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人生には反抗期が必要だ【ルノー・トゥインゴ:デザイナーインタビュー】

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私の指示を聞かない反抗期のデザイナーが勝手に……

 実車を前にしても、ブリスター風の処理が施された前後フェンダーや、折れ目のないリヤゲートの左右にコンビネーションランプを配した後ろ姿など、5ターボを連想させるディテールがいくつかある。この点について訊いてみたところ、面白い答えが返ってきた。

「これは偶然の産物という一面もあるのです。新型は最初、初代トゥインゴが提案したモノスペース的なシルエットの復活を狙っていましたが、歩行者保護対策の観点から、難しいという結論になりました。小さくてもノーズがなければレギュレーションをクリアできないのです。どうしようか考えていたとき、あるデザイナーが反抗期だったみたいで(笑)、私の指示を聞かないで、5ターボのシルエットを勝手に組み合わせたのです。そうしたら、とてもしっくりきた。反抗期だったことが結果的には良かったのかもしれません」

 ザ・サイクル・オブ・ライフでは、市販型をデビューさせる前にコンセプトカーを披露することを恒例としている。新型トゥインゴの場合は2013年に発表されたトゥインランが該当する。スタイリングはトゥインゴに近いが、フロントには補助灯、リヤにはウイングを装着し、エンジンは3.5ℓV6と、5ターボからルーテシアV6へと続いた流れの延長線上にある成り立ちだった。だから最初からこの線を狙っていたのかと思ったが、実はそうではなかった。だが、そんな偶然を現実に発展させるルノーもまた、遊び心溢れるブランドだと思った。

新しさの中にも巧みに過去のモチーフを取り入れる。モニターの背後には、初代サンク、シュペール ・サンク、初代トゥインゴ、先代トゥインゴ後期型などが描き込まれたボードが掲げられている。

 その一方で新型トゥインゴは、前述したようにAセグメントに属する車種であり、リヤエンジンだからと言って高価格にすることは難しい。コスト管理が厳しいことでは、ほかのコンパクトカーとまったく同じだ。

 この点については、コストを考えることも日々の仕事で重要なことであり、技術や生産などの現場と話し合いながらデザインを煮詰めていったと語っていた。問題解決のために重要なことは、自分が何をしたいかをしっかり相手に伝えることであり、コストを抑えるべくデザイナーが知恵を出し、それを盛り込んでいくことで、頭の良いクルマに成長していくことも魅力につながると話していた。最後の言葉は国産車のデザイナーからはあまり聞かれない。ルノーのコンパクトカーがなぜ大人の趣味に足る存在になり得るのか、分かったような気がした。

 ところで新型トゥインゴは、ダイムラー・グループのスマートと共同開発により生まれたことはよく知られている。しかしアッカー氏によれば、デザインは最初から分けていたそうだ。お互いに強いデザインを求めることが理由で、ダイムラーのデザインディレクターと定期的に会って、お互いの造形が違うことを確認していたらしい。その結果、これなら世の中に出しても違ったクルマに見えるということが確認できた段階で、生産化に向けた検討を進めていったという。

 新型トゥインゴはボディカラーも凝っている。東京モーターショーのプレスデーでは6つのカラーが一堂に会していたが、それ以外にも見どころはある。

「カワイイ(フランス語でも形容詞として通じる)、スポーティ、ビンテージ、モダンなど、さまざまなニーズに対応し、できるだけ多くのお客様を喜ばせたいと思ったので、ストライプでキャラクターを表現しました。イエローのボディには5ターボを思わせるスポーティなストライプを入れ、レッドやブルーは細いラインでシックに装ってみました。ボディカラーとストライプをセットで提じられる。「ドアを開いた瞬間に『ワォ!』と声を上げたくなるような演出が欲しかったのです。ここでもデザイナーが、パーツの色を変えたり、インサートを入れたり、いろいろなアイデアを出してくれました。インパネの色使いはサーキットのイメージです。ここでも色で遊ぶことができるのです。機動性が抜群で、ドライビングプレジャーが得られるクルマに仕立てたかったという思いもあります。そのためメーターはセンターから運転席の前に移し、コンパクトにまとめました」

 ご存知の方もいると思うが、アッカー氏はルノーに来る前、マツダのチーフデザイナーを務めており、日本に滞在していた。ルノーに来てからも、頻繁に我が国の地を踏んでおり、日本のモーターシーンはある程度把握している。そこで最後に、我が国のユーザーに向けてメッセージをいただくことにした。

「日本ではこのクラスに数多くの競合車がありますが、その中でトゥインゴならではのエスプリを理解していただき、反抗的なイメージを買ってもらいたいと思っています。カワイイも、スポーティも、クラシックも、自分のイメージに合わせて楽しんでもらえると思っています」

 かつて僕が乗っていた初代トゥインゴと比べると、顔つきもシルエットもドアの数もエンジンの位置も、なにからなにまで一新して別のクルマになってしまったような新型だったが、アッカー氏の話を伺っているうちに、目指しているところは同じなのではないかと思えてきた。デザインのあちこちから「遊び」を感じさせるところがそっくりだったのだ。

ニューモデル速報 インポートシリーズ Vol.57 ルノー・トゥインゴのすべて

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