〈試乗記:新型ホンダN-WGN〉これがベーシックカーの新基準
- 2019/10/12
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岡本 幸一郎
滑らかかつ操作した通りの自然なクルマの動きに感心
新型N-BOXが登場した時、操縦安定性の高さに衝撃を受けたのもまだ記憶に新しいが、新型N-WGNはそれを超えるインパクトがあった。優しい乗り心地と素直なハンドリングによる、とにかくスムーズで快適な走りが好印象だ。
新たに採用したものとして、サイドフォースキャンセルが挙げられる。これはダンパーに対してスプリングをオフセットさせてダンパーフリクションを低減させるための手法だが、スペースに制約のある軽自動車では上手く収めるのが簡単ではない。実はもともとN-BOXでもいくらかやっていたそうだが、N-WGNではより適切な角度にすることができたという。これにより得られたものは小さくないようで、N-WGNの快適な乗り心地と自然な車両姿勢の実現にひと役買っていることに違いない。
電動パワステの制御ロジックも、実測値に基づいて制御する方式に変更された。これまでの、モーターの抵抗値から舵角を推定する方式では切る速度によっては制御の遅れがあったことは否めないが、新たに採用した舵角センサーの信号を正確に拾ってダイレクトに出す方式であればそれがない。これにより操舵力がスムーズに高まっていくリニアなステアリングフィールを実現している。
開発関係者は、いかにスムーズにヨーとロールをつなげるか、思い通りの車両姿勢を実現するにはどうしたらよいかにこだわったと述べていたが、その言葉通り新型N-WGNは、かつて軽自動車では味わったことのないほど巧みに仕上げられていることに感心する。
足まわりに突っ張った感覚はなく、中立から微妙にステアリングを切り始めた領域から、まさしく操作した通りにきれいに回頭していく。応答遅れもなく、電動パワステにありがちな粘っこい感覚もなく、なんら違和感はない。低い速度域から減衰のコントロールが非常に緻密にできている感覚があり、クルマを動かして止めるまでの一連のことが理想に近い形でできているように思えたほどだ。これぞ“意のまま”の走りではないかと思う。
アジャイルハンドリングシステムについては、求めたクルマの性格に合わせて俊敏性よりも安定性にふった制御としたという。四輪の接地感も高く、しなやかに路面を捉える感覚がずっとあるので、安心してドライブできるのも良い。試乗日はドライだったが、滑りやすい路面や荒れた路面でも変化が穏やかになるとのことで、よりそのありがたみが感じられるに違いない。
試乗した車両のタイヤサイズは14インチと15インチだったが、14インチ仕様は街中での扱いやすさを、15インチ仕様は走りの楽しさや高速道路での安定性を追求するという具合に想定する主なシーンが異なり、それに合わせて足まわりの味付けも差別化されている(2WD車のみ)。
むろんタイヤ銘柄は同じでもサイズが違えば特性もだいぶ異なり、硬い15インチでは乗り心地を確保するためバネレートを下げるとともに減衰の特性を最適化するなどした。すると足まわりが柔らかくなるので、フロントだけでなくリヤにもスタビライザーを入れて安定性を上げたというのが大まかな方向性だという。
ドライブすると、乗り味にはそれぞれの良さがある。14インチは素直な走り味が印象的で、とてもクルマの動きがつかみやすいところが良い。15インチは、これでも硬いという人もいるだろうが、ピタッとフラット感のある走りが好印象。俊敏なハンドリングも相まって、積極的に走りを楽しめる味付けといえる。
その他にもN-BOXからの進化点がいくつかある。例えば電子制御パーキングブレーキに加えて、ホンダ軽初のオートブレーキホールド機能が付いて、停止状態でブレーキを踏み続ける必要がなくなった。さらには、全車標準装備のホンダセンシングも機能が向上し、夜間歩行者や横断自転車の検知能力が高められたほか、ACCは停止まで追従できるようアップグレードされ渋滞にも対応できるようになった。装備面でも現状で考えられる限りのものが与えられている。
とにかく何から何まで感心の連続だった。「日本のパーソナルな日常を心地良く、ベーシックカーの新基準をつくる」と謳った新型N-WGNは、そのフレーズに偽りない、本当に恐るべき完成度であった。
N-BOX/N-VANに次いでACCを搭載。しかし、N-WGNでは電動パーキングブレーキを搭載したことに伴い、ホンダの軽自動車で初めて完全停止の渋滞対応にグレードアップしたのが目玉だ。レーンキープアシストの作動範囲は65㎞/h以上だが、長距離ドライブの疲労は格段に軽減されるはずだ。
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