ルノー・トゥインゴは意外や本格スポーツカーだった【試乗記:箱根】
- 2019/08/25
- ニューモデル速報
理想的な重量配分が質の高い走りをもたらす
では、トゥインゴはどうやって難問をクリアしたのだろうか? ひとつ予想される回答は前輪のキャスター角を大きくすることだが、この場合はステアリングフィールが不自然になりかねない。ところが、そんな兆候は微塵も見受けられないのでルノー・ジャポンに訊ねたところ、トゥインゴの直進性には高いボディ剛性と前後重量バランスの妙が効を奏しているとの回答を得た。ボディ剛性が直進性に効くとは寡聞にして知らなかったが、シャシーがフラフラするよりもガッシリしているほうがしっかりした優れた直進性を生み出すうえで有利になることはなんとなく想像ができる。そしてもうひとつの前後バランスだが、カタログ上は前:後= 45:55と記されている。つまり、50:50に近い配分なのだ。この辺が、いわゆるミッドシップよりもフロントエンジンに近い特性を生み出す源なのかもしれない。
注目の乗り心地はどうか? フランスで試乗したモデルは、1980年代までのルノーが有していた「ホイールストロークが長くてソフトな足まわり」が与えられていて、強い感銘を受けた。ルノー・ジャポンの担当者が説明したとおりボディ剛性も高く、これが上質な乗り心地に深く結びついているのは明らか。とりわけ感動的なのがコーナリング中にギャップを乗り越えたときのことで、進路が乱されないばかりか、足まわりがゴンともドスッともいうことなく、すっと優しく乗り越えて行く懐の深さを備えていた。
0.9ℓとは思えないほど下から粘り強いエンジン
それに比べると、スポーツ・サスペンションが基本となる日本仕様はもうちょっとソリッドな印象だ。コーナリング中に段差を乗り越えても進路が乱されることはさすがになく、その意味ではルノーらしいロードホールディング性の高さを実現しているともいえるのだが、段差と遭遇した際にゴンまたはドスッというショックを感じないこともない。その見返りとして、箱根ではどんなハードコーナリングでもアゴを出さないスタビリティを発揮してくれたわけだが、ひょっとするとこれは評価の分かれ道となるポイントかもしれない。
最小回転4.3mの衝撃は、Uターンしたときに否応なく思い知らされるはずだ。まるで後輪操舵のフォークリフトでフルロックまでステアリングを切ったときのように、自分より後側の垂直軸を中心にクルリと回る感覚は非常に新鮮。いかにも狭い路地が連なるパリで生まれたクルマらしい特徴であり、美点である。
直3の0.9ℓターボエンジンは、ルーテシア ゼン0.9ℓとスペックにほとんど変わりがないことが信じられないくらい、こちらのほうが圧倒的に粘り強く、またボトムエンドから力強いトルクを生み出しているように感じる。ひょっとすると、ギヤボックスの5速MTと6速DCTという設定の違いから、トゥインゴのほうが低速でより大きな軸トルクを生み出しているのかもしれないが、おかげでタウンスピードでのドライバビリティはトゥインゴがルーテシアを大きく凌ぐ。DCTの作動は決して素早いとはいえないものの、シフトはスムーズだし、スタート直後にガクガクするよう動きもほぼ皆無。いずれにせよ、シングルクラッチに比べればはるかに動作は洗練されているので、この点はトゥインゴの長所として強力に推しておきたい。
FFともFRとも異なる自然でポテンシャルの高いハンドリング、ややスポーティ気味ながらもフランス車らしい快適な乗り心地が味わえるシャシー、そして最新のダウンサイジングらしい扱いやすさを秘めたパワートレインと、トゥインゴのハードウェアは極めて完成度が高い。全長3.6mでも室内スペースは十分だし、プロポーションのいいスタイリングは精度が高そうなボディパネルと相まってクラスを越えた高級感を漂わせている。
敢えて気になる点を挙げるとすれば、当面は日本仕様のすべてがスポーツ・サスペンションを装着することくらいだが、これだけでトゥインゴを諦めるのはもったいなさすぎる。それくらい、新世代のコンパクトカーとして多彩な魅力を備えているのが、三世代目に生まれ変わったトゥインゴなのである。
■Specifications
インテンス キャンバストップ
全長×全幅×全高:3620㎜×1650㎜×1545㎜
ホイールベース:2490㎜
車両重量:1010㎏
エンジン:直列3気筒0.9ℓターボ
トランスミッション:6速DCT
価格:199万円
ニューモデル速報 インポートシリーズ Vol.57 ルノー・トゥインゴのすべて
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Designer Interview
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