乗降性と荷室の使い勝手、「ホンダセンシング」の充実度にも要注目 〈新型ホンダN-WGN L・ターボ:試乗記〉N-BOXより約20万円安くてハンドリングは圧勝、乗り心地は同等の高いレベル。コストパフォーマンスの高さは現行モデルNo.1だ!
- 2020/01/07
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遠藤正賢
ホンダの乗用車ラインアップで最もベーシックな背高軽ワゴン「N-WGN」(エヌワゴン)が2019年7月、二代目へとスイッチ。一足先に世代交代したN-BOXと同様にパワートレインとプラットフォームを大幅に進化させた。その標準仕様における最上級グレード「L・ターボホンダセンシング」FF車に乗り、東京都内および神奈川県内の市街地を中心としつつ、首都高速道路も交えて3日間試乗した。
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)
PHOTO●遠藤正賢/本田技研工業
二代目N-BOXに初めて試乗した時の衝撃は、今でも忘れられない。
ホンダが軽自動車市場において地に墜ちた存在感を回復するため2011年12月に発売した初代N-BOXは、すべてのコンポーネンツを刷新。軽自動車では今なおトップの2520mmという長大なホイールベースを確保しつつ、センタータンクレイアウトを採用するなど、スペース効率を極限まで追求したホンダお得意のパッケージングを武器にして、たちまち軽自動車のベストセラーとなった。
にも関わらず、ホンダは2017年9月に発売した二代目N-BOXより、大半のメカニズムを見直し。その結果として、燃費、加速性能、静粛性、予防安全性能は劇的に進化するとともに、並の高級車を遥かにしのぐほどフラットな乗り心地を手に入れていた。これによって軽乗用車のベンチマークが大幅に引き上げられ、他の軽自動車メーカーも追従して主要メカニズムを刷新せざるを得なくなったのは記憶に新しい。
そんな二代目N-BOXをベースとして、全高が115mm低く、車重も約50kg軽量(「L・ターボホンダセンシング」グレード同士での比較)に仕上げられている新型二代目N-WGNに、期待しない方が無理というもの。喜び勇んでテスト車両に対面すると、その第一印象は「良くも悪くもシンプルになっている」というものだった。
ホンダ車のエクステリアデザインは、2013年9月デビューの三代目フィット以降、要素が多く煩雑なものが大勢を占めていたが、新型N-WGNでは一転して、分割線やプレスラインの少ないスッキリしたものに。その傾向はサイドビューが特に顕著で、ウェッジシェイプに台形状の黒いガーニッシュを施していた2013年11月発売の初代N-WGNとは文字通り隔世の感がある。極力要素が少なく美しいデザインを至上とする筆者としては、これはもちろん好ましい変化だ。
だがインテリアは、単純に質感がグレードダウンしている。二代目N-BOXと見比べても、メーターがN-VANに準じたものになった以外は、加飾パネルの面積やインパネ下部およびドアトリムの色使い程度にしか違いは見られない。だが、そのわずかな違いが確実に「N-BOXより安いクルマ」なのだという印象を、ショールームへ足を運んだユーザーに与えることだろう。
その一方で乗降性は、劇的に進化した。特に後席は、初代N-WGNが後端上部を斜めに切り、わざわざ頭を入れにくくしていたのに対し、新型では最大限後ろまで伸ばしたスクエアな開口形状に。サイドシルとフロアの段差も限りなくゼロに近くなった。その結果、二代目N-BOXと比較しても、115mm低い全高の不利を補って余りあるほど乗り降りしやすいものに仕上がっている。なお、この印象は前席でも変わらず、腰痛持ちの筆者でも労なく座ることができた。
また、ステアリングにチルト(上下)のみならずテレスコピック(前後)調節機能も備わり、かつペダルのレイアウトや機構が改善された。コスト削減と居住空間拡大のためドライビング環境が犠牲にされやすい軽自動車にあって、不自然な姿勢や身体の動きを強要されずに済むのは、地味ながら大きな美点だろう。
ただしシートサイズそのものは、二代目N-BOXと全く変わらず、身長176cm・座高90cmの筆者にはやや小ぶり。クッションは表面が柔らかく奥はコシがあるためフィット感には優れるものの、ファーストカーとして使うにはもう一回りサイズアップしてほしい所だ。
ラゲッジルームはフロア高が初代N-WGNより180mm下げられるとともに、後席の前後スライドに追従するボードが用意されたことが最大の変更点。ボードで仕切った際のフロア地上高は一般的なショッピングカートの上段に合わせて730mmに設定されるなど、具体的な使用条件を想定しているだけに、種類を問わず荷物の積み下ろしが極めて容易になっている。
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