シトロエンC5 AIRCROSS:ハイドロニューマチックの現代的解釈 魔法の絨毯のような乗り心地をもたらすカラクリ C5エアクロスSUV:マジックカーペットな乗り心地は本当か? WRC由来のプログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)
- 2019/10/14
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世良耕太
シトロエンといえば「ハイドロ」と刷り込まれている自動車ファンも多いだろう。あの独特の乗り心地を現代の技術で解釈し直したのがC5エアクロスSUVに採用されているプログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)。魔法の絨毯ライクという乗り心地をジャーナリスト、世良耕太が試した。
TEXT & PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
PHCはハイドロニューマチックの現代的解釈
「いい!」と聞いていたので、期待値は上がっていた。なにがそんなにいいのかというと、サスペンションである。どんなサスペンションかというと、シトロエンはプログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)と呼んでいる。そのPHCがもたらす乗り心地をシトロエンは、「マジックカーペットライド」と表現している。魔法の絨毯に乗っているかのような乗り心地だと訴えかけているわけだ。
「ハードル上げちゃっているけど、大丈夫か?」と思うと同時に、相当な自信作なのだろうという想像もできる。PHCは複数のユニットを電子制御で連携させて魔法の絨毯のような乗り心地を提供するのではなく、メカニカルな機構のみで実現する。要するに、ダンパーだ。
PHCを搭載するのは、シトロエンC5エアクロスSUVである。本国では2017年10月に発表されたC4カクタスのフェイスリフト版で初搭載された技術だが、日本では2019年5月に発売されたC5エアクロスSUVが初出しとなる。
シトロエンはかつて、ハイドロニューマチック・サスペンションを実用化した自動車メーカーだ。1955年のことである。ダンパー、ステアリング、ブレーキのオイルをひとつのオイルポンプで集中制御するシステムで、サスペンションはコンベンショナルなダンパーとスプリングの代わりに、ガス室に出し入れするオイルの収支によって、荷重によらず車高を一定に保とうとするシステムだった。
「シトロエンといえばハイドロニューマチック」というイメージが刷り込まれた層にとっては、「シトロエンは独創的な技術を送り出すメーカー」というイメージが頭の片隅に残っているに違いない。筆者のように。
ハイドロニューマチックは「非常に複雑な構造で、メンテナンスにコストがかかるデメリットもあった」と、プジョー・シトロエン・ジャポンのプレゼンターは説明した。「シトロエンは反省し、メカニカルな構造にすることによって、お客様の負担を軽くしたいと考えました。得られる乗り心地のメリットはそのままに」
PHCはハイドロニューマチックの現代的解釈に位置づける技術であり、ダンパーが単独で機能する。電子制御でアクティブに制御するのではなく、パッシブだ。従来のダンパーはバンプ側(縮み側)でフルストロークした際、最後はゴムやウレタン製のバンプラバーが衝撃の吸収を担って変位の終わりを告げる。バンプラバーがある程度は衝撃を緩和するものの、当然ながらダンパーがストロークしているときほどソフトではなく、硬さ、もっといえばショックを乗員に伝える。
PHCはバンプラバーの機能をダンパーに組み込んでいる。ストロークの位置に応じて減衰力を発生する位置依存型のダンパーを、セカンダリーダンパーとして組み合わせているのだ。つまり、ダンパー・イン・ダンパー。バンプラバーの代わりに専用のダンパーが変位の終わりに向けて減衰していくので、ガツンとした衝撃はやってこない。バンプラバーの役割をセカンダリーダンパーに任せることで、ストロークが微小な領域では、減衰力を極めて小さく(つまりソフトな方向に)設定することができるという。
これが、魔法の絨毯のような乗り心地をもたらすカラクリである。C5エアクロスSUVの場合、フロントは縮み側/伸び側双方にセカンダリーダンパーを搭載。リヤは縮み側のみに備えている。
シトロエンの説明によると、PHCの技術は、1994年のパリ・ダカールラリーで優勝したシトロエンZXラリーレイドで開発した位置依存ダンパーがベースになっているという。その後、WRCに参戦する各マシンにも同じ技術が受け継がれている。創業100周年を迎えた2019年、1月のモテカルロラリーで、シトロエンはWRC通算100勝目を挙げた。多分にマーケティング的な意味合いがこもっていると知りつつも、PHCにラリー車両の技術が受け継がれていると知れば、俄然興味が湧くというものだ。
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