違いがある1.6ℓ車と2.0ℓ車だが、両車に共通するメニューは、伸び側のリバウンドストロークの拡大である。
伸び側ストロークの大小は限界性能や挙動に直接的な影響はない。では、わざわざなぜ……とその真意を担当者にたずねると、彼の回答は 「接地感」だった。
そこで合点がいく。上屋の動きが増大した新型でも、このクローズドのワインディングで改良前より速いペースで走れたのは、タイヤのグリップ感がより濃厚で、安心してコーナーに入ることができ、確信してアクセルを踏み込めたからだ。
ロールと接地感には密接な関係があって、一般的に「ロールを抑制すれば絶対的な限界性能は上がるが接地感は薄れる」という傾向にある。
切り側も戻し側もしっとりと手に吸いつくように微調整された電動パワステもまた、接地感のアップに寄与している。ドライビングの数々の局面での安心感のためには、限界性能のわずかな高低よりも、この接地感のほうがずっと大事である。

最後になったが、「ツーリングアシスト」にアップデートされたアイサイト。機能説明文だけでは「ちょっと良くなった」程度にしか思えないが、リアルな交通状況での“自動運転感”は明らかに濃くなった。
従来のver.3では、高速走行などで頻繁に「キャンセル」と「復帰」を行き来していたが、新しいツーリングアシストでは渋滞時も含めてキャンセルの頻度は飛躍的に減少した。
もちろん、アイサイトは自動運転システムではない。だが新しいツーリングアシストのように、クルマが「ちゃんと見ています」という態度を健気に維持してくれるだけで、乗り手のストレスは激減するのである。
アイサイトに類するレーダークルーズコントロールは今や普通の機能になりつつあるが、実際の使用感にはメーカーごとクルマごとに少なからぬ差がある。
レヴォーグの場合は、その細かい機能差以前に、アイサイトっぽくないというか“アイサイトが頑張ってます感”がとても希薄である。それはアイサイト本体の出来というよりも、クルマの本来的な安定性の高さが結果的に修正舵を少なくし、制御の介入頻度も低くしているからだという。
「クルマの基本性能あってこそのアイサイト。クルマの基本性能が高ければ、アイサイトの開発も楽なんです」というレヴォーグ開発陣の言葉には、ちょっと納得である。
1.6L/2.0L直噴ターボとリニアトロニック、4WDを組み合わせたパワートレーン、そしてWRXと兄弟関係にある、鍛えられた基本骨格とサスペンションを備えるレヴォーグ。17年7月に実施されたマイナーチェンジで、全車が標準装備するアイサイトは新たにツーリングアシストが加わり、足まわりやパワーステアリング制御、エンジン特性を最適化するだけでなく、遮音性の向上も実現。エクステリア/インテリアのブラッシュアップも実施するなど、そのきめ細やかな進化の全貌を解説した1冊です。
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